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61話 仲間と一日の終わり

ユニークアクセス数気付いたら500超えてました。

読んでくださってる皆さん本当にありがとうございます

 「パーティ結成の件、無かったことにしてもらえないか」


 俺は今、人生で一番情けない言葉を発した。

 エレンとアルテナ。

 腕試しの為にケイトとダンジョンへ挑戦し、そこで出会った二人。

 彼女達は冒険者になったばかりにも関わらず、優秀なポテンシャルを秘めていると俺は感じた。

 そんな彼女達を仲間にできれば心強いと思ったし、いささか常識が足りていない部分を俺たちならカバー出来る。

 それに、何より俺たちは気が合うと思ったのだ。

 だからケイトに叱られながらも俺は二人をパーティに誘った。

 実際俺たちは意気投合し、俺とケイトだけでは攻める力が足りず倒せないレッドオークだって倒せた。

 だが、そこまでだった。

 トラップにより追い詰められた俺とケイトは足手纏いにしかならなかった。

 戦力として役に立てなかった上に、途中で俺達は諦めてしまった。

 しかし、エレンとアルテナは違った。

 アルテナは魔物の大群を相手に出来るほどの力、エレンは絶望的な状況でも諦めない精神力を持っていた。

 その時悟ったのだ。

 俺達は彼女達と背を預けられるような本当の仲間にはなれないと。

 大事な時に足を引っ張る存在にしかなれないと。

 それほど俺達は冒険者としての資質が劣っていた。

 彼女達は多分そんなこと思ってないだろう。

 だが、それに甘える事なんて俺には出来ない。

 俺のせいで彼女達が傷ついたらと思うと耐えられない。

 ダンジョンの帰り道、ケイトにこの事を話したら彼女も同じ事を考えていた。

 そして決めたのだ、彼女達と別れようと。

 彼女達ならきっと、俺たちなんかより相応しい仲間を見つけるはずだと。




———————————————————-



 エレンside



 アルフさんとケイトさんは、パーティ解散を決めた理由を説明し、お詫びとして今回ダンジョンで得た報酬は全て私達に譲るようギルドに伝えると言った。

 私とアルテナは説得したが、二人の意思は変わらず、私達の元から去っていった。



「……」

「アルテナ、大丈夫?」

「……ふん、問題無いわ。今日数時間過ごしただけの奴らじゃない。別れたところで何も気にする事ないわ」


 そう言って歩き出すアルテナ。

 強がっているが、結構ショックを受けたようだ。

 正直私もショックだったが、こうなるんじゃないかという懸念はあった。

 色々な意味で私達と二人は違いすぎたのだ。

 それがトラップ部屋で顕著に出てしまい、自分達は仲間として釣り合わないという結論を出させてしまった。

 長く共に過ごして絆を深めてからならまた違う結果になったかもしれない……。

 いや、仮の話を考えてもしょうがない。

 気持ちを切り替えなければ。


「じゃあアルテナ、今日は帰りましょうか」

「……そうね」


 いつもの無駄な元気はどうしたんだか。

 どう声をかけて良いかもわからず、私達はそのまま無言で帰路についた。


 ……その数十分後、無事カルロさんの店に帰る事ができた私達は、カルロさんとアーシャさんに帰りが遅かったためかなり心配された。

 まあそうもなるだろう。

 何度も言うが今日は下見と情報収集の予定だったのだから。

 その後、リビングで食卓を囲みながら今日起きた出来事を話すと、カルロさんは呆然とし、アーシャさんはマルタと違い信じた上で爆笑し始めた。


「あははははは!! オマエら初日から何やらかしてんだ!? あーおもしれー!!」

「やらかしって何よ? 別に何もやってないんだから」

「いや、十分やらかしたでしょ。はぁ……」


 疲労と呆れからため息を吐く私。

 

「にしてもエレンもだが、アルテナ。あんまり元気がねーように見えるが、どうしたんだ? 宝物を手に入れたんだろ?」


 アーシャさんに図星を突かれ、アルテナは慌てる。


「いや、別に何でもないし」

「そうか? オマエなら天狗になってふはははは! とかウザいテンションになっててもおかしくねーと思ったんだが」

「アルテナの事よく分かってるわねアーシャさん」

「分かり易いからな」

「どう言う意味よ!? 後別に落ち込んでなんかないから!」


 認めないアルテナを無視し、私とアーシャさんは話を進める。

 

「で、何があったんだ?」

「まあ実はね……」


 アルフさん、ケイトさんの事を話すと、アーシャさんは呆れた顔をしてアルテナを見る。

 

