営業2課坂崎課長の心配事
「小山田さんはもしかして、もう若狭のことが……」
確かに若狭のことを、『別格枠』そう言っていた。小山田さんが若狭のことを好きになる。
その時点で俺の負け。
そう想像するだけで、胸が痛んで痛んでしょうがなかった。
「二人きりで出張だなんて……俺、」
耐えられるだろうか。
出張は、東北方面。木曜日金曜日の二日間。もう一泊すれば、土日だから二人っきりで観光でも……ってやろうと思えばできる。
悪い方悪い方へと考えてしまう。暗くなっていく自分自身に、愕然とした。
*
「よし行くか。その出張」
俺は杉田。珍しく坂崎がランチに誘ってきた。だが、当の本人はまったく落ち着きがない。明日から若狭と小山田さんが出張に行くからだと推測できる。
「はあぁ〜〜明日かあ。もう今日から金曜日まで、記憶無くしたまま生きていきたい」
さっきから宇宙船に乗って未来に行きたいだとか、時よ止まれなどと実にめんどくさい。唐揚げ定食を食べながら、俺はついに言った。
「二人についていけばいいじゃん」
すると、箸にぶっさした唐揚げを口へと放り込み、怒りとともにもぐもぐ咀嚼しながら坂崎は主張した。
「はあ? そんなこと、できるわけないだろ?」
「できるだろ。有給取りゃいいんでねえの?」
「それも考えたんだが……」
考えてた♪
よっぽど心配なんだな。おまえ、めっちゃ小山田さんのこと好きな。
それなのにな、若狭のやろう。この状況、楽しんでやがる。坂崎のこと、揶揄って遊んでんなあ。
大学の頃から若狭はモテたが、若狭より坂崎の方が頭ひとつモテてるもんだから、そこんとこちょい拗らせてんのな。
坂崎が翻弄される姿を、楽しんでいる節がある。
だが、そんな若狭も、本気で坂崎の幸せを邪魔しようとしてるわけじゃない。あやつもまた、俺と同様に、坂崎が幸せであれと願っているからだ。
ピロン♪と、坂崎のスマホが鳴った。
「あ、れ? 若狭? こんな時間に珍し、」
すると、坂崎が固まってしまっている。顔の色もさあぁっと引いてしまい、白い。
おいおい、こんな色白な坂崎、大学4年に実験室にこもって論文書いてた頃、あまりに白すぎて教授に日サロで焼いてこい! と割引クーポン貰ったぶりだぞ。
ピロン♪
「おい、どうした? 何があった?」
坂崎が無言でスマホを見せてくる。
相手は若狭だが……




