4 依蓮とアルテナ、異世界に降り立つ
辺りが草原に包まれた街道、そこに二人の少女が現れた。一人は黒いローブを来た長い金髪の少女、もう一人はセーラー服を着た黒い髪のポニテ少女である。
「異世界到着! あたしの冒険譚はここから始まるわよ!」
「そう、良かったわね」
「何よテンション低いわね。今からそんなんじゃ先が思いやられるわ」
「私の置かれた状況で上げられるわけないでしょう」
だいぶ上った血が降りて来たので深呼吸をして今の状況を私は整理する。結局元の世界に帰るにはこいつの休暇が終わる時一緒に帰るしか無いみたい。つまりアルテナと一緒に十年間異世界冒険をしないといけないわけだ。本当に何でこうなったんだろう。
「はぁ……」
「安心なさい、帰る時はちゃんと元の時間、元の年齢に戻して
あげるから」
「あなたと十年も一緒にいなきゃいけない事に悩んでるのよ」
「何ですって!?というかいい加減名前で呼びなさい、あたしの事はアルテナ様と呼ぶように!」
「はいはいアルテナ」
「様をつけなさいよ! ……まあいいわ。その代わりあんたの事は依蓮……いや、分かりやすくエレンと呼ぶから」
「え? 何が変わったの?」
「ま、とりあえず街へ向かうわよ。ついて来なさい」
そう言ってアルテナが街道を歩き始めたので私もついて行く。
歩きながら私はこの世界について説明を受ける。まとめると……。
1.この世界はラノベによくある剣と魔法の世界である。
2.生まれた時スキルに目覚める。基本一つ。複数はレア。
3.アルテナと私もスキルを習得している。
うん、掘り下げるとキリがなかったのでこれだけ覚えれば良いだろう。
「アルテナ、私のスキルは一体何なの?」
「残念だけど知らないわ、本当は『英雄』のスキルを持ったやつを呼びたかったけどあんたに邪魔されたから」
(委員長そんなスキルを持ってたのね……)
本当なら委員長は夢を実現していたかもしれない。色んな意味で後悔してきた。
「スキルはどうすれば確認できるの?」
「さあ? 教会かギルドじゃないの?」
「テンプレな答えね」
まあ街で聞けばわかるでしょう。そう思っていると目の前に何か動くものが見えた。よく見るとそれはネバネバした水色の液体に見える物であり……。
「もしかしてスライム?」
おそらくそうだ、お決まりだけど初めて出会う魔物が本当にスライムなんて。
「ふ、早速魔物が現れたわね。ちょうど良いわ。エレン見てなさい、私の実力見せてあげる」
子供のように目をキラキラさせたアルテナが前に出る。どうやら興奮しているようだ。
(まあ待ちに待った展開みたいだし無理もないわね)
そう思っているうちに早速戦闘が始まった。
「来なさいデスサイズ!そして喰らいなさい!」
アルテナが手を上にかざすと身の丈ほどの黒い鎌が現れる。その直後目に見えない速度でアルテナは攻撃し、気付いたらスライムは真っ二つになって動かなくなった。
「見たエレン? これが私の実力よ」
アルテナがドヤ顔で戻ってくる。
「……たかがスライムに勝ったくらいで何を威張ってるの?
「ふん、強がっちゃって。まあいいわ、これから『今まで無礼を働いてすみませんでしたアルテナ様』って言いたくなるくらい見せつけてあげるから」
「そんなこと言う日は永遠に無いわよ」
「ふん、どうだかね。プップップ」
嫌らしい笑い方をされるが実際私は強がっていた。今までの印象からここまで強いとは思ってなかったのである。
(強くて安心した部分はあるけれど……同時に面倒くさくなったわね)
今のアルテナは調子に乗っている。おまけに強いからこそ手に負えない。
(何かやらかさないといいけど……)
そして、その不安が早速現実になる事を私はまだ知らなかった。