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79話 三人の意地

今回もシリアス回です。


 ブルーオーガの一撃により、アルテナがやられ、私は一瞬思考が停止した。

 「よくもやったわね!」とか言って、いつもなら普通に起き上がるアルテナがピクリともしない。

 頭から血を流したまま、地面に沈んでいる。


『グォォォォォ!!!』


 ブルーオーガの唸り声により、我に返った私は、すぐにヒールを撃とうとする。

 しかし、その前にブルーオーガがこちらに歩を進め、その巨体でアルテナの姿が遮られてしまった。

 そして、そのまま棍棒を振りかぶり、攻撃を仕掛けて来る。

 ターゲットは……ミラだ。


「ミラ! 逃げて!」

「あ……あ……」


 必死に逃げるよう叫ぶが、ミラはブルーオーガに萎縮してしまい動けず、そして。


「キャァーーー!」

「ミラ!!」


 棍棒による横薙ぎの一撃で、ミラがゴミのように吹き飛ばされる。

 

「そ、そんな……」


 一瞬で仲間が二人やられた。

 そして、ブルーオーガが目の前で私を見下ろしている。

 数秒先に起きるであろう、トマトのように潰される未来が頭の中に浮かぶ。

 ここで……私は……死ぬ。


「……私が……死ぬ……?」


 自分でその言葉を口にし、私はハッとした。

 頬を叩き、気力を取り戻す。


「死んでたまるもんですか……!! 『閃光弾フラッシュ』!!」

『グォォ!?』


 ブルーオーガに向け、光を弾けさせる弾丸を撃つ。

 光によって目がやられたブルーオーガは、大きく怯んだ。

 今がチャンス……!

 だが、私ではブルーオーガを倒すことはできない。

 小細工も、これ以降は通用しないだろう。

 なら私がやるべきことは、ブルーオーガの背後で倒れている、アルテナにヒールをかけ復活させる事。

 そうすれば、きっとアルテナがどうにかしてくれる筈だ。

 我ながら他力本願な手段だが、出来ることはそれしかない。

 

「今のうちに……!!」


 ブルーオーガの横に回り込むよう走り、倒れたアルテナを視界に入れる。

 そして、ヒールの魔法を込めた弾丸を、アルテナに向けて発射しようとした……その時。


「グォォォォォ!!」

「な!?」


 閃光弾フラッシュにより目をやられたブルーオーガは、私の走る音を頼りに拳を振り下ろして来たのだ。

 その一撃は、ギリギリ当たることはなかった。

 しかし、地面を殴った衝撃で吹き飛ばされ、私は倒れてしまった。


「後……もう少し……だったのに……」


 体が上手く動かない。

 おまけに、吹き飛ばされた衝撃で、魔導銃も手放してしまった。

 視界が回復したブルーオーガが、私に向け棍棒を構える。

 そして、無慈悲にその一撃が振り下ろされ……目を閉じたその時だった。


「ダメーーーーーーー!!!!!!」

 

 ガキィン!


 大きく高い声としたと同時に、何かを防ぐような音がする。

 目を開けると、そこには信じられない光景が浮かんでいた。

 ブルーオーガにより吹き飛ばされたミラが、空中で棍棒の攻撃を受け止めていたのだ。


「ミラ……!!」


 ミラの体を見る。

 分身はともかく、本体に傷がほとんど入っていない。

 ミラはとてつもないパワーと頑丈さを兼ね備えているとは思っていたけど……まさかここまでなんて……!

 

