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「そうではないです」
カショとプルタブを開けて、缶ビールをごくごくごくごくと一気に飲んだ。
「すみません、なんかわからないんですけど、喉がすごく乾いてて」
そりゃ3時間も彷徨ってたら喉も渇くだろうよww
「坂崎課長は、美香さんと結婚されるそうです」
小山田さんの目から、また涙が溢れてきた。小山田さんはのそりと動くと、ティッシュを取り、ぶーんと鼻をかんだ。
ずっずっと鼻を啜り、はああと盛大なため息をつく。
「杉田課長、こんなことで泣いてしまってすみません」
「なんでそんなことになってるか、わからんけど、いいよ。泣け泣け。泣いたら多少スッキリするだろうからな」
俺は続けた。
「それに、坂崎は美香とは結婚しないよ、絶対に」
「ですが……こう、坂崎課長の膝の上に美香さんが乗って……で、こう」
小山田さんが、自分をギュッと抱きしめている。可愛いなあ。
「で、こうして……えっと、キスを」
「はあ?! キスう?? ないないないない! あの坂崎に限って、それはないわ」
「でも、こうして、で、美香さんがこうきて、それで、こんな感じで、結婚祝いに来てくれたのね!みたいな」
「嘘だろそれ。坂崎のアホめ、美香に強引に迫られたか」
「でも課長、美香さんに花束渡してました……」
「それな、おやっ さんに……っと」
この様子じゃまだ告ってないから、俺の出る幕じゃねーか。
「はい。好きなタイプは、おやっさんな女性。承知しています」
???
「とにかく、もう一度坂崎の話を聞いてやってくんね? 絶対に、ボタン掛け違えてるだけだから」
「?? そうでしょうか」
「そうです」
と、そこにピンポーンとチャイム。小山田さんがインターフォンを押す。背後から覗くと、そこには坂崎が立っていた。
(ようやく来たか。3時間放置は考えられないからな。あちこち回ってたんだろうな)




