53話 出会いと提案
「「はぁ……」」
冒険者狩りを適切に処理した後、再びダンジョンの探索を始めた私とアルテナ。
なぜか二人揃ってため息をつくという状況になっていた。
「アルテナ、また意気消沈してどうしたのよ?」
「いや、何でもないわ」
「……そう言えばさっきダンジョンで出会いがどうとか言ってたわよね。もしかしてあいつらと仲良くしたかった?」
「んな訳ないでしょ! ていうかあれはノーカンよノーカン! そう言うあんたこそどうしたのよ?」
「私は単純に疲れたのよ」
ダンジョンの探索を始めて結構経つ。
歩き疲れもあるが探知魔法で周りを警戒してるせいもあるだろう。
平凡な女子高生にはきついものがある。
「いっそ電動……じゃなくて魔動車椅子でも作ろうかしら?」
「ちょっと、外だけじゃなくダンジョンでも雰囲気ぶち壊すつもり?」
「冗談よ、座ってたらもしもの時に対応できないかもしれないし。それよりどこかで休憩しない?
「そうね、あたしもそろそろお腹減って来たしいいわよ」
そういえば私もお腹が空いて来た。
ダンジョンに入ったのが朝だからそろそろ昼なのかもしれない。
休憩するにしても通路だと危険なので、どこか適当な場所を探す事にした。
それから少し歩いた後、アルテナが何かに反応する。
「エレン、前から何か聞こえるわよ」
「確かに反応があるわね。これは……人と魔物みたい」
「この先で誰かが戦ってるって事?」
「恐らくね」
「じゃあ見に行ってみましょ!」
「え?」
私が何かいう前にアルテナが走り出す。
「はぁ……しょうがないわね」
どうせ他に進む道もない。
私はアルテナの後を追うと、通路の先に開けた場所があり、そこで茶髪の男性と緑髪の女性がスケルトン数体と戦っていた。
「エレン、やっぱり魔物と戦ってるみたいよ!」
「あの人達は大丈夫そう?」
「結構善戦してるみたいね」
苦戦しているなら加勢も視野に入れるところだったが、無用な心配だったようだ。
「なら邪魔にならないようここで静観してましょうか」
「何言ってんの、ここは助け合いの精神で加勢するわよ!」
「え? それは止めた方が……」
私が止める間もなくアルテナが突撃。
冒険者に気を取られていたスケルトン達は背後から来たアルテナに気付くのが遅れ、デスサイズの一閃により全滅させられる。
「ふ、他愛もないわね。あんた達大丈夫だった?」
急に現れ一瞬で魔物を倒したアルテナに唖然とする二人。
だが、次第に不満な顔になる。
「おい、いきなり何すんだよ?」
「獲物を横取りするなんてどういうつもり?」
「え?」
感謝されるとでも思っていたのかアルテナが困惑する。
「はぁ……アルテナ、そりゃそうなるわよ」
助け合いの精神はいい事だが、冒険者の場合取り分などの問題がある。
横から現れた他人に自分も戦ったから分け前寄越せなんて言われたら困るのだ。
無論助けを求められたらその限りではないが、そうで無いなら完全にアルテナが悪い。
「わ、悪かったわ……」
「本当にごめんなさい」
私とアルテナは許してもらうために頭を下げて謝罪をする。
「まあ、分かってくれたならいいさ」
「次から気をつけてね」
男女の冒険者は謝罪を受け入れ許してくれた。
それでも迷惑をかけたのは事実だ。
丁度今の場所はそこそこの広さがあり、休憩に適している。
それなら……。
「私達、ここで休憩して昼食を摂るつもりなんだけど良かったらご馳走させてくれない?」
「いいのか? ダンジョンじゃ食料は貴重だろう?」
「問題ないわ。今日中にダンジョンを出るつもりだし。アルテナもいい?」
「無論大丈夫よ」
「そういう事ならお言葉に甘えましょうか」
「おい、その前に自己紹介しようぜ」
そう言われ私達はそれぞれ自己紹介をする。
二人は私より少し年上で、茶髪で剣と盾を持った男性がアルフさん、緑髪の髪をして弓とナイフを持った女性がケイトさんと言うようだ。
こちらから誘った手前、手伝ってもらうのも憚たので、アルフさんとケイトさんには休んでもらい、私は昼食の準備、アルテナは見張りを担当する。
