社長秘書小山田咲と営業2課坂崎課長の恋心
「小山田さん、どうしたの! 一緒の部屋になんて、泊まれないよっ」
俺はこの状況に焦ってしまい、おろおろ。
「でも課長、ホテルもない、新幹線もない、近くにネカフェもない、デニイズもない、日帰り温泉ならある(意味不)、こんな状況では手も足も出ません」
「だからって……」
「仕方ないですよ。私は大丈夫です。1日だけですし。間違いのないようにしていただければ」
小山田さんの横顔がいつになく、きりっとしている。俺は声を跳ね上げた。
「もちろんだよ! 間違いなんて起きるはずもない」
「なら大丈夫ですよ」
ポーンと軽い音がして、エレベーターのドアが開く。小山田さんが乗り込み、そして俺も乗り込んだ。エレベーターの中は、しんと静まり返っている。そんな中、自分の動悸だけが、ドムドムドムドムと、バスケのドリブル並みに聞こえてきた。(相変わらずの語彙力)
*
(ちょっと待ってくださいよお、勘弁してくださいよお)
気持ち的にはこうだが、それを見せてはいけない。なぜなら、私がすでに坂崎課長に好意を持っているから!!
でも、ホテルもねぇ、新幹線もねぇ、近くにネカフェもねぇ、デニイズもねぇ、日帰り温泉ならある、こんな状況では手も足も出ねぇだろ? ずーーーん♪♪
このままでは課長が路頭に迷うのは目に見えていて。
私はソファにそろりそろりと浅く腰掛けた。
先にお風呂をいただき、今は課長が使っている。
ガタンと音がするたびに、ドキっと胸が鳴る。
男性と二人でお泊まりだなんて、こんなシチュエーション今までに出会ったことがない。
それでも。
(ホテルのスタッフのお姉さんが、課長のこと狙ってるんだもん……)
私の人間観察眼が、キュピーンと反応した。
あの時。
「この時期はどこも満室だと思いますよ……もしよろしければ、」
すかさず私が遮ったが、あの後絶対に「私の自宅にお泊めしましょうか?」と続いたに違いない。
狙ってる。確実に。ハンターの眼。その眼をこの小山田、何度も見てきた。営業2課という、戦場でな。
「可愛らしい女性だったし、課長もまんざらではない感じだったし……」
困ったように何度もチラチラと、フロントの女性を見ていた。(←実際には八方塞がりで追い詰められ冷静になれず小山田をずっと見ていられなかった。それが真相だ!)
だからきっと。
「誘われたら、ホイホイ着いてってしまうだろうなあ」
ほっと胸を撫で下ろす。とりあえず、男女二人きりでお泊まりのシチュエーションは阻止した。(ブーメラン)
私はファイブレのパジャマのまま、ソファに横になった。ちゃんとファイブレの大判ブランケットも持参している。ふわりと身体にかけて、目をつまる。
疲れていたのか、すうっと意識はなくなっていった……。




