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70話 従魔登録

70話突破しましたー。

これからも頑張ります

 無事、ダンジョンの入り口である転移の部屋に戻ってきた私とアルテナ。

 しかし、探索の途中で助けたレッサーミミックが私に飛びついて来てしまい、思わず受け止めてしまった結果、一緒にダンジョンから出てしまったのであった。


「……どうすればいいの……?」


 ダンジョンから魔物を連れて来てしまった。

 ひとまず受け止めてしまったレッサーミミックを足元に下ろし、今後について相談する。


「ちょっと、コイツどうすんのよ?」

「そうね……普通に考えたらダンジョンに戻すのが一番良いと思うけど……」

「よし、じゃああんた、ダンジョンに戻すからこっち来なさい」


 そう言って、アルテナはレッサーミミックを捕まえようとするが、私の後ろに隠れるように移動し、捕まった後も必死に暴れて抵抗し始めた。


「こら、暴れんじゃないわよ!?」

「……どうやら戻りたくないようね」


 魔物とはいえ、嫌がってる相手をダンジョンに戻すのは気が引ける。

 とは言え、このままにするわけにもいかない。

 

「しょうがないわね。マルタに相談しましょう」

「え!? 嫌よ! あいつの事だから絶対弄ってくるに決まってるじゃないの!」

「大丈夫よ。今回は私が責任を負うから」


 突然の事とはいえ、レッサーミミックを受け止めてしまったのは私だ。

 アルテナに非がある訳じゃない。

 ここは弄られる覚悟で行くしかないだろう。

 とりあえず、最初は魔物だとバレないよう抱えて持っていこう。


「あなた、こっちに来なさい」

『……』


 また戻されそうになると思っているのか、私が近づくと後ずさる。


「……大丈夫よ、ダンジョンに戻したりしないから、こっちに来なさい」

『……!』


 私がそう言うと、レッサーミミックは私の腕に飛び込んで来る。

 大きい為少し大変だが、空箱だからなのか、私でも普通に持てる重さだ。

 そのままレッサーミミックを抱え、私とアルテナは転移の部屋を出た。


「おい、何で宝箱を持ち帰っているんだ?」


 転移の部屋を管理しているギルド職員に不審がられる。


「えっと……ちょっと記念に」

「一応中身を確認させてもらうぞ」


 私は小さく「じっとしてて」とレッサーミミックに伝える。

 ギルド職員が蓋を開けて確認するも、本当に何もない空箱だったらしく、問題なしと通された。


「後でうるさく言われないでしょうね?」

「不可抗力よ、しょうがないわ」


 とにかくマルタに相談しなければならない。

 急ぎ足で向かう途中、聞き慣れた声が聞こえて来た。


「あの二人はダンジョン行ってていないんですよ! いい加減にしてください! ニワトリですか!? 三歩進んだら聞いたこと忘れるんですか!?」


 マルタの怒声が耳に響く。

 何事かと思うと、マルタが商人みたいな男と言い争っていた。


「せ、せめて手紙だけでも……」

「ここを商業ギルドと勘違いしてませんか!? 商売の手伝いをしてる暇は無いんですよ! そんなに二人に会いたければダンジョン行ったらどうですか!? まあそんな度胸ないでしょうけどね!!」

「く、くそ……覚えてろよ!」


 三下のようなセリフを吐き、男がギルドから出ていった。

 その様子を見届けた後、私とアルテナはマルタの元へ向かう。


「クソうさぎ、一体どうしたのよ?」

「あ、お二人とも、戻ったんですね! 丁度良かったです、私の愚痴を聞いて下さい!

「「え?」」


 急に愚痴を聞けとかよく分からない要求をしてくるマルタ。

 いや、そんなことよりも……。


「マルタ、大事な話があるんだけど……」

「よく聞いて下さい! あなた達が私の所にしか来ないから、専属受付嬢だと思われちゃったんですよ! おかげで魔石を取引したいって人が、みんな私の所に来てあなた達に会わせろとか、伝言しろとか、最悪あなた達の許可なしで取り引きしようとするバカが現れてるんです! 相手するの面倒くさいのでどうにかして下さい!」


 私を無視して、相変わらずのテンションで愚痴を言うマルタ。

 なるほど、この前の争奪戦で圧をかけられたと思ったが、まだ欲しがる人物がいて、マルタがとばっちりを受けたという訳だ。


「ギルドで買い取ってくれる準備はまだかかるの?」

「うーん何せ辺境ですからもうちょっとかかりますね。 だからと言って今取引しようとしている人たちに売るのはお勧めしないですよ! 大体があなた達を言いくるめて、安く買い叩こうとしている腹黒い連中でしょうからね!」


 若干マルタの主観が入っているかのようにも見えるが、辺境とは言えギルドでも買い取れないのだ。

 確かに一介の商人が買えるとも思えない。

 だが……。


「アルテナ、安くても良いから、魔石を適当な商人に売ったほうがいいと思うわ」

「はぁ? エレン本気?」

「本気よ、そもそも私達に大金なんて必要ないでしょう? それに、このままだと居候させてもらっているカルロさんや、アーシャさんにまで迷惑がかかりそうじゃない」

「うぐ、それは……」


 損をするのは私も本意ではないが、お世話になってる人にまで迷惑がかかるのは我慢できない。

 アルテナも揺れている。

 後ひと押しあれば行けそうだ。


「あ、それなら魔石をギルドから引き取って、ポンコツさんが納得いく商人と取引するのはどうでしょう!? それなら私も苦労しなくて済みますし! あ、でもポンコツさん取引なんてできますか? 詐欺られて魔石をゴミと交換しちゃったりしませんか!?」

