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2/202

*1

普段お菓子を食べないのに、お菓子の前に立つ。

いかにも不可解な行動。

私は頭の中の情報ファイルから、坂崎課長のガチャを回した。


ころん。


『毎年バレンタインで数多くのチョコを押し付けられ、どーにも迷惑そう、かつ辟易しちゃってるお表情かお


なるほど思い出し、私は小さく笑う。

バレンタイン。地味子な私にはまったくもって縁遠いイベントのひとつだけど、この営業2課(お隣の営業1課も)では、まるでお祭り騒ぎの賑わいだ。

たくさんの本命チョコが入った紙袋を、課長が山盛り抱えて持ち帰る姿は毎年恒例で、その様はまるで一人勝ち優勝パレードのよう。

もちろん坂崎課長は、貰った時は笑顔でありがとう、ありがとうと返している。ま、それは礼儀だとしよう。


「じゃ家でいただくよ」


けれど、受け取った次の瞬間。課長はくるりと振り返り、自席へと歩き出しながら、嗚呼ああぁぁぁぁと声が伴わない空気を吐き、小さく空を仰いでいるのを、私は知っている。

ちっと舌打ちでもかましそうな、そのめんどくさそーな表情。

そして私のデスクの側を通る時にこぼしていく言葉は決まって。


「俺、甘いもの苦手なんだって常日頃から言ってんのに……毎年チョコて、嫌がらせかっつーの。バレンタインまじうざ」


おん。性格悪うぅぅ。

固まった。

嫌いなチョコと過剰な好意に攻め込まれて、感覚がバグってんのかもしれないけど。


私はすぐさまこの件を頭の中の情報ガチャへと放り込んだ。

そう。

あそう。

坂崎課長は甘いものは嫌い。しかも性格悪し、と。



前置きが長くなってしまったが、そんなわけで坂崎課長が、お菓子BOXの前に立つなんてことは、今までほぼなかったってわけ。


改めて課長を見る。あ! マイバックに手を突っ込んでる!

まさか横領? お菓子の横流し? フリマで売って生計を立てている?

課長が再度キョロキョロ。私は黒縁眼鏡の傾きを直しつつ、慌てて姿勢を少しだけ戻す。もちろん背筋の角度は保ったまま。


すると、坂崎課長がマイバックから取り出した小袋(?)をカゴの中へと三つほど、ぽとりぽとりと滑り込ませた。


え、逆? 横領じゃなくて……補充? 逆輸入? お菓子メーカーからの刺客?


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