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112/202

*2

「なるほどぉ、盛大に勘違いはしてるけど、結果的に杉田は無しってことだね。おお! かなり絞られてきたな」


「どういうことでしょうか?」


「じゃあさ。俺は?」


ずいっと近寄ってくる。私は後退りを余儀なくされ、ついにはドアに壁ドンならぬ、ドアドンされてしまった。


「俺とは考え方とか、合う?」


「もちろんですよ! 社長の『会社経営とは推し活のようなもんです』理念には、殊更感銘をいたしたと言うか……とにかく社長は別格です! 別格枠です!」(←なんなら杉田下げ)


「そうなんだ嬉しいな。そうだ、今度の出張の時にさ、俺の『会社経営とは推し活のようなもんです』理念について、語り明かさない?」


「はい! そのような機会をいただけて嬉しいです!」


「決まりね」


そう言って、課長は離れていった。


(坂崎課長は、だめだめだめって言ってくれたけど……少しくらいなら)


私は入社からずっと社長と推し活について、議論を戦わせたいと思っていたので、それに浮かれてしまって周りが見えてなかった。


「……出張、ちょっと楽しみかも」


社長はすでにデスクに着いて、取引先と電話を始めていたので、私は心の声をはっきりと声に出して言ってしまっていた。




(楽しみって言った? 言ったよね、言ってたよね)


俺はショックを受け、ひとりゆらゆらと揺れている。


社長室のドアの前のこと。


俺は仕事上の確認があり若狭に会いに来ていた。


すると、ドアのガラス部分に小山田さんのつむじ……いやシルエットが映り、俺は心躍った。


(小山田さんにも会えるし、一石二鳥。今度、またデートに誘ってみよう)


それでキスの段階もひとつずつ段階を上げていかねば。でこチューしたから次はほっぺ(いったん後退)そして次は……唇。ここが難関だ。


おでこがステップ3であるなら、唇はステップ42.195くらいだろうか。マラソン並み。これくらい走ってからジャンプせねば、素人にはかなり難しい。


そんなことを考えながら、俺はドアをノックしようとして、はっとした。


小山田さんと若狭が何か話している。ドアの近くだから、聞こえるかもと耳を澄ましたら……


「……とにかく社長は別格です! 別格枠です!」


「そうなんだ嬉しいな。そうだ、今度の出張の時にさ、俺の『会社経営とは推し活のようなもんです』理念について、語り明かさない?」


「はい! そのような機会をいただけて嬉しいです!」


「決まりね」


え? なんでそんな話になってんの?

出張はだめって、俺が……。

すると。


「出張、ちょっと楽しみかも」


小山田さんの呟きが聞こえてきて、俺はその場を離れた。


楽しみ。小山田さんは出張を楽しみにしてる。


俺がだめなんて言う資格は、もとよりなかったってことだ。


俺はショックで、エレベーターを3往復させながらなんとか課長席へと戻った。

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