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96話 カーシャの提案

 「へぇ! 姉さんから聞いてたけど、山賊からカルロ義兄さんを助けてくれた冒険者ってあなた達だったのね! 義兄さんを助けてくれてありがとねエレン!」

「こちらこそ、助けてくれてありがとうカーシャさん」

 

 カーシャさんと笑顔で握手を交わす。

 私達の話はアーシャさんから聞いてたらしく、その話をしたらすぐに打ち解けることが出来た。


「改めてアタイはカーシャ。『紅蓮の鉄槌』のリーダーでスキルは『諸刃の刃』っていう防御下げる代わりに攻撃を爆上げするスキルで、アタッカーをやってるよ」

「私はエレン、スキルは『器用貧乏・改』で『カタストロフ』のサポーターをやっているわ」


 互いに自己紹介をする私達。

「次はアルテナよ」と目配せするが、何故かアルテナは不機嫌そうにそっぽを向いている。


「ふん、まったく余計なことをしてくれたわ。あたしにかかればあんなトカゲ余裕だった……いだぁ!?」

「アルテナ……助けてくれた相手になんて言い草なのよ」


 全くこいつは……。

 とりあえず、いつものように魔導銃でぶん殴っておく。

 

「ミラです。あ、あの……助けてくれてありがとう」


 そう言って丁寧にお礼を言いながらお辞儀をするミラ。

 うんうん、アルテナとは大違いだ。


「へぇ〜。なかなか可愛いじゃん♪ ねぇミラ、あんた従魔でしょ〜? シャルルちゃんのしもべにしてあげよっか〜?」


 緑のツインテールを靡かせながらミラに言い寄る。

 彼女は全体的にゴスロリっぽい黒を基調とした服とフリルをあしらったスカートを着ており、頭には10cmくらいのミニハット、そして胸には緑色の大きな宝石をつけている。

 うん、なかなかオシャレな服装だ。

 性格といい、メスガキぽいけど。


「えっと……ごめんなさい。ミラはエレン様とアルテナ様にお仕えするって決めているんです……」

「え〜何それ〜? シャルルちゃんはスキル『疾風魔導士』を持ってる天才風魔術師なんだけど〜? そんな私の誘いを断るなんて生意気〜」


 ミラの返答を聞き、不服そうに腕を組みながらプクーっと顔を膨らませるシャルル。

 というか、目の前で堂々と勧誘しないで欲しいんだけど。


「そう言う話は後にしな。まずはこいつをどうするか考えないとね」


 そう言って、カーシャさんはラディアドレイクの大きな死体を見上げる。

 頭がカーシャさんの一撃により粉砕され無惨な姿となっているが、きっとギルドに売れば素材として高額で売れるだろう。


「ちょっとイサーク〜? これ持ち上げて運びなさいよ〜」

「いや、俺にそんなパワーはねぇってシャルルちゃん!」

「うわ〜、信じらんない。役立たずじゃん〜」

「うおーもっと言ってくれー!」


 シャルルに罵倒され笑顔で喜ぶイサークさん。

 彼は大柄な体格で、全身にあちこち傷跡が目立つ鎧を着た茶髪の青年だ。

 見た目はカッコいいのに何で変態(ドM)なんだろう……。

 どこかののギルドマスターを思い出したのか、アルテナも引き攣った顔をしている。


「……カーシャ、あんた良くこんな変態連れて歩けるわね」

「いやーもう慣れたもんだからね。それに、イサークは変態だけどかなり頼りになるのよ」

「……ま、それは見てたけど」

 

 先程の戦いで、イサークさんはラディアドレイクのブレスからカーシャさんを守ったり、尻尾を吹き飛ばすなどすごい活躍ぶりを見せていた。

 それを思い出すと、どうやらアルテナも納得せざるを得ないらしい。


「でも、何でわざわざ攻撃を受けに行ってたのよ? あんたの変態的趣味?」

「それだけじゃ無いぞ! 攻撃を受けた時パワーが上がる『ドM魂』というスキルを発動するためだ!」

「結局趣味もあるんじゃないの! 後何よそのスキル名!?」

「それは俺に言われても困るな! 授けた神様に言ってくれ!」

「ふん、きっと碌でもない奴に決まってるわ!」


 ……とんでもなくブーメランになっている事にアルテナは気付いているのだろうか?

 ……まあいいか。 


「ていうか、それなら何で鎧を着てるのよ? あんたの趣味に合わないでしょ?」

「いや、防御を疎かにして死んだら元も子もないだろう?」

「何でそこだけまともな理由なのよ!?」

「……アルテナ、もうその辺にしときなさい」


 流石に話が脱線しすぎだ。

 さっさと問題を解決しよう。


「カーシャさん、助けてくれたお礼にラディアドレイクの運搬をやらせて頂戴」

「え? 一体どうやって?」


 カーシャさんが不思議そうに聞いてくる。

 まあ論より証拠、やってみせる方が早い。


「ミラ。ラディアドレイクの収納お願い出来る?」

「うん、わかったエレン様。えいっ、収納!」


 ミラが手をかざすと、一条の光がラディアドレイクの全身を包み、ミラの中(本体)に収納される。

 

