90話 ドン・ガイ、ミラの前で脱ぐ
今回も茶番です。
「か、カタストロフ……?」
カタストロフは、主に突発的な災害や、破滅を意味する不穏な言葉である。
それが今、マルタにより私達のパーティ名として付けられてしまった。
「とりあえず聞いていい? ……何故?」
色々言いたいが、まずはこれに限る。
「簡単に言いますと、あなた達が町でそう呼ばれているからですね」
「え?」
「だってこの街に来て早々、超高価な魔石を見つけたと思ったら、次の日はそれを狙う冒険者達を蹴散らしますし、その次は伝説の希少種クリスウィスのミラちゃんを作り出して、ギルドにそれを狙う変な奴を呼び込んじゃいますし、挙げ句の果てにこの町で一番偉い貴族エミールを裸土下座させるとか。 これだけの事を一ヶ月にも満たない期間でやらかしまくってるんですよ? お陰で町では、あなた達の事を災害を巻き起こす存在、カタストロフという通り名で噂が広まっちゃってるんですよね〜。だから、いっそパーティ名もその方がわかりやすいと思いまして。何か間違ったこと言ってますか?」
「う……それは……」
確かに、成り行きとはいえ色々やらかしまくってしまったのは事実だ。
しかし、まさかそんな通り名で呼ばれていたなんて……。
そう言えば、さっきもそんな単語が聞こえてきた気がする。
「だからってそんな不穏な……しかも仰々しい名前はちょっと……ねぇ、アルテナ?」
どうにかして欲しいと言う願いを込めて、横にいるアルテナを見ると、顔を下に向けながらプルプルと震えていた。
……まずい、これはもしかして……。
「……クックック、カタストロフ……実に良いじゃない! カッコよくてあたしが率いるパーティとしてふさわしい名前だわ! エレン! ミラ! 今日からあたし達はカタストロフよ!」
「わーい♪ ミラ達はカタストロフー♪」(言葉の意味を理解していない)
うん、やっぱりこうなった。
厨二心をくすぐる? ような名前だし、アルテナが気に入ってもおかしくなかった。
ミラも喜んでるようだし、もうどうしようもない。
「はぁ……分かったわ。もうそれでいいわ……」
「おや〜? エレンさんは不服そうですね〜? まあでも、もう登録しちゃったのでどうにもならないんですけどね!」
うん、最初から選択肢はなかったようである。
もう諦める事にして、そろそろダンジョンに行こうと思った時。
「やあエレン君、アルテナ君、久しぶりだね!」
「え?」
「げ、この声って……!?」
後ろから声をかけられ振り向くと、爽やかな笑顔にムキムキの筋肉、逆三角形の体型に海パン姿の変態的な姿、陽キャのような金髪と長い耳をしたエルフの男性がいた。
このギルドのマスターであるドン・ガイさんである。
「あんたは変態筋肉!? 地下300億年の強制労働行きになったはずじゃ!?」
「ポンコツさん何言ってるんですか? 牢獄で死ぬまで男の汚いパンツを洗い続ける刑に処されたんですって!」
「はっはっは、二人とも手厳しいなー」
アルテナとマルタの毒舌を笑ってスルーするドン・ガイさん。
相変わらずのようである。
魔石争奪戦以降、アルテナへのセクハラ罪で投獄されたはずだが、いつの間にか戻ってきていたらしい。
「ドン・ガイさん、お久しぶりです。やっと牢から出られたんですね」
「やあエレン君久しぶり。実際は一週間ほど前から戻っていたんだが、君達とは入れ違いになっていたようだね。しかし、私がいない間に色々あったと聞いたよ。ギルドへの襲撃があった時、私がいなくてマルタ君を含め迷惑をかけたようだね」
「そうですよ変態マスター! 私より強い癖クセになにサボってるんですか!? と言うわけで特別手当と一年くらいの有給下さい! 今ならそれで勘弁してあげましょう!」
「はっはっは、それは無理というものだよマルタ君」
再び笑いながらマルタを言葉を流すドン・ガイさん。
と言うか、マルタより強いのか……。
あの筋肉は伊達じゃないらしい。
「ところで、そこの少女が噂で聞いた、クリスウィスのミラ君かい?」
ドン・ガイさんがミラを見ながら言う。
そういえば、何気に二人は初対面だった。
「え、えっと……」
「初めまして、ギルドマスターのドン・ガイだ。よろしくねミラ君」
人見知りで怯えるミラに、ドン・ガイさんが優しい笑みを浮かべながら、ミラへ握手の手を差し出す。
ミラは戸惑いながらもドン・ガイさんの顔を見ると、安心した表情を見せ……。
