表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/121

60話 アルテナ、マルタに成果を叩きつける

 無事ダンジョンを出ることが出来た私達四人はギルドにあった魔法陣の部屋まで戻って来ていた。


「はぁ……ほんっっっっとうに疲れたわ……」

「貧弱なのは変わんないわねぇ」


 思いっきり溜めて疲れたアピールをしてみるが、アルテナに軽く流されてしまう。

 全く……誰のせいでこうなったんだか……。

 うん、早く帰って休もう。

 

「おいエレン、ここまで来て言うのもアレなんだが……不味くないか?」

「え? アルフさん、それはどういう……」


 バァン!!

 

 疑問の答えを聞く前に、アルテナが扉を勢いよく開ける。

 

「おい、そんな乱暴に扉を開けるんじゃうわぁ!?」

「え?」


 部屋の入り口を管理していたギルド職員が腰を抜かす。

 いや、一体何事?


「おい、一体どうしってなんじゃこりゃあ!?」

「なんなんだアレは!?」


 騒ぎを聞きつけてやって来た職員、冒険者達も同じ反応をする。

 そんな驚かれるような事何も……あ。


「し、しまった……」


 私は膝から崩れ落ちた。

 私の後ろには、レッドオーク丸々一匹乗せた荷車にそれを引くアルテナゴーレムがいた。

 そんなのがダンジョンから出て来たら驚かれるのは当然だ。

 早く休みたいという気持ちで一杯になってそんな当たり前のことを失念してどうする……!?

 

 ザワザワザワ……

 

「ケイト……この場合どうすればいいんだ?」

「私に聞かれても……」


 既にギルド内では騒ぎが広がっており、アルフさんとケイトさんも困っている。

 そんな中、アルテナだけは胸を張って上機嫌でいた。


「ちょっと何やってんのよ? 早く行くわよ!」


 アルテナが急かすが、ギルドにいる冒険者や職員達の注目を集めた状態で歩くのは羞恥プレイが過ぎる。

 

「こうなったら……アルフさん、ケイトさん」


 立ち上がりながら二人を見る。


「エレン、この状況をなんとかする方法でもあるのか」

「ええ」

「その方法は……?」


 私はゴクっと唾を呑み、覚悟を決めた。


「開き直りましょう!!」

「「え?」」


 もう考えるのは放棄だ。

 悪いことは何もしていないのだから堂々としてればいい。

 もし何かあればアルテナを差し出して逃げよう。

 私は遠慮なくゴーレム達を動かし大きな荷車をギルド内で動かし始めた。


「ほらほら、邪魔よ! 道を開けなさい!」


 アルテナが周囲の冒険者を退けながら前へ進む。


「アルテナ? 何処へ行くのよ?」

「決まってんでしょ! あのクソウサギのところよ!」


 そう言えばダンジョンに入った理由もマルタにあっと言わせる事だった。

 マニュアルでも煽られてたし相当鬱憤が溜まっているようだ。

 そのまま歩いていると、受付のところに多くの人が並んでいるのが見えた。

 外を見ると既に日が落ちかけている。

 ダンジョンから出た人や依頼が終わった人が多くいる時間帯だ、混むのも仕方ない。

 目立つ中並ぶ事を覚悟したが、一箇所誰も並んでない場所があった。

 その場所は当然……。


「見つけたわよーーー!! クソウサギーーー!!!」

「うわー!? 面倒くさそうなのが気ましたー!?」


 マルタもレッドオークを見てかなり驚いたようだ。

 とりあえず受付に直接に荷車を持って行ったら周りの迷惑なので、一旦ギルドの端に置いて

 マルタの所に四人で行く。


「クックック、さあマルタ! あたし達の成果を見なさい!」

「分かりました! では上司に交代しますので少々お待ちください!」

「逃すかー!」


 アルテナは上司に任せて逃げようとするマルタのウサギ耳を掴み引っ張る。


「み、耳はやめて下さーい!? ていうかあなた朝来たポンコツさんじゃないですか!?

レッドオーク丸々一匹持って来るとかいきなり何やらかしてくれるんですか!?」

「ふん、あんたに一泡拭かせるために頑張った結果よ! それに、これで終わったと思わないことね!」


 アルテナはマルタの耳を掴みながら、更にアイテム袋に入れていた光り輝く巨大な魔石をマルタの前に叩きつけるように出す。


「えーーーー!? なんなんですかこれは!?」

「あたし達がダンジョンで手に入れた宝よ! さあ『馬鹿にして申し訳ありませんでした。あなたはポンコツではなく天才です』って跪いて言いなさい!」


 調子に乗ったアルテナは、机に片足を乗せ思いっきりマルタを煽る。

 それにしてもいきなり魔石を出すとは思わなかった。

 そんな事したら……。


「おい、なんなんだあの魔石は!?」

「あんな美しくて大きな魔石……見たことないわ!?」

「アレを持って来た冒険者は何者なんだ!?」


 うん、やっぱり魔石を出したお陰で騒ぎが余計に増している。

 とりあえず詳しく説明しなければならない


「アルテナ、耳を掴むその手を離しなさい。マルタ、一から説明するから聞いてくれる?」

「は、はい! わかりました!」


 ようやく話せる状況になったところで私はダンジョンで起きた出来事について説明する。

 レッドオークを倒した事、トラップをクリアしたら魔石が出たこと。

 土魔法で荷車とゴーレムを作りレッドオークを持ち帰った事。

 私の説明に、マルタはふむふむと頷くと、急に笑い出した。


「ぷっあはははは!! あなた達何を言ってるんですか!? 今日来たばかりの初心者さんがそんな事できるわけ無いじゃないですか!! レッドオークはダンジョンで確認されたら経験豊富な冒険者パーティに討伐依頼を出す程の魔物ですよ! 嘘ついてドヤ顔って恥ずかしくないんですか!?」