『グォォ!?』


 自分より遥かに小さい存在であるミラに、攻撃を止められた事で動揺するブルーオーガ。

 だが、ブルーオーガが本当に驚くのはここからだった。


「ご主人様を傷つける人は……ミラ……絶対に……許さないんだからーーーー!!!」


『ッ!?』


 ミラは棍棒を押し除け、石のハンマーを手に出現。

 ブルーオーガの腹に向かい、回転しながら横薙ぎの一撃を喰らわせる。


「グォォォォォ!?」


 ブルーオーガは腹を殴られた衝撃でよろめき、数歩後退する。

 凄いパワーだ。

 しかし、石のハンマーではこれが限界。

 ブルーオーガを倒すことはできないだろう。


「ミラ! 石のハンマーじゃあいつを倒せないわ! もっと強い武器がなきゃ……!」

「分かったエレン様! なら……えいっ!!」


 ミラの手から一条いちじょうの光が放たれる。

 アイテムを収納するときの光だ。

 ミラが収納したのは……ブルーオーガが持つ棍棒だった。


『グォ!?』


 自身の武器が消えてしまったことに、再び動揺するブルーオーガ。

 そして棍棒は今、ミラの手の中に収まっていた。


「これなら……えーい!!」


 ミラは、指が棍棒にめり込むほど、両手でがっちりと掴み、ブルーオーガに向けて攻撃を繰り出す。

 ブルーオーガは、先程ミラが行ったように手で受け止めようとするが……。


『グォォォォォォォォォ!?』

「な!?」


 ミラの一撃に、ブルーオーガの腕が耐えられず、腕が粉砕される。

 片腕を失ったブルーオーガは、ミラが自分よりも強者であることを自覚し、恐怖して逃げようとする。

 だが。


「逃がすと思う……? よくもやったわねあんた……! 冥府への案内人よ、古の契約に応じ、その姿を見せるがいい!」


 そう言いながら、逃げるブルーオーガの前に立ったのは、倒されたと思ったアルテナだった。


「アルテナ!」

「アルテナ様!」 

「ふ、アルテナの名において命ず、死の衝撃を以て我が敵を屠れ!『死の衝撃(デス・クライシス)!!』」


 こちらを見て微笑んだアルテナは、ゴブリンキングの時に使った、巨大な死神を召喚する必殺魔法を発動する。

 ブルーオーガは、その存在が放つ威圧によって動けず、死神が斜めに振り下ろした巨大な鎌によって、真っ二つとなった。


「グォォォォォ!?」


 ブルーオーガは断末魔を上げながら崩れ落ち、そのまま動かなくなった。

 ……討伐完了だ。


「ふ、ざまぁみなさい……。やられっぱなしで……いられるもんですか……う……」

「アルテナ、大丈夫!?」


 すぐに魔導銃を拾い直し、デスサイズを支えにした状態で、未だ血を流したままのアルテナに近寄り、ヒールをかける。

 アルテナの話によると、咄嗟にうまく防御したが、頭を強く打って気を失っていたらしい。


「全く……心配かけさせないでよね……」

「なに? あんた、あたしのことを心配したの?」

「あのね……貴方がいなくなったら誰が私を守……そうだ、ミラは!?」

「ミラは大丈夫だよ!」


 ミラはそう言って抱きついて来た。

 もう一回ミラをよく見るが、本体に目立った外傷はない。

 

「ミラ……あなたの強さをまだ分かってなかったようね。ブルーオーガより強いのも驚いたし、収納の力で相手から武器を奪うなんてびっくりしたわ……ミラ?」

「う……うぅ……良かった……ミラ、エレン様とアルテナ様が……死んじゃうんじゃないかと思って……凄い、怖かったよ……うわーん!!!」


 ミラが私の腕の中で泣きじゃくる。


「ミラ……ごめんね。そしてありがとう。私を守ってくれて」


 ミラの髪を優しく撫でる。

 ミラがいなかったら死んでいた。

 その感謝を込め、強くミラを抱きしめた。

 

「うぅ……でも、エレン様が時間を作ってくれたから……ミラ、なんとか間に合ったんだよ」

「ふ、あんたの生きる執着が役に立ったってことね」

「そうみたいね」


 あのまま立ち尽くしていたら、本当に私は死んでいただろう。

 あの時、私が動けたのはアルテナという希望があったから……ん?


「と言うかアルテナ、今回の戦犯は絶対あなたでしょう」

「へ? あたしがなにしたって言うのよ!?」

「そもそも、あなたが最初にやられなかったらこんな事になってないのよ。自分の役割わかってる?」

「あたしのせいじゃないわよ! あの冒険者が邪魔するから……ってそう言えば、あの四人はどこいったの?」


 そう言われ、私は周りを見る。

 冒険者達の姿はない。

 どうやら、戦っている間に逃げたようだ。

 ……最初にやられたタンクの男を除いて。


「……ちょっと確認してくるわ」


 タンクの男は、鎧と盾が無惨に破壊されていたが、辛うじて生きていた。

 すかさずヒールの魔法を何回もかけ、男を回復させる。


「うう……俺は一体……?」


 回復が間に合った。

 安堵した私は、男に事情を説明する。


「そ、そうだったのか……すまない。お前たちに迷惑をかけただけじゃなく、足手纏いになってしまうとは……」

「一体林の中でなにが起こったの?」

「それは……」


 男が起きたことを説明する。

 彼らは林の中で寝ているブルーオーガを発見、寝込みを襲おうとしたところ、モンスター召喚の罠を踏んでしまい、大量のモンスターに囲まれた挙句、ブルーオーガの奇襲に失敗。

 林から逃げたところ、偶然見つけた私達に助けを求めて、こっちに来てしまったらしい。

 やっぱり完全なとばっちりだったと言うわけだ。

 まあ、ピンチの時に人を見かければ、助けを求めてしまうのはしょうがないだろう。

 話を聞いた後、ブルーオーガを含めた魔物達をミラに収納してもらい、タンクの男も連れて、皆で転移陣へ向かう。

 先程の戦いで、近くにいた魔物は逃げたのかもしれない。

 道中何にも出会わず、転移陣までたどり着く事ができた。


「ふ、これで十層まで攻略完了ね! でもなんか疲れたわ……」

「そうね、はぁ……最後の戦いは本当に疲れたわ」

「ミラも疲れた……」

「ま、三人で意地を見せたからこその勝利だったわね。ふっふっふ」


 アルテナがそんな事を言う。

 確かに、私は生きるため、ミラは守るため、アルテナはリベンジのために意地を見せたからこその勝利だったかもしれない。

 その事に、悪い気はしないと思いながら、皆で転移陣を潜った。

次回から元のノリに戻ると思います

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