3 異世界行き、勝手に決まる
天界のとある一室、その部屋では頬が腫れ涙目になっている女神が正座し、その前に仁王立ちしている人間がいるというシュールな図が出来ていた。
「で、私を召喚したのは手違いと言うことでいいの?」
「ええ、その通りよイタタ……」
詳しく聞いたところ、アルテナは委員長を召喚対象にしていたらしい。まあ当時の状況を思えば明白な事だったんだけどまさか委員長にそんな趣味があったなんて…素直に尊敬していたので少しショックを受ける。というか無意味な暴露だった。
「第一気付くのが遅すぎよ? そんなに似てないはずだけど?」
「まさか違う人間が召喚されるなんて思って無かったし……あの時は旅立つ事で頭がいっぱいだったのよ」
「どれだけ浮かれていたのよあなた、とにかく人違いだって分かったら私を元の場所へ帰してくれない?」
「は?何言ってんの? そんなの無理に決まってるでしょう。アンタを召喚したのと同時に休暇に
入ったんだから。ここはすでに地球から離れた異世界の天界。もう地球の管理から離れたあたしには何の権限も……ギャァ!」
アルテナの頭を鷲掴みにし地面に打ちつける。
「じゃあ私はどうやったら今すぐ帰れるのか教えなさい。変なこと言ったらまた痛い目見るわよ」
「そんなのたった一つよ。あたしが異世界の冒険に満足して休暇が明けたその時に帰してや……いだいいだい!!」
さらに足で頭を踏みつけぐりぐりする。
「い・ま・す・ぐ帰る方法を教えなさいって言ったのよ。アンタの自分勝手な旅に付き合うわけないじゃない。早く教えなさい……!」
「お、教えるから足を退けなさい!」
足を退けるとアルテナは立ち上がり話し始める。
「この事を上位の神に報告するという手もあるわ。でもそれはお勧めできないわよ」
「その理由は?」
「勝手に人間を召喚して別世界に連れてったなんて知れたらあたしは天界から追放されるじゃないの! そんな事は絶対に許さひぃぃ!!」
私ははアルテナの服を掴み至近距離で睨みつける。
「それはあなたの自業自得じゃないの。私には一切関係関係ないわ。さっさと報告して罪を認めて来なさい」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! まだ大事な事を言ってないわ!」
「もうこれ以上大事な事なんてないでしょ。決まりね、あんたを上位の神に突き出すことにするわ」
「本当に大事なことよ!いい!?人間が勝手に世界を渡るなんてこと天界では禁止されてるのよ!」
「え?でも今回はアンタが呼んだんでしょ。つまり許可をとって……まさか」
「あたしは地球を管理していると言ってもただ起きた事を上に報告するだけ、そんな下っ端が許可なんて取れるわけないじゃない。もしバレたらあたしたちは 一緒に終わりってこと……」
「偉そうに言うな!」
「ギャァァ!!」
私は再びアルテナを殴った。しかしそれで問題が解決するわけではない。
(平穏に生きるはずだったのに……何でこんなことに)
冒険に憧れる女神と帰りたい人間。そんな二人の異世界生活がはじまろうとしていた。




