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16/202

*1

(課長ってば、トイレ長い)


ただ。課長の怪しげな行動には慣れてはきた。ややや、今の段階では怪しい行動じゃなくて、トイレがただ『大』の方で長引いているだけかもしれないけど。


「お待たせしました〜」


来たあ!! ドキドキが止まらない。

アイスコーヒーとアイスカフェオレ。

店員さんが、ストローやミルクなど一つずつ丁寧に置いていく。


そして。


「……嘘でしょ」


オーマイガ。レンジくんだ。しかも、私のアイスカフェオレの方も大大大当たりだが、課長の注文したアイスコーヒーにも。オーマイガ(2度目)


じわる。じわじわきてる。

震える手を伸ばし、レンジくんを手に取る。

じわ。

涙がにじんでくる。ここまでの長い道のりが走馬灯のように蘇ってくる。

一日に5杯、アイスコーヒーを飲んだ日もあったっけ……。あの時はトイレに数度駆け込みながら、ホットドリンクの誘惑と戦ってた。

それでも、レンジくんには巡り合うことができず、意気消沈で撤退してヤケ酒に走った結果、また下痢に襲われたり。


「良かったですね」


顔を上げると、店員さんが仏のような穏やかな表情で、慈愛の眼差しを浮かべている。


「ここだけの話ですけど……」


店員さんが声をひそめた。


「何度もアイスドリンクを注文される方には、私たち店員が察して、たぶんこのキャラだなって当たりをつけて提供するんですけど……」


「そ、そうなんですか?」(←今まで当たりをつけてもらえなくておなかを壊した人)


「はい。先ほどお連れさまがいらっしゃって。彼女、何度挑戦しても当たりを引けなくて、潰れた肉まんみたいになってるよ、とお聞きして。実はこっそり正解キャラ教えていただきました!」


潰れた……肉まん?


「え、まさか……」


「お連れさま、すごくすごくかっこいい方ですね!!」


坂崎課長だ! 私はすぐに反応した。


「あの無駄に背の高い? あの無駄に顔の良い?」(←潰れた肉まんが引っかかっている)


「しかもお優しいですね。お客さまのこと、気遣っておられました」


はい。出た。坂崎課長の怪しい行動。性悪なのに、みんな騙されてるう。


いったいぜんたい、なに得なのこれ?

だって、こんな地味な私なんかのために長いトイレを装ってまで……。


ここで、わはは! と大きな笑い声と、キャッキャキャッキャとはしゃぎ声が聞こえてきた。


「あらあ、まだあちらでうちの店員と盛り上がってるみたいですね……すみません。私、声を掛けてきますね」


そう言って、注文カウンターの方へと消えていった。


なーるほど。もう少しで、勘違いするとこだった、あぶねー。

私のためなんかじゃない。自分がモテたいから、か。


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― 新着の感想 ―
面白いです! 小山田さんの心の声が面白すぎてハマってます。 潰れた肉まん、笑いました。
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