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48話 元気な受付嬢マルタ②

 ギルドの受付嬢マルタにまたスキル詐称の疑いをかけられた私とアルテナ。

 とりあえず私は冤罪だとマルタに説明をする。


「マルタ、私達のスキルが胡散臭い事くらいは分かるわ。でもちゃんと鑑定してもらってルベライトのギルドで登録したの。だからスキル詐称は誤解よ」

「ふむふむ、確かにギルドカードにもお二人が登録した場所はルベライトのギルドって書いてありますね」


 マルタの納得した様子にアルテナもホッとした顔をする。


「分かればいいのよ、じゃあさっさと許可を……」

「尚更怪しいですね!」

「何でそうなるのよ!?」

「ふっふっふ、知らないとでも思いましたか? そのギルドで不祥事を起こし死刑になった職員がいた事を!」


 マルタがドヤ顔で言う。

 不祥事を起こし死刑になった職員……間違いなくライラの事だろう。

 アルテナも思い出したのか苦い顔をする。

 

「ズバリ、その人にお金を渡して不正登録してたんでしょう!」

「んなわけないでしょ!」

「でも証明できますか? 出来ないですよねー? はい論破ー♪」

「ぐぬぬ……ライラのやつ! 死んでなおあたしの邪魔をしようっていうの!?」


 いや、まだ死んだかどうかわからないけど。

 しかしこのマルタというギルド嬢、こちらの罪を糾弾すると言うよりは……いや、まさか……。


「アルテナ、冷静になりなさい。そもそも証明なんて前回みたいに鑑定して貰えばいいだけじゃない。」

「た、確かに……」

「それに、多分なんだけど……マルタは私達をからかってるだけなんじゃない?」

「え?」 


 キョトンとしマルタに視線を向けるアルテナ。

 そして。


「……あ、わかっちゃいました? やりますねあなた!」

「はぁ……」


 やっぱり、途中からなんか楽しそうだったし。

 私はため息を吐くと、アルテナが無言で双剣を抜こうとしてたので、手を掴んで止める。

「エレン、止めんじゃないわよ!」

「止めるわよ、ギルド内で武器出しちゃ駄目でしょ」

「あれ〜来ないんですか? ぷっ案外腰抜けですね」

「何ですってー!!」

「アルテナ、相手のペースに乗せられるんじゃないわよ! ていうかそんな大声出したら周りの迷惑……ん?」


 周りを見ると予想通り周りの視線を集めていた。

 だが、アルテナが騒いで迷惑というよりは、同情や楽しんでる感じの目を向けられていた。


「……マルタ、あなたまさか毎回こんな事やってるの?」

「……あ、分かっちゃいました? やりますねあなた!」

「はぁ……」


 既に何回目のため息かわからないが、さっき受付に向かう時クスッと笑われた理由がわかった。

 みんなわかっていたのだろう、私たちがマルタにからかわれる事に。

 

「問題ありすぎでしょ! あんた、ライラと同じで権力で好き放題やるタイプね!」

「違いますー。むしろ一番の下っ端で雑用ばっかやらされてますー」

「……よくギルド嬢クビにならないわね」

「あはは、よく言われます! まあしっかりお仕事はしましたから。はい、許可が降りたのでギルドカードをお返ししますね」


 そう言ってマルタは私とアルテナのギルドカードを差し出した。

 登録情報の横に新しく赤い印が入っており、これが許可証だそうだ。


「最初から許可出す気ならさっきの茶番いらなかったでしょ!?」

「いやー許可降りるまでちょっと時間かかるのでその間ちょっと楽しま……疑問をお聞きしただけですってー」

「今本音漏れてたわよあんた!」

「あはは♪ でもあなた達が冒険者として初心者だというのは事実です。一応聞きますけどダンジョンの事、よく分かってますか?」

「ふん、当たり前よ。多くの魔物と罠、そしてお宝がある迷宮でしょ?」


 アルテナが自信満々に答えるが、マルタはそれを聞いて呆れた表情になる。


「やれやれ、雑な情報しか知らないじゃないですか。そんなのでダンジョンに挑戦しようって言うんですか? やれやれですね」

「本当にそうよね……」

「こら、エレンまでそっちつくんじゃないわよ!」

「アルテナ、今日は情報収集と下見が目的でしょう? マルタの言う通りしっかりダンジョンというものを知ってから行くべきよ」


 何せ私達はヴェインのダンジョンがどんな構造なのか、どんな魔物やトラップが待ち受けてるのか、そしてどんなお宝があるのかも知らないのである。

 こんな状態で行っても無謀としか思えない。


「なるほど、エレンさんでしたっけ? そちらのポンコツさんと違ってしっかり考えてるようですね」

「まあね」

「こら!? 誰がポンコツよ!?」


 アルテナの言葉は無視して私とマルタは話を進める。


「マルタ、ダンジョンに関して知れる資料とかはある?」

「ふっふっふ、それならぴったりなものがありますよ!」


 そう言うとマルタは机の下から何かを取り出す。

 どうやら本のようだが、表紙部分が傷だらけな上に血が付いた後の様なものがあちこちにある。


「……マルタ、これは何……?」

「私直筆のダンジョンマニュアルです!」

「ダンジョンマニュアル……?」 

「そうです! ここにはヴェインのダンジョンについて纏めたものが全て書かれてますよ! あ、代金は要らないので、ヴェインを去る時に返してくれればOKです!」


 そんな都合のいい物が存在するのだろうか?

 おまけにタダって……。

 流石のアルテナも疑うような目で見ている。


「あ、疑ってますね!? 安心して下さい、ガセ情報なんて載ってませんから! ただ持って行った冒険者全てがダンジョンで全滅してるだけです!」

「呪いのアイテムじゃないの!!」

「つまり曰く付きって訳ね……」


 表紙の傷と血の跡が付いてる理由がわかった。

 確かにそんな物誰も持って行きたくない。

 ただ、情報が正確なら中身は気になる。


「そうね……ギルド内で読ませてもらうだけなら良いかもしれないわね。じゃあ少し借りて良い?

「え、あんた本当に借りるの?」

「読むと死ぬ訳じゃあるまいし大丈夫よ」

「わかりました! マニュアルをしっかり読んで、良きダンジョンライフを送って下さいね!」



 私達は本を受け取りマルタと別れ、ギルド内のテーブルスペースに移動する。

 

「はぁーーあいつのせいでどっと疲れたわ……」


 アルテナがテーブルの上に突っ伏す。

 

「まあ気持ちはわかるわ。とりあえずこの本を読んでみましょうか」

「まともな事書いてあるんでしょうね?」


 私はマルタに渡されたマニュアルの最初のページを読む。


「えっと……『このマニュアルを持ってる人はポンコツしかいません。パーティに入れたりしないよう気をつけましょう』」

「ふーざーけーるーなー!!!」

「はぁ……」


 まさか本でも煽ってくるとは

 うん、なんか読みたくなくなってきた。


「エレン! こうなったら今からダンジョン潜るわよ!」

「え? いや、まずは情報収集が先……」

「そんなの後! ダンジョンで結果を出してあのくそウサギをあっと言わせてやるわ! ほら、来なさい!」

「ちょ!?」


 アルテナが私の背中を掴み、ダンジョンの扉へ強引に進んでいく。

 私ではアルテナの力には逆らえずそのまま引っ張られる羽目になった。

 もう……何でこうなるのよ……!!

 


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