アルテナが持つアイテム袋から携帯用の鍋を取り出し、先程軽く解体して手に入れたオーク肉と乾燥野菜を入れ、キャンプの時と同じくスープを作っていく。
「こんな感じでいいかしら……ん?」
ふと気付くとアルフさんとケイトさんがこちらをじーっと見つめていた。
私が毒を盛ったりしないか観察しているのかもしれない。
何せ冒険者狩りがいるような場所だ、警戒するのは当然の事だろう。
「なあエレン、変わった“杖”を使ってるんだな」
「え? 魔導銃の事?」
鍋に水を張ったり火を起こしたりするのも魔導銃で行っていたので、カルロさんと同じ様に杖と勘違いしたらしい。
やはり銃がない世界で、魔導銃は変わった杖と思われてしまうようだ。
魔力やスキルがなくても魔法が使えるということを隠すために、カルロさんの時と同じ全部魔導銃のおかげという説明を二人にする。
「てことはそいつがあれば俺も魔法を使えるって事か!? ちょっと貸し……いってぇ!?」
アルフさんの足をケイトさんが思いっきり踏みつけた。
「アルフ、図々しいわよ。大切な武器を他人に預けるわけないでしょう」
「だからって足を踏みつけることないだろ!? いてて……」
「丁度良い薬だわ」
うん、なかなか良いコンビの様だ。
そうこうしてる間に昼食の準備が完了したので、アルテナを呼び、みんなで座ってスープを囲んだ。
「いやーまさかこんな美味い飯をダンジョンで食べられるとは思わなかったぜ」
「ふ、エレンならこれくらい当然よ」
「何であなたが威張るのよ」
「私も驚いたわ、ご馳走するって言っても干し肉くらいかと思ってた」
「そうなの? でもオークもいたし倒せば食料にならない?」
実は滅多に出会えないとか?
いや、私とアルテナはすでに二体と遭遇している。
そんなことはないはず。
「それは調理できたらの話だ。魔法使いがいても、ダンジョン内で食事のために貴重な魔力を使う奴なんていない。戦闘中に魔力切れなんて起こしたら洒落にならないからな」
「調理用魔道具を使うっていう手も無くはないけど嵩張るし、そもそもダンジョンで食料が確実に手に入るとは限らないしね。それなら干し肉とかの方がいいわ」
確かにそうだ。
今まで他の冒険者と行動することなんてなかったから気付かなかった。
やはりマナを魔力に変換する私のやり方は一般的ではないらしい。
魔導銃のおかげということにしてよかった。
まあ、実際はただの欠陥品なのだが。
このまま掘り下げられても困るのでとりあえず話題を変えよう。
「アルフさんとケイトさんはどうしてダンジョンに?」
「へ、そりゃもちろん腕試しさ!」
「腕試し?」
「ああ、俺たちが何処までやれるか試したい。ダンジョンで成果を出せば冒険者として名もあげられるしな。ついでに大儲け出来れば一石三鳥って訳だ」
「私はこのお調子者が失敗しないように監視してるって所ね」
「おい、そりゃねぇだろう?」
「よく先走って痛い目見るじゃないあなた」
「お前がいるから安心して突っ走れるんだよ」
どうやら二人は心から信頼し合っているようだ。
ただ何だろう、惚気にも少し聞こえる。
「そう言うお前達は何でダンジョンに来たんだ?」
「それは……」
「ふ、決まってるでしょ! このダンジョンを制覇するためよ!」
「ブッ!!」
アルテナの宣言にアルフさんが吹き出す。
まあ気持ちはわかる。
「お前達面白いな!」
「アルフさん、私は付き合わされてるだけだからこれと一緒にしないで」
「これ呼ばわりするんじゃ無いわよ!」
「ブッ! 仲間をこれ呼ばわりって……おもしれー!」
「アルフ、笑うんじゃないわよ……プッ」
「どっちも笑ってんじゃないのよ!」
何やら二人のツボにハマってしまったらしい。
こちらとしては笑える状況じゃないのと言うのに。
そう思っていると、意を決したようにアルフさんが立ち上がり……。
「よし決めたぜ! お前ら、俺たちとパーティ組まないか?」
「「え?」」
まさかの提案をされた。