「なんだ、つまりフラれて落ち込んじまったわけか」

「だから落ち込んでないし! フラれたって何よ!?」

「ま、でも良かったんじゃねぇか? 後腐れなく終われてよ」

「「?」」


 言ってる意味がわからず、私とアルテナは首を傾げる。

 

「まあ聞け、冒険者っつうのは危険な職業だ。予期せぬ事で仲間と別れるなんてしょっちゅうある。再起不能なほどの大怪我、病気、最悪その場で死に別れる事だってな。それに比べりゃ全然マシじゃねぇか。それに、今回の事は双方にとって良いきっかけになれたと思うぞ」

「アーシャさん、良いきっかけって?」

「パーティに誘うくらいだ。そいつらはお前達のことを気に入ってたんだろう。それなのに自身の力不足で仲間に相応しくないって結論が出ちまったんだ。……相当悔しかったはずだぜ? 今回の事で、そいつらはもっと上を目指そうって思えるようになったんじゃねぇか?」


 ……確かにそうかもしれない。

 もし私がアルフさん達の立場だったら同じような事を思うだろう。

 そう考えると、今回の事は悪い事ばかりではなかったかもしれない。

 

「そんでお前達だが……仲間の大切さを学べたんじゃないか?」

「はぁ? そんなの最初から分かって……」

「いや、案外気づかないもんだぜ? いるのが当たり前になっちまって、多くは失ってから気づくもんだ。今回はまだ会って間もない奴らだったから多少落ち込むくらいで済んだが、もし失ったのがお前達のどっちかだったら、どうなってただろうな?」


 アーシャさんにそう言われ、もしアルテナがなんらかの理由でいなくなった場合を想像する。

 アルテナがいなくなったら……え? アルテナがいなくなったら?

 私は強い感情が湧き出て、顔を両手で押さえる。


「……駄目だわ……アーシャさんごめんなさい。私、アルテナが居なくなるなんて想像出来ない……いえ、耐えられない……!」


 私はそう言うと立ち上がり、アルテナに迫る。

 

「ちょっ……エレン?」

「ほう?」


 アルテナは顔を赤くして戸惑いながら立ち上がり、アーシャさんはニヤニヤしながら腕組みして「うんうん」と頷く。

 

「だって……アルテナがいなかったら……私……」

「ちょ、エレン!? 待ちなさい! せめて心の準備を……!?」

「……私……何の為にこんな所にいるのよーーーー!!!!」

「「え?」」


 私は両手でアルテナの首を力一杯絞める。


「ぐぇ!?」

「あなたの我儘で連れて来られて、危険な目に遭わされて、挙げ句の果てに勝手にいなくなるとか絶対、ぜぇったい許さないんだからーーーー!!!!」


 怒りで完全に我を忘れた私はアルテナの首を絞めながら前後に振りまくる。


「ぐぇぇぇ!?」

「勝手にいなくなるくらいならここで殺してやるーーー!!!」

「エレン止めろ!! よく分からんが話を振ったアタシが悪かったから落ち着けー!?」


 そのまま床に押し倒したところでアーシャさんが

 止めに入るものの、暫く私の癇癪は続くのだった。

 そして、カルロさんの出番は無いのであった。




 ……その後、何とか癇癪がおさまった私は、アルテナと同じ部屋で就寝しようとしていた。


「うげぇ……本当にあんた何してくれてんのよ……」


 さっき首を絞められた苦しさがまだ続いているらしい。


「自業自得と言うやつよ。はぁ……今日は本当に疲れたわ。お休み」


 明かりを消して、疲労から私は吸い寄せられるようにベットに入る。

 

「ふん、さっさと異世界好きになっちゃえば良いのに」


 そう言いながらアルテナもベットに入る。

 そして、数分の静寂が続いた後。

「ねぇエレン、まだ起きてる?」

「どうしたの?」


 アルテナは数秒沈黙した後再び口を開く。


「……あたしもあんたがいない冒険なんて……想像出来ないから」

「え? 今なんて?」


 アルテナが発した言葉が小さくてよく聞き取れなかった。

 聞き返すも、「何でもないっ」と言ってベットに潜ってしまった。


「もう、なんなのよ……」


 私は再び目を瞑る。

 明日もまた厄介事が起きるんだろうなと思いながら。

 こうして、長い一日が終わったのであった。

ダンジョン初日で長くなってしまいました……

ここからはなるべく早くいけるよう頑張ります

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