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『スプレーみたいだな。ヘリウムガスだと?』
『これでこうすると、変声になるらしい』
私は課長を見た。神妙な顔で、鼻を少しすすってる。
シューという音声。杉田課長が大口を開け、スプレーを入れている。
『おい変わったか?』
ワントーン高い声。ぶっと笑う。わはははは!!
『女みたいな声になったぞ。ねえ、ゆうちゃ〜ん、すぐるく〜ん』
『わはははは』
そこで動画は終わった。
「あのさ、さっきのほんとに杉田の声で、女の子じゃなくて」
「それを言いにわざわざ……?」
「彼女いるとか思われたくないし、この前の美香のこともさ、あれはほんとに元カノとかじゃないし」
課長が頬をほんのりと染めて、うつむき加減に言った。やだ。私にも移っちゃったのか、顔が熱くなってきた。
「そ、そうですか」
「それでその……急に来てごめん。小山田さんの電話の用件も気になってて……」
「あ、あれは異動の件で少しお話しを聞いて貰えたらなって思って」
「あ。やっぱりその件だよね。俺もそう思って。不安だよね。やったことのない仕事だから」
「はい。少し。自信がなくて」
坂崎課長がドアを交代して持ってくれたので、私は両手をぎゅと握った。
「小山田さんなら秘書なんて、楽勝だ。できるできる! もし何か不安に思うことがあったら、俺が相談に乗るし。ってか、相談してくれたら嬉しいし。若狭や杉田より頼れる男だから、俺」
課長の話を聞いていたら、さっきまでの涙がどこへやらと吹っ飛んでいった。盛大な勘違いだったんだ。やっぱり課長は優しい人だ。
「ふふふ。ありがとうございます。社長より、杉田課長より、坂崎課長に頼ります」
すると。
「あ、うん……」
急にトーンダウン。見ると、さっきより顔を真っ赤にして口元に手の甲をあてて、恥ずかしそうにしている。
わあ。胸がキュンと鳴った。




