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24/202

*1

「でも課長ね。私にだけえ、語ってくれたんだと思うんだけどお、早くにお父さんを亡くされているんだって。母ひとり子ひとりで、かなり苦労されたみたい」


え?


ええ?


なんですと?


「そうなんだあ。お母さんだけだと、寂しいだろうにね」


「ねーーそこで電車が駅に着いちゃったからさ、話はいったん終了になっちゃったんだけど。でねー私が課長の家族になってあげたいって、その時思ったんだ」


「私も家族になって癒やしてあげたい!!」


「ねーーー♡」


二人の声が遠ざかっていく。ようやくトイレから出られる。


私は水を流してから個室から這い出てきて、洗面で手を洗った。鏡を見る。ああ、私ってば簡単に騙されて。あんな嘘つかれて、この地味でおバカな顔はどうにもできないほどに今! 歪んでいる。


「課長って……ひとりっ子なんだ……」


私は少し前に交わした課長との会話のことを思い出していた。あれは、レンジくんのコラボカフェコースターをくれようとして。


私はいつものように、情報ガチャを回す。


『坂崎課長にはファイブレのレンジくん以外が推しのお姉さんがいる』 



「それ、君にあげるよ。欲しいって言ってただろ?」

「でも課長。課長も集めてるって……」

「姉がね!」



姉? うん言った。姉? ちゃんと姉って言ってたよね?


「なんであんな嘘……」


どんと落ち込んだ。

課長とは相入れないが、課長のお姉さんなら話が通じるかも、なんて思ったこともある。

レンジくん以外のファンだという、たとえ推しの解釈違いがあったとしても、お酒なんか飲みながら、夜通し語り明かせば分かり合えるのではと思ったことも。(←推しに関する激重な妄想ストーカー)


(まあ、課長とはそんな喋ることもないだろうし……気にしないでおこう)


あまり深く考えないことにした。



「小山田さんでしょ? あの人めっちゃ優秀で仕事できる人だよね〜」


今後の営業方針の打ち合わせがあり、俺は会議室で営業1課の課長である、杉田湊すぎたみなとと話をしていた。


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