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課長の顔が近づいてくる。イケメンの顔圧がすごい。後退りしそうになったが、肩を抱かれていて、びくともしない。
課長の瞳。熱い眼差し。私の目をとらえて離さない勢いで、じっと見つめてくる。
息をするのを忘れてしまっていた。
課長が目線を落とす。私の唇あたり。
え、と思った瞬間。
すいっと顔を上げて、私のおでこにチュとキスをした。
はうあぁぁ!! なぜにホワイ?
ぐいっとさらに肩を抱く。私は課長の胸元にすっぽりとはまってしまっている。さらに頭の後ろに手を移動し、ぐぐぐとがっちり押さえられた。
「デートの邪魔をするんじゃねーよ」
坂崎課長がきっぱりとはねつけた。
「デートねえ。そうは見えないけど……わかったわよ。今日は引き下がる。かきつばた水族館へ、またお越しくださあーい」
そう言って、美香さんは去っていった。
私は……というと、ガッチリサタデー、ぐいっと拘束されている。
「あの……かちょ」
「あ! ごめんごめんご! 変な話になったゃて」
身体を離す。すると! 課長のお顔が。
真っ赤。
「み、美香のやつ、本当にしつこいやつでさ。これくらいしないと引き下がらないっていうか……」
水槽へ向かって歩き出す。
「俺なんか、小さい頃からずっと付き纏われてたんだけど、大学入ってから結構勝負かけてくるようになってさ」
「肉食系女子ですね」
「そうそれ! で、若狭や杉田にも絡むようになってな。もう限界来たから、俺ら男3人付き合ってるってことにしたんだ」
ぶっと吹き出してしまった。BLドラマ再来ww
「三角関係ってことですか?」
「そう。がっちりタッグを組んで、美香に入る隙を与えないようにってね。そんなわけで俺ら全然、美香とは付き合ってないんだけど、元カノって言いたいのか、ああやっていつも絡んでくるってわけ」
「ふふふ」
「あ、マジなやつじゃないからね? フリってだけで、俺らはみんな、女の子が好きだから……」
笑ってしまった。面白い話すぎる。課長も思い出したのか、はははっと声を上げて大笑い。
「はは、俺らが付き合ってるってわかった時の美香の顔、めっちゃ驚愕って感じでな」
「必死だったんですね。ある意味ホラーです」
「粘着怖いだろ?」
けれど。
「ふふふ、モテるのも考えもんですねえ」
そう言ったら、課長がすんと笑いを収めて、少し沈黙。そして。
「モテるとしても、好きな子に好かれないなら意味ないよ……」
そっとため息をついた。
あれ? さっきまで笑ってたのに、笑い合っていたのに、もう胸が苦しい。
好きな子、か……いるのかな……いるよね。
ややや違うこと、考えなくちゃ!
すると今度は。
思い出してしまった。
課長の唇が触れたおでこをそっと触る。
(あれ、キス、だったよね……)




