63話 追放の提案
今回文字数が長くなってしまいました。
申し訳ありません
ヴェインのギルドマスター、『ドン・ガイ』さんに会った私は、気絶したアルテナを何とか起こし、ドン・ガイさん、マルタと向かい合う形でソファーに座っていた。
「はっはっは。驚かせてしまったようだね。アルテナ君は大丈夫かい?」
ドン・ガイさんは筋肉が服の代わりとか、意味わからないことは流石に言わず、緑色を基調とした服に着替えてくれた。
顔は爽やかな笑顔をしたイケメンで、美しい金髪をしているのだが、体長2メートルを軽く超える上にゴツい体をしているため、顔が整っているのが逆におかしくなっていた。
そして、アルテナはというと。
「……エルフって……何だっけ……?」
という言葉を呟きながら真っ白になっていた。
「まだ暫くかかりそうですね。えっとドン・ガイさん? 色々聞きたいんですが……」
「ああ、堅苦しい言葉はいらないよ。君は何故僕がエルフなのに、こんな美しい筋肉をしているのかって聞きたいんだろう? 初めて会う人には毎回言われるからね。 一言で言うなら、僕は筋肉が大好きだからさ。はっはっは」
「ああ……そうなのね……」
頭が痛くなり、ツッコむ気も失せる私。
とりあえずこの人がおかしいだけで、ちゃんとしたエルフもいるって事が分かっただけ安心した。
「因みにギルマスはスキル『マッスル』の持ち主で筋力だけは誰にも負けないんですよ! 冒険者時代は『エルフの面汚し』という二つ名で周りを震撼させていたそうです! 私だったら絶対仲間にしたくないですね!」
「はっはっは。そんな褒めないでくれマルタ君」
この人の冒険者時代って一体……うん、気にしたら負けだ。
そう思っているうちに、ドン・ガイさんが話し始める。
「さて、まずは査定の結果を報告しようか。マルタ、頼むよ」
「分かりました、変態マスター!」
さっきからだが、上司にもこんな態度でいいのだろうか?
まあ本人が気にしてないしいいか。
まずマルタは、魔石とレッドオークの査定の結果を教えてくれる。
レッドオークは足に傷があった以外は良い状態で、さらに剣と盾も持って帰った為、高く買い取ってくれるそうだ。
皮は質の良い防具の材料に、肉は通常オークより美味いと聞いていたので、防具を作る分の皮と、肉を数キロ貰っ、てあとは金に変える事にした。
「と言うわけで、こちらが買い取った分のお金になります!」
マルタは袋パンパンに詰まった金貨を私の前にドンと置く。
地球でいえば数百万相当である。
こんなに貰って良いのかと思ったが、そもそも通常種からも200〜300Kgの肉が取れるらしく、全部持って帰れれば結構な値段になるらしい。
それの希少種ならこれくらいは当然だそうだ。
私はありがたく受け取る事にした。
「ところで、あの魔石の査定はどうなったの?」
「それについてなんですが、こちらの紙を見て下さい! やばい結果出てますから!」
マルタがそう言いながら一枚の紙を私の前に叩きつける。
「一体な……に……」
何事かと思いながら紙を見ると、私は絶句した。
日本円で数十億はするであろう、大金が書かれていたのである。
いやいや、いくら何でもこれはおかしい。
「あの魔石ってダンジョンの一階層で手に入れた物よ? それに一個だけでこの値段は……」
そこまで言うと、マルタが人差し指を眼前に突きつけて来た。
「ちっちっちっ、これだからド素人さんはさんは困りますね! 何処で手に入ったかなんて関係ありません! あと魔石っていうのは量よりも質なんです! あの魔石は大きい上に鑑定結果によると、非常に高純度の魔力が秘められている事が分かりました! ムカつく事にこれくらいの値段は当然なんですよ!」
マルタの説明を聞き、本当に凄い宝を手に入れてしまった事を自覚する。
でも、だからこそ疑問が残る。
「ダンジョンの一階層でそんな価値があるものって見つかるものなの?」
私の質問に今度はドン・ガイさんが答えてくれる。
「そうだね、過去にもそういうことはあったよ。ダンジョンは解明されてない部分も多くて何が起きるかわからないからね。ただ滅多にない事だとは言えるよ」
例えて言うなら、私達は宝くじの一等を当ててしまったと言うことだろうか?
それだけなら、ただ運が良かったで済まされるのだが……。
「さて……ここからが本題だ」
急にドン・ガイさんが笑顔を止め、真面目な表情でこちらを見つめる。
「単刀直入に言おう。君たちをこの町から追放したい」
「え?」
「はぁ!?」
まさかの追放?
予想外すぎる宣言に、灰になっていたアルテナも復活する。
「どういう事よ! えっと……変態筋肉!」
「理由は二つあってね、まず、あの高純度かつ巨大な魔石だ。あれ程の物はなかなかお目にかかれない。今も厳重に金庫の中に保管してあるが、既に何人か盗みを企んだものが出ている」
私は違和感を感じた。
いくら価値があるからといって、ギルド相手に盗みを企むだろうか?
おまけに魔石を持って来たのは昨日だ。
どう考えても早すぎる。
「まあ疑問に思うのは無理もない。実際ただ価値があるだけの物なら、ギルドから盗もうなんて奴は出ないだろう。だが、魔石は様々な用途に使われる。エネルギー、魔法の研究、魔道具の作成……。要するに金ではなく、魔石そのものを欲しがる連中が多いのさ」
なるほど、それなら納得出来る。
けれど、それだと話が繋がらない。
「でもそれが、町を追放されるのとどう言う関係があるの? ギルドに買い取って貰えれば、私達と魔石は関係無くなると思うけど……」
「それが……今すぐ買い取る事ができないんだ」
「え?」
ギルドで買い取れないとはどういう事だろう?
