営業2課坂崎課長、清水の舞台から飛び降りる
もう告白しかない。
どれだけ俺が小山田さんを好きなのかを伝えたい。
どれだけ俺が小山田さんを大切に思っているかを伝えたい。
俺だったら、一緒にファイブレの推し活だってできるし、小山田さんをこれ以上ないほど、大切にするつもりだ。
「小山田さん、俺と付き合ってください」
こちら四川楼には早めに来ていて、すでに準備万端だ。どのタイミングで花束を渡す?
ええっと『愛の成就ムック』には確か……
いや! あの本は封印した。告白は自分の言葉で言いたいし、伝えたいからだ。
「小山田さん、好きです。俺と付き合ってください」
シンプルだが、ちょっと説得力に欠けるか。
「小山田さん、前々回のファイブレライブで見かけたときから気になっていて、そこから段々と好きになりました。付き合ってください」
これが一番、好きになった経緯が伝わるな。
さあ、本番だ。
もうすぐ小山田さんが来る。
俺はごくっと唾を飲み込んだ。予約した個室は、ドアはないが、のれんで仕切られていて、告白が店中に聞こえることはない。
俺は水を飲んで深呼吸をした。
その時。
すみませ〜ん、こんにちは〜と誰かが入ってきた。
「は? なんだよ」
「なんか聞いたことある声がするな〜って思ったら……こんなところで奇遇だね」
入ってきたのは、柴田美香だった。
勝手に俺の元カノと言いふらしている、どうしようもない女だ。
「失礼しまあ〜す」
小山田さんが座るはずの席に、どかっと座り込む。
待て待て待て。これはとんでもないことになったぞ。
「おい。そこ座るな。約束してるんだ」
「えーこの前の彼女ぉ??」
「そうだ」
「花束なんか用意しちゃってえ。まさかプロポーズするんじゃないでしょうね」
「お前には関係ない。飯食いに来たんだろ? あっちにいけよ」
まずいと思った。ここまできて、こんな邪魔が入るなんて。美香の動向によっては、告白も中止せざるを得ない。くっそー。
「あら、つれないわね」
美香が立ち上がった。ほっとしたのも束の間、せっかく用意した花束を取り上げてしまう。
「おい! やめろ!」
美香は花束をじろりと一瞥すると、そのまま肩に乗せて、「悠くん、こんな綺麗な花束を私にありがとう!」と明るく言った。
俺はそのまま手を伸ばして、美香の腕を取る。花束を取り返そうとして、結果美香がよろけて、俺の膝の上に座った。
「おい、やめろって」
「ええ? ほんとぉ? やっと私のこと大好きって言ってくれたね。やだあ、恥ずかしがらないで〜悠くん♡」
と、抱きついてくる。顔と顔が近づき、唇と唇が触れそうになったとき、視界に小山田さんの驚いた顔が滑り入ってきた。
「小山田さん!!」
「あらあ、お久しぶりでえ〜す。私たちの結婚のお祝いに来てくれたのね、ありがとぉ〜〜」
「美香っ、お前何言って……」
俺はパニックになってしまい、美香を膝から下ろすことが出来なかった。
「あ! 小山田さん! 待っ、」
小山田さんはくるっときびすを返すと、走り出していってしまった。
俺は呆然としてしまい。
「私を選んでくれたのね、嬉しい、悠くん。私たち、本当に結婚しよーよ♡」




