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私は今まさに抱きしめている、レンジくんのぬいを離した。
課長が抱きしめたやつ?
課長が抱きしめたやつ!!
これって、間接……抱っこ?
「勝手にごめんね。大丈夫、ヨダレとかついてないから」
えへへ、と笑笑。課長可愛い。
「さあ、支度して朝食でも食べよう。今日はお互い仕事だし、頑張ろう」
「は、はいっっ」
なんつー幸せ。なんか良かった課長とお泊まりできて。顔を洗って歯を磨き、髪を整えてから……。
「あの、か、課長、ちょっとトイレお借りしてもいいですか?」
「ああ。どうぞ。俺、出てるね」
そう言って、部屋の外へ出ていってくれた。なんという配慮でしょう。こんなイケメンハイスペ紳士、他にいる? いるなら出てこいやあ!!
「課長、ほんと……良い人だな」
このままだと、もっと好きになってしまう。私のようなただの透明人間、ぺんぺん草の地味子が、あんなイケスペ紳士に恋焦がれても、仕方がないのはわかってる。
でも、今だけ。
夢からさめるように、魔法がとけるように、きっと現実に戻る日が来るから。
*
(どっわ〜〜もう寝てるう〜〜)
二人で寝ないにしても、少し話したり、お菓子パーティーしたり(←無駄になったいちごポッキー)できたら嬉しいなあ、なんてシャワーしながら考えてたんだけど。
がくん。悲し。
でもまあ、初出張で疲れているんだろうな。取引先との商談も、相当疲れるしな。俺も営業の端くれ。それもよーーくわかってる。
ただ。ソファで寝てる。俺を、ベッドに寝かそうとしてくれたんだろうな。
なんて、優しくて奥ゆかしいんだ。
こんな気の利く女性、他にいないよな。いるなら出てこいやあ!!(←脅威のシンクロ率)
同じ部屋に泊めてくれたのも、路頭に迷うはずだった俺を、助けてくれたんだ。
じわっと涙が滲む。
仕事ももちろんできるし、人間性も優れているし、ちょっと変わったところはあるけど、そこも可愛いし……好きだなあ。
俺はソファの横に立ち膝して、小山田さんの寝顔を覗き込んだ。
「むにゃ」
可愛い。可愛いしか出てこない。
そっと、頬に触れる。
起きないし、可愛い。
そこで俺の中で、ドンッと衝動が起こった。
おでこにキスなら、この前成功した。次のステップは、唇にキス。
小山田さんの、小ぶりな唇に見惚れてしまった。
でもこれは必ず許可がいるやつ。
だから、頬なら、と。
いや、と俺はかぶりを振る。
頬でも小山田さんが良いよって言ってくれなければ。
『キスは相思相愛で。』
なんかマンガの題名みたいだけど、付き合ってから堂々としたい。
もう一度、そっと頬に触れる。
俺、マジで小山田さんのこと、好きだなあ。
はあっとため息をついて、小山田さんを抱き上げ、ベッドに運ぶ。
俺はその日。
同じベッドで寝ているわけでもないのに、全然眠れなかった。




