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俺は大いに焦ってしまった。
「おい! 杉田っ、やめろよっっ」
「だいじょーぶ。だいじょーぶ。小山田さん、今絶賛、記憶無くし中だからさ。オラオラ仮面だから覚えてないって」
「そうだけど……」
俺と若狭が、小山田さんを覗き込んだ。
小山田さんは、幻覚で鼻ちょうちんが見えてしまうほど、こく、こく、とあごを打って眠っている。
「大丈夫みたいだな」
酔っ払った杉田もウザいが、この状況で寝てしまえる小山田さんもすごい。さすが、オラオラ仮面。
帰りはタクシーを捕まえて、俺が送っていったのは言うまでもない。
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「明日から出張だから。泊まる用意してきてね」
「かしこまり……はっ?」
社長室でのことだった。
私はメモに『出張』と書き入れると、驚きで顔を小刻みに跳ね上げてしまった。かつてのピスタチオのように……白目
「わ、私も……ですか?」
「うん。帯同して欲しい。もちろんホテルは別々の部屋だから心配しないでよ」
「そんな心配はしてませんが……坂崎課長がこの前、」
言いかけて口をつぐんだ。
「あれ? 小山田さん、この前の飲み会のとき、起きてたの?」
半分寝てたとは言いづらい。
「もちろんですよ! ロバはちゃんと習え右! で、三銃士に着き従うのが、宿命ですから」
「ちょっと何言ってるかわからないけど……じゃあ坂崎が、出張だめだめだめーーって言ってたの、聞いてたんだね」
「……あはい」
なんか雲行きが怪しくなってきた。
「じゃあさ、その後の杉田が言った、小山田さんのことが好きだからーーって、叫んでたのも?」
「……あの、愛してるーーじゃなかったですかね」
「おお。オラオラ仮面だったのに、覚えてたんだねえ」
「でも!」
私は苦笑い。
「ぜ、全然本気にはしてませんから、ご安心ください。杉田課長もご冗談が過ぎますよね」
「いや、まあ冗談っていうか、真実はいつもひとつぅぅ! っていうかね」
「え゛」
いやまじでか。杉田課長が???
若狭社長が、ん? と首を傾げる。
「もちろん杉田課長は素晴らしい才能をお持ちで、イケメンでいらっしゃいますが、少々女性関係に関しては、意見の相違と申しますか、考えが浅はかと申しますか、そういうところがございますので、わたくし、杉田課長とは……ちょっと……」




