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『小山田さん、小山田さん……』
夢うつつの中、坂崎課長に呼ばれている。耳元で囁かれでもしているように、とてもくすぐったい思いがした。
『小山田さん、こんなところで寝たらだめだよ』
ん……。
目が覚めた、気がした。目をそっと開ける。
そこには、坂崎課長の顔。
なんつー破壊力。
課長の目って、少し茶色がかってるんだ。
濡れた前髪が、その目を少しだけ覆っていて、いつもの分け目のある、ピシッとした課長よりも、幼く見える。
童顔なんだ。可愛いな。
『小山田さん、ちょっとごめんね』
そして、身体がふわっと浮いた感覚。ゆらゆら。舟にでも乗ってゆらゆらな気分。
身体が温かい。そして、ふわりと包み込まれた気がした。
再度、意識が遠のき……
朝までぐっすりと眠ってしまった。
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バタン!!
と、お尻に激痛で、はっ っっきりと目が覚めた。
「いぃぃ痛ったあぁ」
ベットの横、床に座っている。この状況からいって、ベッドから落ちたのには相違ない!!
「小山田さん、大丈夫かっ??」
ベッドの向こう側から回り込んで課長が駆けつけてくれた。腕を取り、手を引っ張って起こしてくれた。
「す、すみません。どうやらベッドからおち……」
ん? どういうこと?
「あれ? 私、ソファで寝てたはずなのに、」
課長が手を頭に当てて、えーーーっとそれはだね、と言い淀んでいる。
朝イチで見ても、課長かっこよ。
じゃなかった。これどういう状況??
私が頭を???でいっぱいにしていると。
「女の子をソファで寝かせるわけにはいかないよ」
「それはつまり……」
「だから、俺が抱っこしてベッドに……」
ぎゃーーーーー
「一応、小山田さんに許可は貰ったんだけどね」
ああーーーーー
「おもおもおもおも」
「え? 全然重くなかったから大丈夫だよ」
「ねむねむねむねむ」
「眠っていたから、そっと下ろして布団掛けておいたよ」
「ありっとうござっした〜」
じゃないよ! やだ! 信じられない! オーマイガ。こんなマンガみたいなことある?
イケメンにお姫様抱っこされるワイ。
ぱっりーーーーんっっ。(←何かが壊れた音)
私は焦ってレンジくんのぬいをぎゅうぎゅう抱き寄せた。
「す、すみませんすみません! では課長がソファで寝たんですか? ってか私、下僕であるロバごときが、上司である課長を差し置いて差し置いて差し置いて……」
「いやいや、そんなのいいって! 男なんかどこでも寝れるから。大丈夫だよ!」
課長は笑って、「それより泊めてくれてありがとう。ほんと助かったよ」と、清々しい笑顔。
「でもでも寒くなかったですか?」
「んーー寒かったから、勝手に申し訳ないけど、ファイブレのブランケット借りたよ。あとレンジくんのぬいぐるみも」
ふあ!? なんだって!?




