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49話 無知のままダンジョン突入

今回からやっと冒険物っぽくなる……と思います

アルテナに引きづられ無理矢理ダンジョンに連れて行かれる私。

 変な目で周りに見られながらも、ダンジョンの扉を管理している職員にカードを見せて無事中に入ると、そこには魔法陣が描かれた大きな部屋があった。

 どうやらこの魔法陣が入り口らしい。


「よーし入るわよ!」

「わかったけど、そろそろ手を……」


 言い終える前にアルテナは私を引きづりながら魔法陣に入る。

 すると、一瞬の浮遊感と共に風景が変わり、気づくと周りがレンガの様なもので作られた部屋に立っていた。


 「ここがダンジョン……?」


 その部屋は四方に通路が続いており、同じく転移して来た冒険者達もいる。

 どうやら決まった道というものはないらしく、それぞれが好きな通路を進んでいるようだ。

 

「ふっふっふ、遂にやって来たわね! 早速行くわよエレン!」

「良い加減頭冷やしなさい」

「ぎゃぁ!?」


 私は魔導銃で水球を発射しアルテナにぶち当てる。

 そこでようやく私は立ち上がれた。


「何すんのよ!?」

「それはこっちのセリフよ。結局何も知らないままダンジョンに来ちゃったじゃないの」

「ふ、何が起きてもあたしがいれば大丈夫よ」

「とにかく、私は今のまま探索なんてする気はないから。少し時間を頂戴」


 私はそう言うとマニュアルを手に取る。

 もうダンジョンに入ってしまった以上、情報はこの本から得るしかない。

 

「ふん、そんな本が役に立つとは思えないけど。まあ良いわ、40秒で読みなさい」

「無茶言わないでよ」


 私は部屋の端に座りマニュアルを読み始める。

 内容によると、ダンジョンはダンジョンコアにより生成された異空間であり、中にはダンジョンにより作られた魔物や罠、お宝が存在する。

 お宝は宝箱に入った物のことを言い、中には木の棒から高価な魔道具(武器や防具も含む)まで様々な物が見つかる。

 それらは消費されるとダンジョンがまた生成するため実質無限にあると言う。

 次の階層へ進むには下へ続く階段を見つける必要があり、ダンジョンは稀に形を変えるためマッピングは不可能である。 

 5階層ごとに入り口と繋がる帰還の魔法陣が存在し、一度辿り着けば戻ってもまたその階層からスタートできる。


「……とりあえずはこんなところかしら」


 文章はマルタのテンションで書かれていたため、かなり目が滑ったが我ながら上手くまとめられたと思う。

 まだ概要部分だけしか読めてないがひとまずこれで良いだろう。

 ひとまず私は内容をアルテナに伝える。


「……まあこう言う感じの内容だったわ」

「へぇー、まあやることは変わんないじゃない。探索して、魔物を倒して、お宝を集めればいいのよ! そしてクソうさぎに一泡吹かせてやるんだから!」

「頼むから無茶な行動だけはしないでよ?」


 その後、アルテナが適当に進む方向を決め歩き始める。

 私はマニュアルを袋に入れ、いつでも魔導銃を抜く準備とマジックシールドを発動できるようにしてアルテナの後を付いて行った。



 ……歩き始めてから数分後、私達は変わり映えのない通路を歩いていた。

 通路の広さはそれなりにあるが、デスサイズのような大鎌で暴れるには少し心許無さそうだ。

 マテツさんから双剣を買って良かったかもしれない。

 途中分岐もあったがアルテナはとりあえずまっすぐ進んでいる。

 

「何か起こらないかしらねー?」

「呑気ね、あなたは」

「未知の探索ってワクワクするじゃない! あんたも探索ゲームとかやってる時そうならない?」

「頭に“ホラー”ってついて無かったらね」


 アルテナの場合大体の事は力押しで何とかできるだろうが私はそうじゃない。

 いつホラーでありがちな初見殺しが来ないか気が気じゃないのだ。


「ふ、心配性ね。ここは最初の階層だしそこまでやばい魔物や罠があるわけ……」


 突如アルテナが踏んだ地面に魔法陣が出現したかと思うと、次の瞬間トラバサミが出現しアルテナをガッチリ噛んだ。


「ぎゃぁぁ!?」

「早いフラグ回収ね。もしかして狙ってた?」

「んなわけあるかぁ!」


 トラバサミ自体は大した力は無く、少しアルテナの足に食い込んだ程度だった。

 そのため外すのは簡単で、弱いヒールですぐ回復できた。


「少しは慎重になろうと思えた?」

「はいはい、わかったわよ!」

「分かればよし……ん?」


 アルテナの声に引き寄せられたのか、カラカラという音を出しながら何かが近づいてくる。

 姿が見えると、それは錆びた剣を持った骨の人間だった。


「あれはスケルトン? やっぱりホラーじゃないの」

「どうでもいいわ! ダンジョン初戦闘ね、気合い入れていくわよ!」


 私とアルテナは即戦闘体制を取る。

 スケルトンは3体、まだ数メートル距離がある。

 まず私は一体のスケルトンに狙いをつけた。

 骨相手に何処を撃てばいいか分からないがとりあえず頭を狙って撃つ。

 銃弾はスケルトンの頭を破壊、撃たれたスケルトンはそのまま倒れバラバラになった。

    

「骨だけあって脆いのかしら? 一体減らしたからあとは頼むわよ」

「ふ、あたしに任せなさい!」


 赤と黒の双剣を手にアルテナが突撃し、スケルトン2体もアルテナ目掛けて剣を構え突撃する。

 スケルトンは骨だけあって軽いのか動きは素早い。

 だがアルテナはスケルトンの前で踏み込みさらに加速。

 スケルトン達はその動きを捉えられず、一瞬で胴を切り裂かれそのまま動かなくなった。


「ふ、骨如きにあたしが負けるわけ無いわね」

「まだ油断しないでよ」


 私は再生し動き出す可能性も考え、警戒しながら倒れたスケルトンを調べる。

 すると、小さな光る魔石を見つけたので回収する。

 どうやらこれが戦利品のようだ。


「初戦はまずまずかしらね……」

「エレン、スケルトンが持ってた剣はどうすんの?」

「錆びてるし嵩張るだけよ。放っておきましょう」

「確かにそうね、にしても……」


 アルテナは通路に散らばったスケルトンの残骸を見る。


「めちゃくちゃ邪魔ね。他の冒険者の邪魔になりそうだし燃やしとく?」

「大丈夫よ、暫くすればスライムが掃除してくれるわ」

「は? 何でスライムが?」


「ダンジョンに放置された物は暫くすると、何処からとも無く現れるスライムが吸収してくれるらしいわ。だから何か残ってればそこを誰かが直近で通ったって分かるみたい。

「へぇーって何でそんなこと知ってんのよ?」

「マニュアルに書いてあったわ」

「え? それマジなの?」


 アルテナが怪しむので私はマニュアルを開きアルテナに見せる。


「えっと……『ダンジョンに放置された物は何処からとも無く現れたスライムが吸収してくれます! だから何かが残ってれば少し前に誰かがいたって分かりますよ! まあダンジョンの基本なのでまさか知らない人はいないでしょうけどね? ね? ね?』って知らなくて悪かったわね!!」

「はぁ……これに関してはマルタに文句言えないわね」


 やはり情報無しで来たのは痛そうだ。

 ここからはさらに慎重に進もう。

 私はそう思い、探知魔法を展開した。

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