「あたしを何だと思ってるのよ!? いいわ、それで行きましょう! 絶対高く売ってやるんだから!」


 マルタの提案で話が決まった。

 流石に争奪戦の話を聞いて、暴力的に奪おうとする者は出ないだろうしこれで良いだろう。

 後はアルテナが上手く取引できるかどうかだが……まあゴミと交換したら縛り上げて、鍋の具材として煮込む程度で勘弁してあげよう。


「……っ!? 今、すごい寒気がしたんだけど……」

「気のせい」

「それはそうとエレンさん、さっきから抱えているその宝箱なんですか? ずっと気になってたんですけど?」

「あなたが愚痴を言い始めて、話す機会を失ってたのよ。実はね……」


 私は事情を説明する。

 大笑いされるだろうと覚悟していたが、予想に反してマルタは無反応だった。


「なーんだ、そんな事ですか。それなら従魔登録してしまえば問題なしですよ! お二人とも、これにギルドカードをかざして下さい!」


 そう言ってマルタが取り出したのは、赤い星の形をしたシールだった。

 言われた通り二人でギルドカードをかざすと、シールに情報のようなものが書き込まれていく。

 

「これは従魔の証です。このシールを従魔にしたい魔物に貼れば、あなた達の所有物という証になりますよ! けれど注意して下さい。従魔が問題を起こせば、それは主人であるあなた達の責任になりますので! それが嫌なら捨てて来るか始末しちゃって下さい! あ、よければ私が今壊しちゃいましょうか!? ストレス解消にちょうどいいので!」

『……!』


 その言葉を聞いて、レッサーミミックがガタガタし始める。

 

「そんな事しないわよ。マルタ、この子に従魔の証を貼って頂戴」


 マルタがシールをレッサーミミックに貼ると、シールが吸い込まれ、赤い星のマークとなる。

 なるほど、剥がれる心配はない訳だ。

 その後、ダンジョンから持ち帰った素材の査定を済ませ、魔石をアイテム袋に入れた状態で引き取った私達は、そのままカルロさんの家に帰ったのであった。


……そしてその夜、いつものようにアーシャさん、カルロさんとリビングで起きた事を話すと、

いつもは笑うアーシャさんが難しい顔をし始めた。


「アーシャさん、どうかしたの?」

「お前ら、このレッサーミミックをどうする気なんだ?」

「それは……」

「ダンジョン攻略はどうすんだよ? いいか、ヴェインのダンジョンはお前らが遭遇したトラップ部屋なんて例外を除いて、六階層からが本番だ。そこにこいつを連れていくつもりか?」


 アーシャさんは、私の隣で大人しくしているレッサーミミックを指しながら言う。

 確かにそうだ。

 ダンジョンにこの子を連れて歩くのは危険すぎる。

 置いていくというのも考えたが、私達がいない間大人しくしているとも限らない。

 そもそも従魔登録をしてしまった以上、私とアルテナは、この子に対して無責任な事をするわけには行かないのだ。

 

 ……その後、よく考えるとアーシャさんには返答し、寝室にてアルテナと相談する。


「どうするって言われてもねぇ……そもそもこいつが勝手について来たんだし、普通に連れてけば良いんじゃないの?」


 アルテナがそばに居るレッサーミミックを指しながら言う。


「そう言うわけには行かないでしょう? ダンジョンを嫌がってるみたいだし……最悪、攻略を諦める必要も出て来るわね……」

「何でそうなんのよ!?」

「じゃあどうするのよ?」

「「…………」」


 互いにいい解決案が浮かばない。

 とりあえずこの話は保留にして、今日は就寝することになった。


「……そう言えば、魔石はどこに置いてあるの?」

「え? あそこに置いてあるアイテム袋の中だけど?」


 視線を移すと、床に転がっていたアイテム袋が目に入った。

 うん、こいつは何をしているのだろう?


「あなたねぇ……高価なものを床に転がしておく奴がどこに居るのよ?」

「そう言われてもいい場所なんか……あ、良いところあったじゃない」


 アルテナはそう言うと、レッサーミミックの蓋を開け、アイテム袋を中に押し込んだ。


「いや、何やってるのよ?」

「ここくらいしか思いつかないでしょうが。あんた、中の物をしっかり守りなさいよ」

『……!』


 レッサーミミックが蓋を開け閉めして返事をする。

 恐らく「分かった」と言いたいのだろう。

 本人もやる気みたいだし、まあ良いか。


「じゃあお休みなさい」

「ええ、お休み」


 部屋の明かりを消し、私とアルテナベットに潜り就寝した。

 ……その次の日の朝。


「……さい」

「うーん……?」

 まだ眠りの中にいる私に、誰かが話しかけて来る。

 無視して再び寝ようとすると……。


「エレン! 起きなさい!!」

 

 声の主が、今度は私の体を揺さぶりながら起こして来る。

 まどろみの中目を開けると、そこには焦った様子のアルテナがいた。


「どうしたのよアルテナ……そんなに私寝てた?」

「エレン! 箱から女の子が!!」

「……朝から何ボケてるのよ? あと、それを言うなら空からでしょうが」

「ボケてないわよ! こっち来なさい!」


 アルテナが私を無理矢理起こし、近くにいたレッサーミミックのところまで引っ張って行く。


「全く……一体どう……し……」

「……すぅ……すぅ……」


 私は言葉を失った。

 レッサーミミックの中にはアイテム袋ではなく、すやすやと寝息を立てる小さな女の子がいたのであった。

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