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51/202

*5

俺がそう言うと、「じゃあおまえ送っていけよ」「間違っても送りオオカミになるんじゃないぞ」などと杉田と若狭が口々に言い、小山田さんをタクシーに押し込み、そして俺をもぎゅむっと押し込んだ。ドライバーに住所を告げる。


「じゃあ坂崎頼んだ!!」


うーん。これって。なんか昨夜封印した『愛の成就ムック』にあったシチュエーションじゃないか?


隣でぐらぐらしている小山田さんをまじまじと見る。今日は土曜日。可愛いワンピースでも着てくるんじゃないかって、少しだけ期待したんだけど、今日着てきたのは、小山田さんと初めてファイブレで会った時の謎の服装だった。眼鏡も怪しい色付き丸メガネ。変な帽子。これは……絶対に変装してるな間違いない。


「ゔーんゔーん」


小山田さんは唸り声を上げながら、ぐらぐらしている。


俺は左手でそっと、小山田さんの頭を引き寄せた。すると、勢いよくおれの右肩にガタンと頭をぶつけて、そのまま動きを止める。


(うわこれ、彼氏の肩に頭コテンのやつだ……)


なにかで読んだことがある。(←間違いなく愛読書)


ただ。

肩の骨が砕けたのではないかぐらいの、ヒットだった。ズキズキ激痛。骨は……折れてない。


(恋の痛みか……)肩が。


だが、そう自覚した途端、心臓がどどどっと鳴った。

うわわーと緊張してきたのだ。

無駄に全身に力が入ってしまう。小山田さんのだらんとした手が視界に入り、無性に気になる。手に触れていいものだろうか? いやそれはセクハラになってしまう。


でも小山田さん、今寝てるよ?


俺の中で悪魔と天使が拮抗する。そっと触れるだけなら……


が!! そう思った瞬間、それを凌駕するほどの、奇跡が起こってしまった。


これはえらいことになったんだ、聞いてくれる?


キキキーー


タクシーが急にブレーキをかけたのだ。大の男の俺でも、ぐわっと前のめり。

小山田さんはそのままぐらっと倒れ込み、結果。


俺が膝まくらする形になってしまった。


「えあ、た! とわ、えええ!?」


「悪いね、お客さん。急に猫のやろうが飛び出してくるもんだからよっ! くっそ猫のやろうめ、猫はおとなしく、てめえの家でちゃおちゅうるでも食っとけっての」


「いえ、大丈夫ですけど……」


ややや大丈夫じゃなーいこの状況。やばすぎる。肩コテンならまだしも、弊社の女性社員を直属の上司が膝まくらはアウトアウト。


だが小山田さんの表情は向こうを向いているから、ここからでは計り知れない。(寝てる)


(どうしよう、少しなら……)


さっきから心臓が痛いし、身体中筋肉痛みたいな症状が出始めていて。


ドキドキしている。ふうぅぅと細く息をはいた。


そして、そっと小山田さんの肩に触れる。細いーー。それから髪に。頭をそっと撫でて、そして俺は。


(はあぁぁ。これやばい……)


思ってから5分後、タクシーがぐいんとカーブし路肩に駐車、ハザードを出した。俺は小山田さんの肩をゆらゆらとゆすって起こし、ドライバーに待っていてもらうように頼んでから、タクシーを降りた。


「小山田さん、家に着いたよ」


一軒のアパートの前。


「はいぃぃ」


小山田さんはやすこ風に返事をしてから、カバンから出したカギでドアを開け、部屋に入っていった。






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