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120/202

*2


私は今まさに抱きしめている、レンジくんのぬいを離した。

課長が抱きしめたやつ?

課長が抱きしめたやつ!!


これって、間接……抱っこ?


「勝手にごめんね。大丈夫、ヨダレとかついてないから」


えへへ、と笑笑。課長可愛い。


「さあ、支度して朝食でも食べよう。今日はお互い仕事だし、頑張ろう」


「は、はいっっ」


なんつー幸せ。なんか良かった課長とお泊まりできて。顔を洗って歯を磨き、髪を整えてから……。


「あの、か、課長、ちょっとトイレお借りしてもいいですか?」


「ああ。どうぞ。俺、出てるね」


そう言って、部屋の外へ出ていってくれた。なんという配慮でしょう。こんなイケメンハイスペ紳士、他にいる? いるなら出てこいやあ!!


「課長、ほんと……良い人だな」


このままだと、もっと好きになってしまう。私のようなただの透明人間、ぺんぺん草の地味子が、あんなイケスペ紳士に恋焦がれても、仕方がないのはわかってる。


でも、今だけ。


夢からさめるように、魔法がとけるように、きっと現実に戻る日が来るから。



(どっわ〜〜もう寝てるう〜〜)


二人で寝ないにしても、少し話したり、お菓子パーティーしたり(←無駄になったいちごポッキー)できたら嬉しいなあ、なんてシャワーしながら考えてたんだけど。


がくん。悲し。


でもまあ、初出張で疲れているんだろうな。取引先との商談も、相当疲れるしな。俺も営業の端くれ。それもよーーくわかってる。


ただ。ソファで寝てる。俺を、ベッドに寝かそうとしてくれたんだろうな。

なんて、優しくて奥ゆかしいんだ。

こんな気の利く女性、他にいないよな。いるなら出てこいやあ!!(←脅威のシンクロ率)


同じ部屋に泊めてくれたのも、路頭に迷うはずだった俺を、助けてくれたんだ。


じわっと涙が滲む。


仕事ももちろんできるし、人間性も優れているし、ちょっと変わったところはあるけど、そこも可愛いし……好きだなあ。


俺はソファの横に立ち膝して、小山田さんの寝顔を覗き込んだ。


「むにゃ」


可愛い。可愛いしか出てこない。


そっと、頬に触れる。

起きないし、可愛い。

そこで俺の中で、ドンッと衝動が起こった。

おでこにキスなら、この前成功した。次のステップは、唇にキス。


小山田さんの、小ぶりな唇に見惚れてしまった。


でもこれは必ず許可がいるやつ。


だから、頬なら、と。

いや、と俺はかぶりを振る。


頬でも小山田さんが良いよって言ってくれなければ。

『キスは相思相愛で。』

なんかマンガの題名みたいだけど、付き合ってから堂々としたい。


もう一度、そっと頬に触れる。


俺、マジで小山田さんのこと、好きだなあ。


はあっとため息をついて、小山田さんを抱き上げ、ベッドに運ぶ。


俺はその日。

同じベッドで寝ているわけでもないのに、全然眠れなかった。


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