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課長が苦笑いで、「タクシーでGOすればいいから」と、傾きながら歩く。
「あのさ、小山田さんが良ければ、この後ちょっと出かけない? 映画とか水族館とか」
「え」
映画? 水族館? その単語、あまり聞いたことはない。どちらもパリピな人々がデートで行くところではなかろうか?
「スポーチャでもいーし」
?? カラオケとかボーリングとかやるところという認識だが、よくパリピな人々、主にカップルが行くところ?
「あの……私、あんまりそういう場所に行ったことがなくて」
「結構、面白いと思うよ。そうだ、水族館なんかどう? クラゲ水槽で、よくクラゲとクラゲが絡まるらしいよ」
う。それはちょっと見てみたいかも。
「それに午後からのペンギンショーで、ペンギンが滑り台を滑っていく姿も可愛いみたいだし、スプラッシュショーでは、水を頭からかぶるか、顔に直撃くらうか、その日のシャチの気分によるらしいから、これも面白いらしいよ」(←飼育員のブログチェック済みの様子)
「それはすごく気になります」
坂崎課長にはダイソン並みの吸引力があるのだろうか。課長と一緒に水族館。とても惹かれてしまっている。
「今日はその……変装してないし、普通の服を着てきてしまって」
「むしろその方が……ってか、今日の服装、すごく可愛いし似合ってるよ」
おふ。課長にとっては通常運転なのだろうが、私にとっては……。
「あありありがとぅございやす」
「じゃあ決まり。行こうか」
そっと背中を押され、そのまま駅へと向かって並んで歩く。顔も頭ももちろん爆破。心も……
(なんかモノホンの恋人同士のデートみたい……)
頬が余計にほてってきて、私は唇を引き締めた。
*
「あらあ、ぐーぜんねえ」
聞いたことのある声に振り向くと、そこには坂崎課長の元カノと豪語する柴田美香さんのお姿が。
「私、ここのイメージガールやってるの」
かきつばた水族館のエントランス。ロッカーに重すぎる荷物を預けて、チケットを買った。(課長が代金を出してくれたが、ここでちょっとした押し問答あり「ちょっとここはあたしが出すからあ、いーのいーの、あたしに任せておきなさいよ! ほら!! あんたはそのお財布すぐにしまってちょうだいっ」等々)
「すみません、課長。奢っていただいてしまって」
「大丈夫だよ。俺、今日はファイブレグッズ2個しか買わなかったしね」とウィンク。
やっぱり課長はカッコいい。
でもそこで。美香さんに声を掛けられた。
「ウェルカムかきつばた水族館へ!!」
そう言って、グラビアポーズをとる。
課長をちらと見ると、口をへの字にして、不機嫌丸出しだ。
「ほんと面倒くさいな」
出た。久しぶりの、課長のつぶやき。職場じゃなくても出るんだね。私はその言葉を情報ガチャの中へと放り込んだ。
「私がご案内致しまあーす」
美香さんが、カモンと手招きする。だが、ここは課長が頑張った。
「いいよ、二人でのんびり観るから。邪魔しないでくれ」
「なによ、邪魔だなんて失礼な。だってあなたたち別に付き合ってるとかじゃないんでしょ? なら良いじゃない。ご案内しまあす」
「くそっ。おまえ相変わらずだな」
そしてあろうことか。
「言うのも面倒だったから言わなかったけど、俺ら実を言うと付き合ってんの」
肩をぐいっと抱き寄せられた。急なことで、ドキッと心臓が跳ねた。
「ね? そうだろ? 小山田さん?」
私が目を見開きながら、こくっと頷くと。




