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(課長ってば、トイレ長い)
ただ。課長の怪しげな行動には慣れてはきた。ややや、今の段階では怪しい行動じゃなくて、トイレがただ『大』の方で長引いているだけかもしれないけど。
「お待たせしました〜」
来たあ!! ドキドキが止まらない。
アイスコーヒーとアイスカフェオレ。
店員さんが、ストローやミルクなど一つずつ丁寧に置いていく。
そして。
「……嘘でしょ」
オーマイガ。レンジくんだ。しかも、私のアイスカフェオレの方も大大大当たりだが、課長の注文したアイスコーヒーにも。オーマイガ(2度目)
じわる。じわじわきてる。
震える手を伸ばし、レンジくんを手に取る。
じわ。
涙がにじんでくる。ここまでの長い道のりが走馬灯のように蘇ってくる。
一日に5杯、アイスコーヒーを飲んだ日もあったっけ……。あの時はトイレに数度駆け込みながら、ホットドリンクの誘惑と戦ってた。
それでも、レンジくんには巡り合うことができず、意気消沈で撤退してヤケ酒に走った結果、また下痢に襲われたり。
「良かったですね」
顔を上げると、店員さんが仏のような穏やかな表情で、慈愛の眼差しを浮かべている。
「ここだけの話ですけど……」
店員さんが声をひそめた。
「何度もアイスドリンクを注文される方には、私たち店員が察して、たぶんこのキャラだなって当たりをつけて提供するんですけど……」
「そ、そうなんですか?」(←今まで当たりをつけてもらえなくておなかを壊した人)
「はい。先ほどお連れさまがいらっしゃって。彼女、何度挑戦しても当たりを引けなくて、潰れた肉まんみたいになってるよ、とお聞きして。実はこっそり正解キャラ教えていただきました!」
潰れた……肉まん?
「え、まさか……」
「お連れさま、すごくすごくかっこいい方ですね!!」
坂崎課長だ! 私はすぐに反応した。
「あの無駄に背の高い? あの無駄に顔の良い?」(←潰れた肉まんが引っかかっている)
「しかもお優しいですね。お客さまのこと、気遣っておられました」
はい。出た。坂崎課長の怪しい行動。性悪なのに、みんな騙されてるう。
いったいぜんたい、なに得なのこれ?
だって、こんな地味な私なんかのために長いトイレを装ってまで……。
ここで、わはは! と大きな笑い声と、キャッキャキャッキャとはしゃぎ声が聞こえてきた。
「あらあ、まだあちらでうちの店員と盛り上がってるみたいですね……すみません。私、声を掛けてきますね」
そう言って、注文カウンターの方へと消えていった。
なーるほど。もう少しで、勘違いするとこだった、あぶねー。
私のためなんかじゃない。自分がモテたいから、か。




