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5 アルテナ、早速やらかす

 スライムを倒してから1時間後。私たちは街道に沿って歩き続けていた。時折りスライムが出てくるがアルテナが瞬殺するので問題はない。毎回ドヤ顔してくるのはイライラするが。


「便利ねその鎌、自分の意思で出し入れ出来るみたいだし」

「それだけじゃないわ、こいつは防御を貫通するし斬ると相手の体力、魔力を吸収できるの。これぞスキル『死神』の力よ!」

「あなた女神じゃなくて死神だったのね」

「違うわよ! まだ見せてないけど『獄炎』、『邪眼』っていうスキルも持ってるんだからね」

「訂正、邪神ね」

「違うって言ってるでしょう!天界のツテで手に入れた私専用スキルよ!」

「その情報は聞きたくなかったわ」


 結局ズルで手に入れただけの力みたいだ。他にも言いたい事はあるが神の世界にいちいちツッコミを入れてもキリがない。私はスキルの詳細について聞くことにした。


「アルテナのスキルについて教えてくれない?」

「しょうがないわね、よく聞きなさいエレン」


 アルテナが自慢げに説明し始める。『死神』も含めそれを再びまとめると……。


—————————————————

 スキル 死神

 デスサイズという大鎌を生み出し扱えるスキル。

 スピードを中心に身体能力が向上する。

 デスサイズによる攻撃は防御を貫通し体力、魔力を吸い取り回復できる。

 魂は刈り取れない。


—————————————————


スキル 獄炎

火と闇の魔法を全て使用可能で複合魔法も使いこなす。

所有者は魔力が大幅に増加する。


—————————————————


邪眼

目で見た相手を好きな状態異常にする事ができる。

一瞬でも目を離すと効果を失くす

—————————————————


「どう? 強いでしょ?」

「ええ、強いけど……」


 それ以上に厨二すぎるラインナップに正直引く。まあアルテナはこう言うやつだからしょうがないと思い切ることにした。


「なのよその煮え切らない反応は……ん?」


 アルテナが何かに反応する。よく聞くと遠くから争うような音が聞こえて来た。


「誰かが争っている?どうするのアルテナ……って!?」


 アルテナはその瞬間走り出していた。賭けてもいい、あれは善意での行動じゃない。ただ「お決まりの展開があるかも!」としか思ってない。


「ああもう……!」


 私も後を追い駆け出した。


 私がアルテナに追いつくと緑色の小人に襲われている馬車を見つけた。20匹ほどいて、騎士と思われる赤い髪をした女性が戦っているが押されている。


「あれはもしかしてゴブリン? アルテナ、どうする……って聞くまでもないようね」


 またもや目をキラキラさせたアルテナを見て私はそう悟る。


「当然加勢するわよ! こんな美味しい展開見逃すはずないじゃないの!」


 アルテナはそう言ってデスサイズを取り出し、ゴブリン達に突撃して行った。


「ほら退きなさいゴブリン共! アルテナ様のお通りよ!」

『ギィ!?』


 アルテナにゴブリンが気付くが対応できず一気に4匹を一刀両断する。


『『『ギィギィ!』』』


 ゴブリン達が剣や棍棒を振りかぶり襲いかかってくる。するとアルテナは片手を地面に付き魔法を発動する。


「紅蓮の炎よ! 我が眼前に迫る敵を焼き尽くせ!『炎の壁(ファイヤーウォール)!』」

『ギャァァ!!』

 

アルテナの周りに炎の壁が出現し襲って来たゴブリン達を焼き尽くす。

 厨二詠唱だがそこは気にしない。


「何者か知らんが加勢感謝する!ハァ!」

『ギィ!?』


 女性騎士も剣と盾を上手く使いゴブリン達を捌いて行く。アルテナも負けじとゴブリンを切り裂き、残り数匹となった所でゴブリン達が逃げ出し始めた。


「ふ、たわいもないわ。我が手にかかればゴブリン如き……」

「アルテナ! 何してるのよ、馬車を見なさい!」

「へ?」

「キャァァァァ!!」


 馬車から悲鳴が聞こえる。逃げ出したゴブリンの一匹が馬車の中に入り込もうとしていた。


「しまったお嬢様!」

「あたしに任せなさい!」


 アルテナは鎌を水平に持ち一気にゴブリンを切り裂いた。


『ギィィィ!?』

「ふ、我を出し抜こうなぞ100年はや……」


 ゴトンッ


 「「「え?」」」


 変な音をたて馬車の上半分が落ちた。その場にいる3人の顔が青ざめる。


「お、お嬢様ーー!!」

「アルテナ……あんたってやつは……!」


 私は駆け寄りアルテナの服を掴み、睨みつける。


「ちょ、ちょっと失敗しちゃったわね……」

「ど・こ・がちょっとなのよ!」

「ま、まあ待ちなさい、まだ馬車にいた奴が死んだと決まったわけじゃ…」

「何が起きたのですか……?」


 馬車から声が聞こえると同時に少女が起き上がる。彼女はゴブリンに驚き倒れたおかげでギリギリアルテナの一撃から逃れていた。


「お嬢様! 無事だっ……た……」「「あ……」」


 私たちは絶句した。その少女は頭のてっぺんが禿げていたのだ。さっきの一撃は少女に甚大な被害をもたらしていた。


「……」


 バタッ


 女性騎士が白目を剥いて倒れた。私は首をギギギという効果音が出そうな回し方をして再びアルテナを睨みつける。


「何かいう事は?」

「ふ、あたしはとんでもないものを盗んでしまったようね。それは、あの子の髪のギャァァ!!」


 私の拳がまたアルテナを襲った。

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