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秘書といえば、四六時中側にいて、仕事のやり取りをするはずだ。そんなの、羨まし過ぎるし、悔し過ぎるし、心配過ぎるし、正直羨ましい。
ああ情緒不安定になりそうだ。
それに月曜日から金曜日、毎日小山田さんの顔やつむじを見ていたのに……あーーーすでに情緒不安定だよすでにっ!!
けれど、と考えてみる。
小山田さんが秘書になるなら……若狭の仕事の効率は格段にアップするのには間違いないと思う。会社のためにはそれが一番……だが。
「くそっ……でも、それしか道がないなら……」
「わかってくれたか、坂崎」
「もう小山田さんには了解を得たのかよ」
「いやまだだ」
「小山田さんがOKするなら、仕方ない……よ」
「悪いな、坂崎」
若狭がポムっと肩を叩いた。くそっくそっと心の中では叫んでいた。
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「そんなわけで秘書の仕事をお願いしたいんだけどどう?」
飲んでいたコーヒーを口からぶちまけるところだった。なんでそうなった?
「ひ、秘書??」
私は疑問を口にした。
「あの見目麗しく仕事もできる社長の秘書、前田さんの後任……ということですか?」
「そうそう」
そうそうっっっ て、あんた!! できるわけなかろーーもん!!
「あのっ社長っ私っ生まれてこのかた事務しか経験なくてですね。根っからの事務肌と申しますか、事務なら目に入れても痛くないと申しますか、とにかく秘書!! なんてできませんよ!!」
このイケメンハイスペ社長の隣を歩けだと!? 息が詰まって呼吸できないと思う。そういう意味でまず生存することが、不可能だと思う。
「そんなかしこまらないでよ」
かしこまってないから! 命の危機を感じてるだけだから!
「前田さんから色々教えて貰えるだろうし、俺なんかは小山田さんのこと、能力的にも適任だと思うし、きちっとしてるからスケジュール管理とか、できると思うけどんだよね、ちょいちょいっと軽く」
魔法使いか。軽るうっ。
「でも!! ……その、さ、坂崎課長は……なんて仰ってましたか?」
「えー? 坂崎い? なんか小山田さんがいいなら良いみたいなこと言ってたよー?」
ずむっと胸に矢が刺さった。痛い。簡単に抜けない矢だ。かえしがついてるようなやつ。痛い。
「……課長がいいと仰るのなら……」




