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66話 魔戦士ミレイ、退場

被害者……じゃ無くてミレイ視点です

 魔導銃、様々な魔法を放つ事が出来る、今まで見た事がないほど便利な魔道具。

 そのスイッチ(引き金)を引いた瞬間、私は後ろに吹き飛ばされた。

 気づいた時には、後ろに配置された岩の壁に直撃し、身体中の骨が折れる音がした。


「な……何が……?」


 全身に痛みが走る中、誰かの足音が聞こえ上を向くと、そこには新人のエレンというお嬢さんが立っていた。


「安心しなさい、すぐ治してあげるから」


 吹き飛ばされたショックで落とした魔導銃を彼女は拾い上げると、私に向かって魔法を放つ。

 すると、全身の傷が癒えていった。

 「流石に一発じゃ足りないわね……」と言った彼女はさらに数発回復魔法を放つと、私の傷は全回復した。

 まさかこんな重症まで治せるなんて……。

 怪我した事なんて忘れ、私はさらに欲しい欲に包まれた。


「返しなさい、まだ続けるわ」

「ええ、どうぞ」


 魔導銃を受け取り、再び指定された位置に立つ。

 私とした事が、まさかこんな失態をするとは思わなかった。

 

(ふ、どうやらこの子は私の愛剣のように暴れ馬のようね……)


 意識を集中させ魔導銃を構える。


(魔力を意識して制御すれば……ん?)


 制御が効かない。

 それどころか更に魔力が暴れていくのを感じる。

 手元が震えながら私は恐怖を感じ、そのままスイッチを押してしまう。


 ドォォォォン!!


 結果はさっきと同じだった。

 再び私は吹き飛ばされ、岩に激突し重傷を負った。


「はい、回復」


 再び彼女が私の傷を癒す。

 その後、五回目のチャレンジまで私は粘ったが、私は魔導銃を扱う事ができなかった。


「はぁ……はぁ……なんなのよこれ!? こんな物要らないわ!!」


 私は怒り心頭で彼女に魔導銃を突き返すと、早足で去ろうとする。

 しかし。


「何処へ行こうっていうの?『傀儡の鎧(ゴーレムアーマー)』」

「え?」


 後ろから彼女の声が聞こえたと思うと同時に、何かの魔法が私に直撃する。

 すると、私の体が頭を残し、全身岩に覆われた。


「な、何これ!? って!? 体が勝手に!?」


 驚く間もなく私の体が勝手に動き始める。

 そして、何度も立った指定位置まで動いた後、彼女が魔導銃を渡してきた。


「じゃあ六回目、頑張ってね」

「はぁ!? いや、ちょっとま……」


 ドォォォォン!!


 また私の体は吹き飛ばされる。

 衝撃で体を覆っていた岩も砕けたが、彼女は再び、私の体を岩で覆った後回復してくる。


「はい、頑張ってね」

「ま、待ちなさい! その危険物を私に手渡さないで!? もういいから! 諦めたから私は!!」

「ダメ」


 ドォォォォン!!


 また私は重傷を負い、彼女は岩と回復の魔法を私にかけてくる。


「いい加減にしなさい!! 止めるって言ってるでしょう!?」

「そうは言われても……あなた、さっき成功するまでやるって言ったじゃない」


 ハッとした。

 念の為の保険で確かにそんな事を言った。

 まさかこの子……それを真に受けて、本当に成功するまでやらせるつもりじゃ……!?


「せ、せめて後ろの岩を無くして!! あれのせいで毎回大怪我を!!」

「あれがないと遠くまで吹き飛んじゃうじゃない。言ったでしょう? 手間を省くためって。大丈夫。何回でも回復してあげるし、成功すれば終われるわよ」


 満面の笑みを浮かべながら彼女はそう告げる。

 そして。


 ドォォォォン!!


 何回目かもわからない重傷を負い、私はまた復帰させられる。


「無しよ無し!! さっきの言葉は撤回するわ! だからもうやめ……」

「ダメよ。そもそもルール違反になっちゃうじゃない」

「る、ルール違反……?」

「マルタが説明していたでしょう? “途中抜けは禁止”って」


 その時、私はハメられたと理解した。

 いや、私が成功するまでやると言ったのは予想していなかっただろうが、参加者全員を一回は同じ目に合わせるつもりだったのだ。



「い、イヤァァァァァァ!? だ、誰か助けてー!?」


 その事を理解し私は恥も外聞もなく叫んだ。

 しかし、彼女は全く聞く耳を持たず、私は失敗と大怪我を繰り返した。


「……え、エレン君……? もうその辺にしてあげたらどうだい?」


 引き攣った笑顔をしながら、ギルドマスターが私に助け舟を出してくれる。

 助かった! そう思った私だったが……。


「嫌よ。ルール違反したら私、あなたからお仕置きを受ける事になるじゃない」

「そ、それはそうなんだが……ほら、殺人はダメ……だろう?」

「死んでないから大丈夫よ。それとも、出会い頭で剣を突き刺してくる相手に容赦しろってドン・ガイさんは言うの?」

「えっと……それは……」


 彼女に論破され、ギルドマスターは口を閉ざしてしまった。

 私は初めて因果応報という言葉を思い知った。


「お、お願い……助け……」

 

 私は許しを請うが、当然彼女は止めてくれない。

 再び岩に激突したその時、何かが折れるような音がした。

 

(え、『旋風の刃(エアリアル・ブレード)』が!?)


 度重なる衝撃で私の愛剣が真っ二つに折れてしまった。

 その瞬間、『旋風の刃』から強い風が巻き起こる。

 折れた衝撃で暴走し始めたのだ。


「あ……あ……」


 もう私にも制御できない。

 完全に暴走したら、私は風の刃でバラバラに切り裂かれる。

 死を覚悟したその時、彼女が近づいて来た。


「だから外したほうがいいって言ったのに……」


(逃げなさい! あんたも切り裂かれるわよ!)


 そう言いたかったが、怪我のせいで声をうまく出す事ができない。

 共倒れになると思った時、彼女が私の腰にある『旋風の刃』を抜く。

 すると、風は何事もなかったかのように止んだのだった。


「……う……そ……」


 『旋風の刃』暴走をあっさり止めた……?

 まるで心を許したかのように、彼女の手の中で大人しくしている愛剣を見て、私は今更理解した。

 魔力のコントロールに関して、彼女は圧倒的に私を上回っていると。

 魔導銃を扱えなかったのも、単に私の力不足であると。

 彼女もまた、アルテナとは別の意味で化け物だったという事に。


「じゃあ……続けましょうか?」

「ヒィィィィィィ!?」




———————————————————————



エレンside


 その後、心が壊れたミレイは担架で退場し、二度と会うことはなかった。

 ……彼女の折れた魔剣、返し忘れたけどどうしよう?

出オチキャラでした。



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