51話 冒険者狩り
前回オークの身長を三メートルと書きましたが二メートルに修正しました
オークを軽く解体して肉と魔石を手に入れた後、私とアルテナは再びダンジョンを探索していた。
「……はぁ」
「どうしたのよアルテナ?」
さっきまでの元気は何処へやら、軽いため息をアルテナはつき始めた。
まあ宝箱の中身がガラクタだったり、罠にかかりまくっているのだ。
気持ちは分からないでもない。
「わかった、飽きたのね。じゃあルベライトに帰りましょうか」
「飽きてないわ! まあいきなり上手く行くわけないわよね、これからよこれから!」
「でも最初の階層でいい宝があるとは思えないけど」
「ふ、大丈夫よ。あたしが求めているのはお宝だけじゃないわ」
「え? じゃあ何を求めてるのよ?」
「それは“出会い”よ!」
うん、何とも呆れる答えである。
「夢見すぎでしょう?」
「否定する事ないじゃない!」
「するわよ、わざわざダンジョンで出会いを求めなくてもいいでしょう?」
「ダンジョンだからこそドラマチックな出会いがあるかもしれないじゃない! 新しい仲間が出来るかもしれないわよ?」
「つまり新しい被害者を増やそうって魂胆ね」
「どういう意味よ!?」
「そのままの……ん?」
私の探知魔法に何かが引っかかった。
人の形をした魔力が四つ、前方にある通路の曲がり角に存在していた。
何かおかしいと思い、アルテナに知らせようとしたその時。
「エレン、あっちに宝箱があるわよ!」
「え?」
丁度行き止まりになっている左の通路に宝箱があったのをアルテナが見つけた。
「エレン、罠はある?」
「探知魔法で見る限り無いわね」
「じゃあ大丈夫ね! 今度こそお宝ゲットよ!」
アルテナが宝箱に向け走り出したので、慌てて後を追う。
しかし、私達がその通路に入ったと同時に、先ほどの反応がこっちに近づいてくる。
しまった、これは……!
「アルテナ、罠よ!」
「え? でも罠は無いって……」
「ふへへ、カモが来やがったぞ」
私がアルテナに追いつくと同時に、背後からニヤニヤした四人の冒険者が現れた。
「何よあんたら?」
「へ、バカだな。この状況でわかんねぇのか?」
「え? まさか……」
「冒険者狩りってところでしょうね、しくじったわ……」
ファンタジー作品でよく見る他の冒険者を狩り、装備やアイテムを奪う悪人。
魔物や罠に警戒しすぎてこういう連中の事を忘れていた。
おかげで私達は宝箱を餌に逃げ道のない通路に誘い込まれてしまった。
「へ、こりゃラッキーだぜ。かかったのが小娘二人とはな」
「しかも金髪の方かなりの上玉だぜ。ここで殺しちまうのがもったいねぇな」
「ま、その分楽しませてもらおうぜ」
いやらしい目を浮かべてこっちの品定めをしている。
どうやら生きて返す気も無いようだ。
「随分残酷ね」
「当たり前だろ、殺しちまえば証拠は残らねぇからな。おまけに遺体はスライムが処理してくれるしダンジョンってのは絶好の狩場なんだよ。時々お前達みてぇな興味本位で入るバカもいるしな」
「誰が興味本位よ!」
「いや、結構当たってるでしょう」
さてどうするか、この状況は人の襲撃を予想できなかった私の失態だ。
相手は腐っても冒険者、初見の銃もすぐ対応されてしまう可能性もある。
何とか突破口を見つけられないかと考えていると、アルテナが私の肩に手を乗せてきた。
「エレン、何考えてんのよ? まさかこうなったのは自分のせいとか思ってるわけ?」
「実際私のミスよ」
「ふ、じゃあ此処は主人であるあたしが、従者のミスの責任を負ってやるわ」
そう言ってアルテナは双剣を抜き冒険者達の前に立つ。
正直いつも失敗ばかりしているアルテナが言ってもまるで説得力が無い。
けれど……こういう時のアルテナはとても頼りになる。
なら私のやることは一つ、アルテナが暴れられるよう全力でサポートをするだけだ。
「おいおい、獲物は大人しく狩られろよ」
「ふ、あんた達は一つ勘違いをしてるわ。狩られるのはそっち側よ!!」
アルテナが冒険者達に向け突撃する。
相手は四人、剣を持った前衛が二人、弓が一人、そして杖を持った魔法使いが一人。
数では負けてるが強さはアルテナの方がずっと上。
まずアルテナは前衛二人に向けて剣を振る。
「うぉ!?」
「何だこの力は!?」
二人は攻撃を剣で受け止めるが、見た目からは信じられないアルテナの力に一瞬怯む。
そこに弓を持った冒険者がアルテナを狙うがそうはさせない。
私は魔導銃で弓を持った手を狙い引き金を引く。
「ぐわぁ!?」
弾丸は狙い通りの場所を貫通し、冒険者は手から血を流しながら弓を落とす。
魔法使いは油断していたのかハッとして、急いで呪文を詠唱し始める。
脅威と認識したのか狙いは私だ。
私は魔導銃を撃つが、さっきの攻撃を見て警戒されたらしく、詠唱しながらも銃弾を回避し、魔法を放ってくる。
「炎よ、我が眼前の敵を撃ち払え『ファイヤーボール』!」
『マジックシールド』
放たれた魔法を防御魔法で防ぐ。
簡単に魔法を防がれ、魔法使いは苛立ち始めた。
「ち、なんだお前は!?」
「私より他を気にした方がいいと思うけど?」
「なに?」
「「ぐわぁぁ!!」」
私に気を取られている間に、前衛二人がアルテナの攻撃で吹き飛ばされ、冒険者達が1箇所に集まる。
「これでトドメよ! 真紅の爆炎、我に仇なすものを滅ぼせ!「火炎の爆発!!」
ドォォォォン!!!!
冒険者達の前で中規模の爆発が巻き起こる。
煙が晴れるとそこにはボロボロになり倒れた冒険者達がいるだけだった。
「ふん、あたし達に勝とうなんて百年早いわ!」
「私を入れないでくれる? そんな強く無いから私」
「でもあんたのサポートナイスだったわよ」
「まあ、それくらいしかできないしね」
「ほらエレン、手出しなさい」
アルテナが手を広げこちらを待っている。
うん、なんか恥ずかしいけどここは乗ってやろう。
私はアルテナに向かって手を出しそして。
パン!
互いにハイタッチをした。




