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97話 エレン、攻略に前向きになる

  何とも締まらない空気の中、カーシャさん率いる『紅蓮の鉄槌』と一緒に無事ダンジョンを出た私達。

 ラディアドレイクの討伐をした話はすぐギルドで広がり、冒険者やギルド職員が見守る中解体場で死体を出すと、辺りは歓声と驚きで溢れ始める。

 

「こ、これがラディアドレイクか……!」

「こんな化け物を倒すなんて流石『紅蓮の鉄槌』だぜ!」

「『カタストロフ』は何も出来ずに追っかけられてたそうだぜ!」

「まあこんな化け物相手じゃしょうがねぇぜ! そもそもEランクだしな!」

「何ですって……もがもが」


 アルテナの口を塞ぎながらその場を去る。

 ここに私たちがいても意味が無いし、アウェーの空気が流れてる中長居はしたく無かったからだ。

 だが、それはそれとして私達がダンジョンで手に入れた物もギルドに提出する必要があったので、皆の目がラディアドレイクに向いている間に、そばにいた職員に声をかけて山のように重なったクリスタルゴーレムの残骸、掘った鉱石や魔石、後黄金のツルハシを提出して、職員が呆気に取られてる間にささっと解体場を出た。

 その後ギルドにいる冒険者達の間を通り抜け、マルタのいる受付に向かう。

 受付の机越しに座っているマルタはこちらを見つけると……。


「あ、カタストロフのお三方お帰りなさい! 話は聞きましたよ! ポンコツさんがボロクソにやられて理解わからせられたところを、紅蓮の鉄槌の皆さんに助けられたそうじゃ無いですか! ねぇ今どんな気持ち? どんな気持ちですかー?」

「うるさいわね!! て言うか負けてないし! 私たちだけでも何とかなったわよ!」


 ……という感じでアルテナといつも通りのやりとりを始める。

 うん、この二人絶対仲良しだ。

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 今日はマルタに聞きたいことがある。


「ねぇマルタ、紅蓮の鉄槌について教えてくれない?」

「おや? エレンさんも助けてくれた人たちに興味津々って感じですか?」

「ええ、この先関わる事になりそうだから」

「分かりました! 紅蓮の鉄槌は二年ほど前からこの町で敵う者はいないとされるトップの冒険者パーティです! Bランクですし、Eランクのポンコツさんとは天と地の差ですねプププッ!」

「そこであたしをディスる必要ないでしょう!? て言うかBでトップって、AやSはいないの?」


 アルテナの質問に対し、マルタは「何言ってんのこいつ?」みたいな呆れた目をし始める。


「あのですね、国から認められる程の冒険者がこんな辺境のダンジョンに来るわけないじゃ無いですかー。あ、もしかして頭おかしくなっちゃいました!? いや、元からでしたねプップップ!」

「誰の頭がおかしいのよ!?」


 後半の煽りはともかく、確かにそれだけの腕前を持つ人物だったら、好き好んでこんな辺境に来ないかもしれない。

 ってそうじゃない、話が脱線している。


「それで、紅蓮の鉄槌は何処までダンジョン攻略を進めているの?」

「最下層とされている二十六層までですね。結構前に到達しているんですけど、ずっとそこで攻略を止めているんです」

「え? それってどう言う事……?」


 攻略の進み具合に関しては予想の範囲内だ。

 だが、長い間最下層で攻略が止まっているのは一体……?


「え? ちょ、ちょっと待ちない!」


 アルテナも疑問に思ったようだ。

 うん、早速その理由を聞かないと……。

 

「いや、ヴェインのダンジョンって……二十六層しか無いの?」

「「はぁ?」」


 アルテナから発せられた信じられない言葉に、私とマルタは思わず変な声を出しながら顔を見合わせる。


「案外浅いのね。てっきり五十層とかあると思ってたのに」

「そこじゃないでしょうアルテナ! それ以前に……ダンジョンを攻略したいのはあなたでしょう!? 何で階層数を知らないのよ……!?」

「信じられないです……自分が攻略しているダンジョンの事を全く把握してないなんて……。どこまでポンコツなんですか? 底無しですか? 深淵よりもさらに底なんですか!?」