「何言ってんのよ!? 結果を見れば一目瞭然じゃないのよ!」

「確かにレッドオークを討伐して持ち帰ったのは事実でしょう! でもそれがあなた達の手柄とは思えません! きっと凄腕の冒険者を雇って倒してもらったんでしょう! 例えばそこに立ってる二人とか!」

 

 マルタはアルフさんとケイトさんを指しながら言う。

 まあ確かにそう思うのが自然かもしれない。

 だが……。


「確かに俺たちも戦ったが、レッドオークを仕留めたのはアルテナだ」

「それだけじゃないわ、トラップ部屋で何十……いや、何百の魔物相手に一人で戦っていたわ。彼女の実力は本物よ。私たちでは彼女の足元にも及ばないわ」

「むむ……まあ分かりました、ポンコツさんの強さに関しては置いときましょう。でもその荷車とポンコツさんのゴーレムをエレンさんが作ったというのは無理があります! あなた魔力ないじゃないですか!」


 二人に否定されたマルタは、次に私を疑い始めた。

 まあ、魔力が無いと知られている以上そう思われるのはしょうがない。

 ギルド内の視線が集中しているのは気になるが、いつもの言い訳を使う他ないだろう。


「私にはゴーレムを作れる魔道具があるのよ」


 魔導銃で実際にアルテナゴーレムを作り出し、動かして見せる。


「えー!?」

「「「「「「な!?」」」」」


 それを見たマルタや冒険者達は驚愕する。

 

(おい、そんな事したらその魔道具が狙われるぞ!?)


 アルフさんが小声で注意して来るが、こうでもしないと疑惑が解けないのでしょうがない。

 魔導銃の価値については考えがあるので、後日なんとかしよう。


「ふ、そろそろ観念しなさい! もういちゃもんつけれる物なんてないわよ?」

「むむ……いやまだです! その巨大な魔石、本当はダンジョンで手に入れたんじゃなくて、外から持ち込んで、ダンジョン内で手に入れたように見せかけたのでは!? ってそんな事してなんの意味があるんですかー!?」


 とうとう自分で自分にツッコミを入れ始めた。

 本当にネタ切れのようだ。

 「こ、こうなったら……」

 「何よ、まだなんかあんの?」

 

 マルタはプルプル震え、そして……。


「ではレッドオークの解体と巨大魔石の鑑定、査定をギルドで行いますね。他にダンジョンから持ち帰った物があれば提出してください。明日ギルドで結果を報告しますので買い取りなどの相談はその時に行います。以上ですが何か質問はありますか?」

「ふ、質問はないわ。じゃあ後はよろしく頼むわよってちょっと待てー!! 何いきな仕事モードになってるのよ!? 後謝罪しなさいっての!?」

「職員ですから疑いが晴れた以上真面目に働くのは当然ですー。後謝罪って言われてもなんのことかワッカリマセーン」

「こーいーつー!!」

「アルテナ、止めなさい」


 襟を掴んでアルテナを止める。

 疑惑が晴れた以上、もうマルタのペースに乗せられる必要はない。

 言われた通り、ダンジョンで得た魔石を皆で提出する。


「ボッタくるんじゃないわよ?」

「しませんよ! そんな事したらギルドの信用問題に関わりますからね!」

「そこはしっかりしてるのね。そう言えばマルタ、このマニュアルなんだけど」


 私はマルタが書いた傷だらけの本を出す。


「なんですか? 返却ですか?」

「いえ、この本とても役に立ったわ。良ければこの街にいる間、借りたいんだけどいいかしら?」

「え…………? あ……はい。良いですよ」

「……マルタ?」


 マルタが戸惑いの感情を見せる。

 いつもと違う彼女に疑問を抱きながらも、私達はギルドを後にした。


 そして、ギルドの外にて。


「よーし明日は本格的にダンジョン攻略よ!」

「はぁ……無茶を言わないでよ。ダンジョンの奥に行くんでしょう? それなりの準備が必要だわ。四人パーティになったんだし、明日はギルドで色々話し合いたいと思うのだけれど、アルフさんとケイトさんはそれで良いかしら」


 二人に聞くと、何故かバツが悪そうな顔をして困っている姿があった。

 そして意を決したようにこちらを見る。


「エレン、アルテナ……その事なんだけど」

「……すまない。パーティ結成の件、無かったことにしてもらえないか」


 そう言って、二人は頭を下げた。

意見、感想、誤字報告などあったら貰えると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