「「「え!?」」」


 その光景を見て驚きを隠せないカーシャさん達。


「おーすげーな! カタストロフは色んな意味でやばいとは聞いていたが!」

「まさかこんな収納を持っているなんてね……」

「やば〜! ねぇ、本当にシャルルちゃんの僕になりなさいよもう〜!」


 そんな姿を見て、アルテナも気分がいいのか笑みを浮かべる。


「ふ、どう? これがミラの実力よ」

「何であなたがドヤ顔するのよ」


 そんなアルテナの顔を見て、今度はシャルルが嫌味な笑顔を浮かべ始める。


「でもさ〜? これってミラがすごいだけでしょ〜? トカゲ相手に手も足も出なかったわけだし〜。あんた達はザコザコなんじゃないの〜?」

「何ですって!? あたしはアルテナ! 最強の冒険者よ! さっきはちょっと運が悪かっただけで本当はあんなトカゲ楽勝だったんだから!」

「うわ〜言い訳情けな〜い」

「ふん、今のうちに笑っておくといいわ。近いうちにこのダンジョンを攻略して、あんたに分からせてやるんだから」

「へぇ……ダンジョン攻略ねぇ……」


 アルテナの言葉を聞き、カーシャさんが何かを思案するような表情になる。

 そして。


「ねぇエレン。あなたの足、ちょっと触らせてもらうよ」

「え、何で……うっ!?」


 カーシャさんが足に触れると、軽い痙攣が起こり私はまた倒れてしまう。

 

「エレン様!?」

「ちょっとカーシャ!? あんた何したのよ!?」


 二人が倒れた私の肩を持って再び立たせてくれる。

 だが、それでも脚がおぼつかず、上手く立つことができない。

 

「何って……足を少し触っただけさ。でもこれで分かったよ。あなた達はこの先の階層を攻略する事はできないね」

「それってどういう事カーシャさん?」

「16層からはね、魔物だけじゃなく環境も厳しくなるのよ。エレン、あなたその足、ラディアドレイクから逃げたときの疲労によるものよね? その程度で倒れるほどの体力じゃこの先足手まといになるだけよ」

「……それは……」


 反論が出来なかった。

 事実、私は足手まといになりアルテナに無茶をさせてしまった。

 カーシャさんの言葉が深く胸に突き刺さり、悔しい思いでいっぱいになる。 

 そんな私を見て、カーシャさんは呆れた様子を見せる。


「アルテナ、悪いけどあなたが本気でダンジョンを攻略する気なら、エレンとはパーティを解散した方がいいよ。実力次第じゃ、アタイのパーティに入れてあげても良い。ついでにミラも入ってくれれば、シャルルも喜ぶだろうし、アタイも助かるよ」

「な……!?」


 カーシャさんのアルテナに対する提案を聞き、一瞬頭が真っ白になる。

 ……だけど全部事実だ。

 邪魔になるのならここで私は……。


「ふ、いいたい事はそれだけ?」

「何?」


 いきなりアルテナが、カーシャさんの提案を鼻で笑う。

 

「確かにエレンは体力も力も魔力すらほぼ0の貧弱オブ貧弱よ。ここにいる誰よりも間違いなく弱いわ」

「……はぁ……何を言うかと思えば……」


 出た言葉は分かりきった事実だった。

 もしかしたら、アルテナも私を邪魔と思って……。


「でも……こいつ程頼りになる存在はいないんだから! もしエレンとあんたらの誰かから仲間を選ぶとしたら、あたしは迷わずエレンを選ぶわ! そして三人でダンジョンを攻略してやるんだから!」

「え……! あ、アルテナ!?」


 一瞬言葉を失った。

 アルテナが私にそんな信頼を置いてたなんて……。

 不味い、ちょっと顔が赤くなってきた。


「そうだよ! エレン様はすっごく頼りになるんだもん! 」


 ミラまで、何か怒りを込めた言葉でカーシャさんに言い返す。

 それを聞いたカーシャさんは笑みを浮かべ……。


「……へぇ、面白いじゃない。彼女を連れて本当にダンジョンを攻略できるか楽しみにしてるよ。 さ、行くよイサーク、シャルル」

「おう、リーダー!」

「シャルルちゃん達を選ばなかった事後悔しないと良いけどね〜。あ、ミラはいつでも僕として歓迎だから嫌になったらいつでもきて良いから、じゃあまたね〜♪」


 そう言って、カーシャさん達は私達の元から去っていく。

 今後攻略のライバルになるであろう、そんな空気を残して……。


「……全く、一体なんてことを言い出すのよ」

「ふ、事実を言ったまでよ」

「事実って……はぁ」


 変にハードルを上げないで欲しいものなんだけど……。

 ……まあ良いか。

 悪い気はしないし。


「まあ、とりあえず足を休めたら行きましょうか」

「ふ、どうせならマルタの所まで背負ってあげても良いわよ?」

「それは絶対やめなさい。マルタにいじられるネタが増えるだけ……」

「あれ? エレン様、アルテナ様。カーシャさん達が戻って来たよ」

「「え?」」


 何だろう?

 何故かカーシャさん達が気不味い顔をしながらこちらに戻って来る。


「……いや、すまない。ラディアドレイクをミラに収納してもらってる事、忘れてたよ……」

「流石に預けたまま俺たちがどっか行くのは不味いからな!」

「いや〜ごめんね。テヘペロ♪」

「「「………」」」


 そういえば、私達もすっかり忘れていた。

 その結果、ちょっと気不味い空気を出しながら一緒にダンジョンを出る事になったのであった。

もっと上手く感情や情景描写を書けるようになりたいこの頃です

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