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「いやあ、それはその、将来的にな、そういう可能性も否定できないっていうか、」
「将来的にってことは、小山田さんと結婚したいってことか?」
坂崎よ、空気読め。
小山田さんの顔見ろよ。その可能性は1ミリもねえ、ってな顔してんぞ。
まったく。恋は盲目とは、このことだな。
俺は上着を着て立ち上がると、「坂崎、もう邪魔者はいないだろう? 男らしく、小山田さんに告白するんだな」
じゃあな、後は若いもんでよろしくやれや、と言い残して、俺は小山田邸を後にした。
これでもう大丈夫だよね? これで拗れたら俺もう知らーん。
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「あ、あの……告白って、」
「うん。その前にこれ」
ガサと音をさせて、花束。すっと差し出され、私は素直に受け取った。
「さっき四川楼で渡そうと思ってた花束が、ぐちゃぐちゃになってしまったから……もう一度」
美香さんは、坂崎課長のことが大好きだったんだろうな。だから、あんなことをしてしまったのか。
わかる。好きなんだから。私だって、美香さんの立場だったら、ああやって同じことをしていたかも……いや、できん。
あんなこと、ようできんわ!!
だいたいなんなの、課長の膝に乗るだなんて!
私なら絶対そんなことできない!(←かつてタクシーの中で課長のひざまくらで寝るを敢行してしまっている過去は酔ってて記憶にないのでノーカン)
改めて、花束を見る。紫の小花が散りばめられた、花束だ。可愛いな。
「小山田さん、さっきはごめんね。俺もあんなことになるとは思わなくて」
「い、いえ」
「本当はかっこよく、決めたかったんだけど……」
課長が正座になって、背筋をぴんと伸ばす。
「小山田さん、俺、小山田さんのことが好きだ。寝ても覚めても、小山田さんのことばかり考えてる。若狭や杉田に嫉妬ばかりしてるし、小山田さんに全力で推されてるレンジくんが、すげえ羨ましいと思ったり」
むいと、唇を噛んだ。
「こんな心が狭くて、人間できてないし、頼りにならないけど……でも……良かったら俺と付き合ってください」
杉田課長との会話で、途中もしかして、とは思っていた。まさか、坂崎課長からお付き合いの申し出を受けるとは。
信じられない。こんなことある? 趣味は推し活と人間観察、透明人間でぺんぺん草でお腹は弱いし、どこまでいっても地味な私が、イケメンハイスペ坂崎課長から告白されるだなんて。
「小山田さん、どうかな。俺じゃ、あまりに頼りないかな」
「そんなことありません! 課長はとても頼りになりますし、カッコいいですし、素敵な人です」
私は同じく正座をし、背筋を正した。
「そのお話、つつしんでお受けいたします」
「やば、泣けてきた……それ、本当?」
「……はい」
坂崎課長が、眉間を指でつまみながら、少し泣いていた。




