50話 エレン、盗賊疑惑を持たれる
私の探知魔法はレーダーのように表示される物では無く、『魔力視覚』と『魔力感知」を組み合わせた物だ。
つまりは魔力を感じたり目視する事で周りを把握するのである。
ダンジョンという閉鎖空間で役に立つか分からず使用して無かったが、私は念の為発動しながら進むことにした。
「これで何か変わればいいけれど……」
探知魔法を使っているとはいえ油断はできない。
警戒しながら先に進むと、私は妙なものを見つけた。
「アルテナ、そこの地面に何かあるわよ」
「え? ……何もないじゃない」
アルテナには見えてないらしい。
よく見ると、確かに魔力が固まっている以外におかしなところはなかった。
「変なこと言ってないで先進むわよ」
アルテナが歩き出すと、丁度魔力が固まっていた場所を踏んだ。
すると、アルテナの顔を目掛け壁から矢が飛んでくる。
「え? うわ!?」
アルテナはなんとかその矢を避ける。
そして、魔力の固まりは霧散していった。
「……なるほど、今のは罠だったってわけね」
「びっくりした……ってエレン? 今の罠見えてたの?」
「ええ、さっきのは魔力で作られた罠だったようね……ちょっと待って」
私はマニュアルを開き罠に関して書いてあるページを開く。
「えっと……『ダンジョンにはたまに魔力で作られた罠が仕掛けられてます! 奥に進むほどヤバい罠があるので注意ですよ! 罠を見つけられるスキル持ちがいると便利ですね! 罠を見つけたら回避するか壊せば解決です! まあダンジョンに挑む人が罠の対策が出来ず踏みまくってるなんてことないと思いますけどね!』……なるほど」
「踏みまくって悪かったわね!」
「そこはどうでも良いわ。罠が魔力で作られてるなら探知魔法が活きるわね」
正直罠も感知できるとは思わなかった。
この探知魔法、ダンジョン探索にて大いに役立ちそうだ。
「これで罠の心配は無くなるわね」
「罠が分かるってそれ反則じゃない?」
「何が反則よ、見つけられるのは私に限ったわけじゃないし、そう言うならあなたには教えないから好きなだけ罠にかかったら?」
「わ、悪かったわ……」
全く、こっちは命がかかっているのに……。
冒険にワクワクするのはまあ良いけど、緊張感というものが足りない。
アルテナにとってはゲーム感覚なのだろうか?
例えゲームだとしても、私にとっては頭にデスと付くが。
その後探知魔法のおかげで罠にはかからず、途中ゴブリンやスケルトンなどの魔物が出て来たが特に問題はなく撃破していく。
そして、通路を曲ったところで小部屋の様なところに出た。
「アルテナ、気をつけて」
「げ、あいつは……」
小部屋には二メートルを超える、肌色で醜悪な顔の魔物がいた。
あれは間違いなくオークである。
『グフフフ……』
こちらを捉えると、怪しい笑みを浮かべ興奮した様子を見せる。
もしあれに負けたら女としての尊厳を全て奪われてしまうだろう。
「ふん、あんな奴一発で倒してやるわ!」
アルテナはデスサイズを出現させる。
小部屋なら広さもあり問題なく使用できる。
このままアルテナに任せても良いが、ここは連携したほうがいいだろう。
「アルテナ、連携で行きましょう。私は光を使うわ」
「OK、任せたわよ!」
これはちょっとした隠語だ。
意味は単純だが、相手に素早く伝えるには丁度良い。
私は魔導銃の弾を聖属性の魔法に変え引き金を引く。
『閃光弾』
銃弾はオークの前で破裂し強烈な光を放つ。
『グォォ!?』
オークは光に目をやられ怯んだ瞬間、アルテナが素早くオークの後ろを取る。
そのまま跳躍、デスサイズを振りオークの首を刈り取った。
「上手くいったわね」
「ふ、ナイスだったわよ」
首と胴が離れたオークはそのまま地面に倒れた。
この世界ではオークを豚肉の代わりとして食べられるらしいので、解体して魔石と肉を少し持っていくのがいいだろう。
「じゃあオークの解体を……」
「あ、エレンあれあれ!」
「どうしたの……ってあれは」
アルテナが指差す方を見るとそこには二つの宝箱が並んでいた。
オークはこの宝箱を守っていたのかもしれない。
「宝箱よ! しかも二つ! 初の探索でいきなり大収穫ね!」
「そうだと良いけど、ちょっと確認して良い?」
私は探知魔法で宝箱を調べる。
すると、右の宝箱には何やら魔力が宿っていた。
「アルテナ、右は罠かも。左だけ開けましょう」
「罠ってミミックとか?」
「生き物じゃ無いのは確かね」
左の宝箱の前にアルテナが立ち、私は念の為離れておく。
「さあ何が入ってるかしらね〜♪」
「最初の階層にそこまで良いものが入ってるか分からないけどね」
「……ん?」
「どうかした?」
「これ開かないんだけど」
私も近寄って調べてみる。
どうやら宝箱には鍵がかかっているようだ。
「こうなったらデスサイズで箱ごと……」
「脳筋な思考止めなさい。うーん……ちょっと試させてもらって良い?」
「え、何か方法あるの?」
「こんな事もあろうかと思って練習しといたわ。鍵開けのね」
私は針金を取り出し宝箱の錠前に差し込む。
数十秒の試行の末、私は鍵を開けることに成功した。
「ほら、開いたわよ」
「エレン、あんたのスキルって本当は『盗賊』なんじゃないの?」
「技術が上がってるだけよ」
『器用貧乏・改』のおかげで私は技術に関することは大抵なんでも出来る。
まあその代わり他のことに関しては貧弱なのだが。
「それより中身見ないの?」
「そうだったわ! どれどれ……?」
アルテナが宝箱を開け、中身を手に取る。
「何が入ってたの?」
「見なさい! ”ひのきの棒“と”おなべのふた“よ! って初期装備かー!!」
アルテナは手に入れたものをぶん投げると、今度は右の宝箱の前に立つ。
「アルテナ、そっちは罠の可能性が……」
「もしかしたら魔力が宿った凄いアイテムが入ってるかもしれないじゃない!」
「何が起きても知らないわよ?」
ヤケになってるアルテナを止めるのは無理だと判断し、私はアルテナから遠ざかる。
「ふん、今の私は矢でも鉄砲でも止められないわ。爆弾くらい持ってこなきゃね」
そしてアルテナが宝箱を開ける。
その瞬間小規模の爆発が起き、少し焦げながらアルテナが私の足元に転がって来た。
「……アルテナ、あなたのスキル本当は『フラグ建設者』とかなんじゃない?」
「違うわよ……ガクッ」
アルテナが気絶したので、私はその隙にオークの解体をする事にした。
このままダンジョンに飽きてくれると嬉しいんだけど。




