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あの時の杉田課長の心遣いが嬉しかったし、苦しかった。
歓迎会に誰の手も上がらず、悲しかったし苦しかった。
ただ、杉田課長には、「ここの連中、他人に興味なしの集団でさあ、わざとハバってるわけでもねえし、悪い連中じゃねえから許したってくれ」と居酒屋で言われた時は、妙にはいはいわかりましたよと、納得できたはずだったのに。
「よしよし俺が奢ってやるから、店で一番高いもの食いなよ」
「おねーさん、蟹とふぐちりいっちょう」(←容赦なし)
蟹もふぐも美味しかったのを覚えてる。
はっとした。その時、坂崎課長が私の前へと進んできて、そっと両肩に手を置く。ぐいと引き寄せられ、涙まるけの私は課長の胸ぐらへ。
そこにおでこをぶつけると、涙がその拍子に散った。
「あいつまじ何やってんの。小山田さんにこんな辛い思いさせて……」
坂崎課長の優しい声だった。
「1課のヤツら、ちゃんと小山田さんを歓迎してるからね。俺、聞いてるから。小山田さんの様子、どうかなって。1課の佐藤さんだって、事務処理が小山田さんになってスピード感パないって言ってたし、向島も、小山田さんミスとかまじないんでありがたいっすって……」
鼻をすすりながら、こくっと小さく頷いた。
「それに1課の連中、半分既婚者だろ? だから早く帰るってのが当たり前になってるみたいだし…」
坂崎課長が私を慰めようとしているのはよーくわかった。意外と優しいところもあるんだな。
課長の胸から離れ、涙を手の甲でぐいっとぬぐった。