「み、ミラです。よろしくお願いします」
そう言ってミラは手を伸ばし、握手に応じた。
その光景を見て、マルタが騒ぎ出す。
「ちょ!? 何でミラちゃん、変態マスターと初対面で打ち解けた感じになってるんですか!?相手は海パン姿の変態ですよ!? おかしいじゃないですか!?」
確かに、そこは気になるところだ。
「ミラ、ドン・ガイさんが怖くないの?」
「えっと……姿は気になったけど……すごく優しい目をしてるから、大丈夫だと思って」
なるほど、ミラは人を目で見て判断するタイプだった。
例え変態でも、良い人ならミラは心を許すらしい。
「私ってミラちゃんの中では変態マスター以下なんですかー!?」
「ふ、そう言う事になるわね。クックック」
再び悲痛な叫びを上げるマルタと、それを見て笑うアルテナ。
マウントを取れているのが嬉しいようだ。
そして、ミラはドン・ガイさんとの握手を終えると、首を傾げながら質問を口にする。
「どうしてドン・ガイさんって服を着てないの?」
「それはね、僕には隠して恥ずかしいことなんか何もないからさ! はっはっは」
そう言って、筋肉ポーズをしながらドン・ガイさんが答える。
いや、本人が良くても周りが迷惑だから隠して欲しいものだが。
そう思っていると、ミラがとんでもない事を口にする。
「そうなんだ……じゃあ、何でそこは着ているの?」
「へ?」
「「「え?」」」
その発言に、ドン・ガイさんと私達は固まってしまう。
ミラが指差したのは、ドンガイさんが唯一着ている服、海パンだった。
「え……いや、これは……その……」
まずい、ミラは小さいから、そういう知識がないらしい。
いつもなら軽くスルーする所だが、ミラの純粋な疑問の目で見られ、慌て始めるドン・ガイさん。
「こ、ここは男にとって大事な部分だからね。誰でも隠さなきゃいけないのさ」
「そうなんだ、恥ずかしいわけじゃないんだね」
「当然さ! はっはっは」
冷や汗をかきながらも、ミラを納得させる事に成功したドン・ガイさん。
しかし。
「クックック、え〜? 本当かしら〜? 実際は貧相で恥ずかしくて見せられないだけじゃないの〜?」
「そうですね〜プププ。 筋肉は立派なのに、そこだけ貧相って事実を知られたくないだけかもしれないですね〜プププ!」
「え? じゃあ本当は恥ずかしいの?」
アルテナとマルタがここぞとばかりにドン・ガイさんを煽り始め、ミラもその言葉に乗せられてしまう。
「アルテナ、マルタ、その辺にしときなさい。これ以上はなんか嫌な予感が……」
「……貧相……だって……?」
ドン・ガイさんが顔を下に向け、プルプルと震え始める。
あ、やばい。
「……そんなことはありえない! だったらこの場で見せてあげようじゃないか! 僕の大事な部分がどれだけ立派かを!!」
「「「げ!!??」」」
ドン・ガイさんがトチ狂い、海パンに両手をかける。
近くにはその様子を見ているミラが……!
このままではミラが永遠に消えない傷を負う事になる!
「「「させるかー!!」」」
瞬時にアルテナが邪眼をかけ、ドン・ガイさんの動きを封じる。
そして、マルタが受付の机を足場に飛び、ドン・ガイさんの顔に向け飛び蹴り、アルテナはボディに拳を、私は石の弾丸を大事な部分に向けて撃つ。
「グハ!?」
ドン・ガイさんは攻撃を受け吹っ飛び、ギルドの壁に直撃する。
何とかやばい事態を未然に防ぐことができた。
だが……。
「何だ今の音は!?」
「おい、変態ギルドマスターがやられてるぞ!?」
「一体誰が……げ!? カタストロフ!?」
当然周りの視線を受ける事になり、居た堪れなくなる私。
「…………」
この状況をどうにかするには、たった一つしかない。
……逃げる!
「アルテナ! ミラ! ダンジョンへ向かうわよ! マルタ! 後はよろしく!」
「じゃ、クソうさぎ! 後は任せたわよ!」
ミラの手を掴み、アルテナと共にダンジョンへ走り出す。
「ちょ!? 逃げないで下さいこの卑怯者ーー!!」
マルタの声を無視し、転移の間へ逃げ込んでそのまま十層へワープする私たち。
こうして逃げる事に成功したものの、ムカついたらギルドマスターだろうが遠慮なくぶっ飛ばすと言う悪名が広がってしまったのは言うまでもなかった。
ついでに、少女の前で脱ごうとしたドン・ガイさんは、マルタの証言により再び捕まった。
最近読んでもらってる方からスローライフ物と思われている……
何故だ……