 私とマルタの、呆れと怒りを込めた言葉に対しアルテナは。


「何言ってんのよ? 先に内容を知ったら面白く無いじゃない」


 やれやれという仕草をしながらふざけた回答をするアルテナ。

 ……確かに前からそんな事を言っていたが、まさか本当に何も知らないままダンジョンに潜っていたなんて……。

 受付嬢としてダンジョンの厳しさを知っているマルタも怒りを隠せないようで、体が震え拳を強く握りしめている。

 そんなマルタに目配せして互いに頷くと、私は魔導銃を出しながら。

 マルタは受付の机を飛び越え、氷の刀を構えながらアルテナに迫る。


「え、ちょっとあんたら!? 何で武器を構えてこっちくるの!?」


 そこでアルテナもやばいと思い始めたのか慌て始める。

 ……もう遅い。


「なんでもないわよ……ただ……」

「ちょっとダンジョンを舐め腐っているポンコツにお仕置きするだけですよ……!」 


「いや、いやいやいや!? ほ、ほら、別に知らないのはあたしだけじゃないでしょう!? ミラだって知らないに決まって……」

「え? ミラは知ってるよアルテナ様?」

「え、嘘!? いや、本当にちょっとま……ギャァァァァ!!!」


 そしてアルテナの断末魔が響いたのであった。


 ……数分後、解体場にて。


「おい、上に変なものが吊るされているぞ」

「何だこりゃ? 氷漬けになった女……? 「ポンコツです、解体してやってください」って張り紙がしてあるぞ」

「……これ、解体するべきなのか……?」


 そんな困惑する冒険者と職員の姿があったとかなかったとか。

 


 ……そして再び、マルタの受付にて。


「ねぇエレン様。どうしてアルテナ様を氷漬けにしたの?」

「それはね、アルテナが悪い事をしてごめんなさいしなかったからよ」

「そう言う悪い人はお仕置きされるんですよミラちゃん。気をつけて下さいね」

「う、うんわかった……」


 お仕置きを怖がったのか、まだマルタを怖がっているのかはともかく、少し震えながらミラは頷いた。

 しょうがない、悪いことをしたら処される。

 それを教えることも教育だ。


「さて、本題に戻るんだけど。紅蓮の鉄槌が最下層で攻略に行き詰まってるのはどうしてなの?」

「うーん行き詰まってると言うのはちょっと違いますね。そもそも攻略する気がないんですよー」

「攻略する気がない……?」

「エレン様。それってどういう事だろう?」


ミラに聞かれるが、私もよくわからない。

 冒険者にとってダンジョンを攻略する事は大きな意味がある。

 一つは名声。

 そしてもう一つは“ダンジョンコア”だ。

 ダンジョンを形成する特殊な魔石。

 ミラが進化するきっかけとなったあの魔石もかなり高価だったが、それよりもはるかに価値のある物と聞いている。

 それを目の前にして、あえて攻略しないというのは一体……?


「まあ、疑問に思うのも無理はないですねー。実は攻略“しない理由”と“出来ない理由”の二つがあるんですよ」

「しない理由と出来ない理由?」


 言ってる意味がよく分からない。

 どういう事だろう?


「前者はコアが無くなるとダンジョンが消えてしまうからです。リーダーのカーシャさんは富や名声よりも、町の発展を第一に考えてる人なんですよね。だからわざと攻略しないんですよ」

「……なるほど、そういう事ね」


 ヴェインはダンジョンで発展した町だ。

 それが無くなればどうなるか、想像するに容易い。

 姉のアーシャさんはヴェインの現状に関し中立だったが、カーシャさんは容認派と言うわけだ。

 