普通に考えれば、買い取るだけの資金がないという事になるが……。
そう思っていると、同じ疑問をアルテナがぶつける。
「はぁ!? 買い取れないってどういう事よ!? まさかギルドに金が無いとかいうんじゃ無いでしょうね!?」
「そのまさかなんですよポンコツさん! いくらダンジョンがあってもヴェインは辺境の地で、 そんな大金を常備する余裕なんて無いんです! 商売を管理するギルド、商業ギルドに持って行っても同じでしょうね! 田舎を舐めないでくださいよ! 私はポンコツさんを舐めまくってますけどね!」
「舐めんじゃ無いわよ!」
マルタの言う通り、ヴェインはダンジョンができるまで静かな田舎町だったらしいし、そうなってもおかしく無いのかもしれない。
そうなると……。
「買い取る準備ができるまで魔石は私たちの所有物になる。つまり、魔石を欲しがる連中から狙われるって事?」
「ああ、その通りだ。取引を迫る者、取り入って魔石を手に入れようとする者、言い出したらキリがない」
「おまけにあなた達がぽっと出の初心者ってことも問題です! この町にいる冒険者達から妬まれて、最悪命を狙われる可能性もあります! 調子に乗るなよこのガキが! ってわけですね!」
うん、非常にまずい事がわかった。
今、私達はあらゆる者から狙われている状況と言うわけだ。
「あともう一つの理由なのだが、それは君の魔道具だ」
「魔導銃の事?」
私はホルスターから魔導銃を手に取り、二人に見せる。
「そうだ、君はそれでゴーレムを作り、レッドオークを持ち帰ったそうじゃないか。それだけでもどんなポーターよりも活躍できる上に、様々な属性魔法も放てると言う噂も立っていてね。 そんな便利な物、放っておかれるわけが無いだろう?」
既にそんな事まで噂になっている……?
出所はアルフさん達とも考えられるが、ルベライトでも魔導銃の性能を見せた事があったので、そっちからと言う可能性もある。
「やれやれですよ! エレンさんはもうちょっとまともだと思ってたんですけどね! あんな人前でパフォーマンスまで行ったら誰だって欲しくなりますよ! そもそもポンコツさんだって人前で魔石を取り出さなければこんな事になって無いんですから! 飢えたオオカミの群れに飛び込むくらいの愚行ですよ! わかってますかWポンコツさん!?」
「「うぐっ!?」
遂に私までポンコツ呼びになってしまった。
アルテナはともかく私には考えがあったのに……!
でも魔石の問題がある以上、どっちにしろヴェインに滞在するのは難しいだろう。
ダンジョンなんて行った日には、魔物よりも冒険者に狙われる数の方が多くなりそうだ。
「まあ、分かってもらえただろう? もうこの町に君たちの安全は無いんだ。申し訳ないが、私達にできる事は、君たちを安全な場所まで送り、魔石の件が片付くまで他のギルド支部で保護する事くらいなんだ」
なるほど、追放と言っても身の回りの安全を確保した上でと言うわけか。
けれど……。
「どうしてそこまでしてくれるの? ただの新人冒険者に……」
「ただの新人ならしないだろうね。だが、君達はゴブリンキングを倒し、ルベライトを救った英雄だろう? そんな将来有望な冒険者をこんなことで失いたいくないんだ」
「……知っていたの?」
「ああ、話なら届いているからね。それに、ガルシア君から手紙が来ていて、君達をよろしく頼むと言われていたんだ」
ガルシアさんがそんな事を……?
きっと私たちを心配してくれたのだろう。
殴って欲しいと言われた時、変態だと思ってごめんなさい。
そして保護してもらう形で話が纏まろうとしたその時だった。
「ちょっと待ちなさい! なんでこの町から逃げる方向で話が進んでるのよ!? あたしは納得してないわよ!」
アルテナが駄々を捏ね始めた。
うん、知ってた。
「アルテナ、じゃあどうするのよ?」
「ふ、決まってるじゃない。あたし達を狙う連中全員返り討ちにしてやればいいのよ!」
考えなしの脳筋作戦だった。
うん、これも知ってた。
「ぷ、あははははは!! やっぱポンコツですね! そんなこと出来ると思ってるんですか!?
強いってだけで乗り切れるような話じゃ無いんですよ! どうしてもこの町にいたければ、いっその事、魔石と魔道具を手放しちゃった方がいいと思いますけどね!」
「なんであたし達が損しなきゃいけないのよ!? 絶対ゴメンだからね!」
マルタとアルテナが口論し始めた。
まあそれはいいとして、実際どうするかだ。
アルテナは絶対譲らないだろう。
だからと言って、狙われている中ヴェインに滞在するのは危険すぎる。
いっそマルタの言う通り手放すか、アルテナの言うように、全員返り討ちに出来れば……ん?
「全部は無理でも、大半をどうにかする事はできるかもしれないわ」
「「え?」」
私の発言に、口論してた二人も驚いた表情で止まる。
「ふむ、エレン君。何か考えがあるのかい?」
「ええ、ギルドに協力してもらえれば、今日中に何とかなるかもしれないわ」
私は三人に作戦を伝えた。
そして数時間後、その作戦は決行される事になった。
どんな形にせよ、危害を加えようとする連中に容赦する気はない。
……さて、漁の時間だ。




