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116/202

*3

「まじか。じゃあ若狭の部屋、泊まらせてよ」


「ん? 俺の部屋、シングルだからなあ」


「んーーじゃ今から飲み行ってそれからすぐ終新幹線で帰るかな……」


「あ! 小山田さんのホテル、確かセミダブルだったよね?」


「はい。そこしか取れなかったって、社長が」


「そうなんだよねえ〜〜」


ん? 私の部屋と交換しろということか?


「私は別に構いませんけど……」


「いいよいいよ、俺帰るし」


こんなとこまで新幹線で来て、飲んでから日帰りで帰る。いったい何をしに……。


「まあまずは飲みに行こう。小山田さん、何食べたい?」


「山のものがあれば嬉しいです」


三銃士の二人と、ロバ。連れ立って、山のものを出してくれる居酒屋を探した。



「今日はあんまり飲んじゃだめだよ」


俺の忠告を受けて、小山田さんは生中1杯でその後はウーロン茶に。


「キノコ鍋うめーー」


若狭が、満足そうに食べ続けている。確かにキノコ鍋は美味な出汁が出ていて、美味かった。


「このキノコバターも美味しいです」


小山田さんも大満足という表情。好きな人の笑顔が、これほど自分を幸せにしてくれるなんて、思わなかった。


「キノコ汁、サイコーだなあ」


心がふわふわと浮いているようだ。嬉しく、楽しく、そして満たされている。


(恋って……こんななんだな)


醜く嫉妬したりもしたし、離れていくのでは、とか、誰か他に好きな人ができてしまうかも、などと、不安に思ったりもした。


嫉妬などという汚い自分の心とも、向き合って。


けれど、俺の隣に(キノコ鍋をつつく)小山田さんがいる。ただそれだけで、醜い嫉妬まみれの心が、清らかな心と変化していくのを感じていた。


(これが恋の力)


ブラボー。


今、俺はブラボーを噛み締めている。


「さてと、もうそろそろ行くか……」


若狭の就寝時間に合わせて代金を払い、店の外に出る。


「じゃあ俺はこのまま帰るね。小山田さんも、初出張、お疲れ様でした」


そう言ってきびすを返そうとすると、若狭がぽむっと肩を叩く。


「おい。実はな、部屋が取れたから泊まっていきなさい」


「え? そうなの?」


これはありがたい。このまま帰ったら、ほんとマジで何しに来たかわかんないからな。

明日、朝イチの新幹線で帰れば、仕事に間に合うし、それは大変助かります。


「いつの間に……」


「キャンセルが出たみたいだ。とにかく小山田さんと同じホテルで二部屋予約してあるから。俺はまた違うホテルだけどね」


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