*2
*
それはほんの偶然の出来事だった。
俺は坂崎悠、年齢は30。
WEB制作会社『SSK企画』の営業2課で課長職を拝命している。
自分で言うのもアレだが、顔は良いし頭は切れる。
よってとてもモテる。モテてはいる。
だが、いわゆる交際経験なし。俺の恋愛の教科書、『愛の成就ムック』(冷たい態度・放置プレイはここから抜粋)だけは片時も離さない。
モテるのに恋愛経験がないのはなぜか? って?
それは俺の性格が……
しょ……
しょう……
しょうわ、
小心者だから!!
ではない。
好みの問題なのだ。
付き合ってくださ〜い♡と言われれば、その場いったんは保留にするが、家に帰ってその方とのお付き合いをよくよく想像してみると、ああこの子はダメだあ、となって、ごめんねやっぱり付き合えないとなる。
苦手なのだ。ぶりっこが。ぶりっこが? ぶりぶりのぶりっこが!!
先日の田中さんとの営業は、まじ地獄だった。かちょ〜♡のひらがな呼びは、ほんと蕁麻疹もので頭をぶつけて記憶を失いたくなるくらいだ。
女女している、可愛いを武器にしている、猫撫で声の甘えた声を出す、実際に甘えてくる、すぐに「わたしできな〜い」と言ってくねくねするetc……。
無理。1秒でも一緒にいたくない。
そこで俺はずっと、そういう恋愛のあれこれを避けて、仕事にと邁進してきたわけだ。
けれど。
偶然に偶然が重なって、俺の所属する営業2課の事務、小山田咲さんと出逢う。
それまではただの事務の人認識だったのだが、ある偶然の出来事から、俺は小山田さんが人間だったと認識するに至った。(←間違いなく性悪)
目を細めてよーーーく黒縁眼鏡の奥の奥を見ると、案外可愛い顔をしているし、営業補佐の女性社員とは毛色が違うというか、一線を画していて、おや? と思ったこともあった。
その始まり、偶然が偶然を呼んだ奇跡の出逢いを今ここでお話ししようと思う。
あれは、俺が……




