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13/202

*2

私は意を決して、課長の席へと匍匐前進する。(←気持ち的に)


幸い出勤している社員はポツポツいるだけで、私の行動を鋭く指摘してきそうな女性社員もいない。


「あのう、坂崎課長……おはようございます」


「おはよう小山田さん。いつも早いね」


課長は朝のルーティンをこなしながら、私にも笑顔で挨拶を返してくる。

うっ課長のこの笑顔。みんなこの笑顔に騙される。

騙されているのよ、もうそろ目を覚まして欲しい。


「えっと……あのこれ、私の引き出しに入ってました。課長が間違えて入れられたのかな、と思いまして」


ん? という顔をしてから、ああそれね! とさらに笑う。


「机間違えるわけないでしょ。小山田さんって面白いね」


「え、でも……」


課長は引き出しからファイルを取り出したり、手帳をめくったりと入念な準備に事欠かない。


「それ、君にあげるよ。欲しいって言ってただろ?」


「でも課長。課長も集めてるって……」


「姉がね!」食い気味ww


はあ、そうですか。お姉さまが。お姉さまが、ファイブレのファンということか。意気投合!!


「そうだったんですね。でもファイブレお好きで集めていらっしゃるんですよね? そんな大切なものをいただく…わけに…は…いき…ま…せ……ん」


な…ん…と…か…最後まで言い切った。


言ってしまったからにはもう貰うことなどできない。やっぱり欲しいクレクレはさすがに厚かましすぎて、口にはできそうもない。(←できる)


命より大切……とまでは言い切れないが、私にとって『Φブレイン』は、奇跡の存在。それまでは色のない、何もかもが枯れて澱んでいた私の世界を、カラフルな色彩で塗り替えてくれ、そしてそこに生気を吹き込んでくれた存在。


そんな大切な存在だからこそ、私は知っている。

他人が踏み入ってはいけないのだ、と。


「おおおお返しします」(←かなり後ろ髪を引かれるやつ)


課長のデスクにそっと置いて、退散しようとしたその時。課長がガタッと音を立てて立ち上がり、私の腕を取った。


「ちょっと待って!」


手首を握られ、くん、と引っ張られる。ふらりとして、倒れそうになる。

だが。課長に倒れ込む少し手前で、私は足を踏ん張った。セーフ!!


「あ!! ごめんごめん。セクハラとかじゃないからね」


パッと離して、両手で降参のポーズ。


「いえ、これしきのこと大丈夫です」


課長は改まって、私の前に一歩出た。

表情は相変わらずの冷ややかさ。


何だろう、怒られるのかな。ってか面と向かって悪口でも言われるのかな。オタクのくせに!道端に生えるペンペン草のくせに!俺の好意をむげにしやがって、と。




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― 新着の感想 ―
これは田中さん居なくてよかった! かなり羨ましい展開ですもんね。 いやぁ〜どうなるのかドキドキしますな。 ( ̄ー ̄)ニヤリ 登場人物への感情移入が作品への嵌り度合いに直結しがちなんですが、σ(゜∀゜…
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