「……でも、紅蓮の鉄槌が最下層に辿り着いたのは結構前なのよね? その間、もしくはそれ以前に他の冒険者パーティがたどり着いたりはしなかったの?」

「……実を言うと、紅蓮の鉄槌以前にたどり着いた冒険者パーティは幾つも存在します。いえ、いたと言った方が正しいですね」

「それって……」

「最下層の攻略に向かった冒険者パーティは全て全滅してるんですよ」

「全滅……!?」


 その言葉を聞き、一瞬言葉を失うが、マルタがパンっと手を叩き雰囲気を切り替えた。


「まあおどろくのも無理はないですが落ち着いて下さい」

「そ、そうね」


 軽く深呼吸をして、心を落ち着かせる。

 うん、大丈夫だ。


「それで、原因はなんなの? 魔物? トラップ?」

「実を言うとわかりません。調査したくてもまず最下層に転移できる人がいませんし、そもそもダンジョンで帰らぬ人になればスライムに溶かされてしまいますからね。何が起こったか調査するすべはないんですよ」


 確かに、それだと調査するのは不可能だ。

 誰も生きて帰ってこれない最下層……なるほど、これが出来ない理由……。

 もし私達が辿り着いたとしても、果たして攻略できるのか……。


「エレン様……エレン様!」

「……っ! ミラ、どうしたの?」

「難しい顔をしながらずっと動かなかったから心配になって……」

「そう、心配させてごめんね」


 どうやら長く考え込んでしまったらしい。

 ミラに心配させてしまった。

 その時、パン、パンとマルタが手を叩き、話を切り上げる。


「はいはい、この話は終わりにしましょう! 先のことを心配するよりも次の階層を突破する方法を考えた方がいいですよ!」

「……確かにそうね」


 うん、マルタの言う通りだ。

 今考えるべきなのは次の階層エリア。

 最下層については追々考えよう。

 そう結論付けたその時、後ろからうるさい声が聞こえ始める。


「ちょっとあんた達! 解体場送りは流石にやりすぎでしょ!? もう少しでハンマーで砕かれるところだったんだから!」

「なんだ、無事だったのね」

「砕かれ無かったんですねー残念です」

「残念がるなー!!!」


 さて、話も終わってうるさいアルテナも戻ってきたし、そろそろ帰ろう。

 私達はマルタに帰ることを告げ、ギルドの扉を開け外に出る。

 もうすっかり辺りは夕方だ。

 丁度いい時間だったかもしれない。


「いやー今回の冒険も楽しかったわー!」


 アルテナが清々しい顔をしながらそんなことを言う。


「全く呑気な物ね……こっちは死にかけたって言うのに……」


 今思い出しても背筋が震える。

 ラディアドレイクに殺されかけたあの時の事を。

 

「……二度と同じような事にならないよう対策を練らないとね……あと、アルテナ。あなたは帰ったらダンジョンの勉強としてマルタのマニュアルをちゃんと熟読しなさい。あと、今夜はこの先の階層についてしっかりと話し合いをするからね」

「いや、本当にあのマニュアルを読むのは勘弁……ってどうしたのよエレン?」

「え?」


 何故かアルテナが不思議そうな目でこっちの顔を見つめる。


「だって死ぬ目に遭ったんだし、あんたならもうダンジョン攻略を止めたいとか言いそうなのに、寧ろ攻略に前向きになるなんておかしいじゃない」


  ……アルテナの癖に鋭い。

 そして何かを思いついたのか、徐々にアルテナの顔がニヤついて来る。


「ふ、さてはあんたも異世界冒険が楽しくなって来たのね! そうでしょう!?」

「……そうね、もしあなたを生贄に捧げる事で帰れるなら、即実行するくらいには楽しくなってきたことを認めるわ」

「それ、全然認めて無いじゃないの!! て言うかあたしを犠牲にしてまで帰りたいのあんたは!?」

「私を連れて来た張本人が何を言ってるのよ。ほら、とっとと帰るわよ」

「ちょっと待ちなさい!」

「エレン様、待ってー」


 さっさと一人歩き出した後を追いかけて来るアルテナとミラ。

 こうして、今回の冒険も波乱の中に終わった。

 

 一つ言っておくが、私は決して異世界冒険が好きになったわけじゃない。

 全ては生き残って無事元の世界に帰るためだ。

 ……ただ仲間を信頼していて、ピンチの時には必ず助けてくれる。

 そんなバカだけど頼りになる相棒の期待に、少しは応えてやろう。

 そんな気持ちが私の中に少し芽生えただけである。

描写が全然上達しませんw

それでも読んでくださっている方ありがとうございます

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