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124/202

*1

「どけよ」


俺は美香をぐいっと離した。それでも美香は抱きつこうとしてくる。

再度キスをしようとしたため、それから逃れようとして、俺は立ち上がった。その拍子にイスが後ろへガタンと倒れた。


いつのまにかその場に花束は落ちて、花びらが少し散っている。俺は悲しくて仕方がなかった。


せっかく一世一代の告白になるはずだったのに。


花束を拾い、イスを元に戻し、美香を睨みつけた。


「俺が好きなのは、小山田さんだけだ。美香、お前じゃない。今日のことは許すけど、今度その姿見せてみろ。次は容赦なく警察呼ぶからな」


俺のあまりのブチギレに、美香が「なによ! こんな良い女フルだなんて! 信じらんない!」と、そそくさと帰っていった。


俺は煮えくり返った激怒を腹に収め、店に騒がしくしてしまったお詫びを言って、予約していた食事代を払った。



とぼとぼと歩く。家への帰り道。

電車に乗るのでもなく、バスに乗るのでもなく、ひたすら歩いている。


驚いてしまった。


重要なお話が何なのかはわからないまま、少しだけウキウキして四川楼に足を運んだ。


「そっか。課長の結婚報告……だった……なんて……」


涙がどわっと溢れてきた。


すごくすごく本気になってた訳じゃない。これ以上、好きになってしまったら、どうしよう……の程度。


だから傷ついてない。


傷ついてない。


「うぅあぁーー」


それなのに、心臓は痛いし、なんだかお腹も痛くなってきた。涙は怒涛のごとく、ザバーッて滝のように出てくるし、どうしてなのかな?


「課長が結婚」


相手はあのかきつばた水族館のイメージガール、美人な美香さん。お似合いの二人なんだよ。


空を見上げる。頬を落ちてゆく、涙。拭う。それを繰り返す。


とぼとぼと歩く。家まではまだ遠い。

そして課長の存在も遠くに遠くに、感じてしまっていた。

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