営業2課坂崎課長の怪しげな行動 おかわり1杯め
『こんばんは、今少し話せるかな』
電話があると思ってはいなかったが、意外と冷静にその画面を見ることができた。
【坂崎課長】
まあ上司からの電話を無視することもできず、受話ボタンを押した。
「大丈夫です。すみませんが、少しだけお待ちいただけますか?」
『ああもちろん』
本当は、カウントダウンてぃびぃに出演したΦブレインの録画を見ようと、酒とおつまみを準備したところだったが、仕方がない。
生ライブなら上司からの電話なぞ軽く無視だが、録画でいつでも見れちゃうなのが、嬉しいようで少し悔しい。缶ビールを冷蔵庫に戻した。
「お待たせしました」
『突然電話なんかしてすまない。今日の異動願のことだけど……』
やっぱりか。
「……はい」
『何か理由があるんだよね。それが気になってて』
「はあ」
『杉田に何か言われたんじゃないかと思ってね』
「いえ、まったくそんなことはありません」
引き抜き? ヘッドハンティング? 坂崎課長は何を勘違いしているんでしょうか? へっ!!
『そうなのかな? もしかして、杉田に口止めされてるとか?』
「それはないです」
『じゃあ営業2課に問題でも? 嫌な人がいるとか……』
頭の上に悪口かぶせてくる人ならいますけどね、と、嫌味をかましたい!!
「そんなことはありません」
『それならなんで異動願なんかっ……と、ごめん』
語気が強くなり、私はそこで初めて自分に向けられた、課長の強い感情に慄いてしまった。
課長はいつも職場では、私の頭上にだけ感情を露わにする。いわゆる本音だ。
けれど、普段は鉄面皮で澄ました表情で社員にも接していて。課長の中は案外複雑なのかもしれない。
「……社長命令です」
さっきまで、どう理由を説明しよう、そう思っていた。
おなかが弱いため、トイレに近い営業1課への異動を希望したんです。
定時になったらすぐにエレベーターに乗り込んで、ANIMEITO、コラボカフェ、グッズ販売、ライブに直行できるので希望しました。などなど。
けれど、課長の、小さいながらも感情の爆発に触れて、私はつい本当のことを言ってしまった。




