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44/202

*5

社長室に入ってきたのは、坂崎課長だった。


「え、や、は、小山田さん? え? どうしてここに?」


「俺が呼んだんだよ、このすっとこどっこい」 


「えっと……げ、元気?」


「元気です」


「1課にはもう慣れた?」


「慣れましたが、また直ぐに2課に戻ることとなりました。今後ともどうぞよろしくお願いします」


「え!! そうなの!? それは良かった……それは朗報だ!! 歓迎会やろうよ」


「いえ、それはちょっと……歓迎会には軽いトラウマがありまして……遠慮させてください」


「そ、そう」


坂崎課長の表情が曇る。


「歓迎会、杉田と二人だったんだとよ」


「……え?」


「私は二人だろうが、三人だろうが、別に気にしていません」


社長はニヤリと笑みを浮かべ、坂崎課長はそのままその場で固まっている。一瞬、時間が止まったような気がした。


なに?


けれど、その沈黙を破るかのように、課長の口が先に動いた。それは以前聞いていた課長の声より、明るい声だった。


「へ、へえ。どんな経緯で二人になったんだ?」


こんな声だっただろうか。3ヶ月聞いてない。ワントーン高い気もするし、低い気もしてる。


「歓迎会に誰も来なかったんだとよ」


そこにかぶさる社長のグサっとくる言葉。坂崎課長の明るすぎる声と、社長のその言葉が結構キツかったのがいけなかったのか、私の胸にずしっと来た。来てしまった。


今まで。

ひとりでも大丈夫だった。

私にはレンジくんという推しもいて、私はファイブレに夢中で、レンジくんのためなら日本を一輪車で一周するのにも厭わない。


それなのに。


「お、小山田さ、ん……?」


気がつくと、涙が溢れ出ていた。とめどなく流れる涙は頬を伝って社長室のカーペットに落ちてゆく。


「あれ? わた、し、……」


泣いている。

何やってんのここ会社だよ?

社長もいるし、課長だっている。

そんな状況で、なんでこんな風に泣けてしまうんだろうか。私って相当バカ。


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