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27 異世界の朝

 地球ではない別の世界。

 科学ではなく、魔法が発展した通称異世界。

 その世界にあるルベライトという街、その外れには一軒のレンガで出来た白い家があった。


「ふわぁ……朝日が眩しいわ……」


 その家に住むエレンという十六歳の少女。

 彼女は朝日がさすと共にベットから起き上がる。


「さて、今日も頑張るとしましょうか」


 エレンは寝巻きを着替えると、顔を洗うため洗面台に向かう。

 洗面台の前に着いたエレンは、若干眠そうな顔をしながら言葉を発する。


「『ウォッシュ』」


 エレンがそう言うと、洗面台の上に、握り拳大の水球が出来上がる。

 その中に顔を入れ、バシャバシャと顔を洗う。

 これは魔法。エレンが顔を洗うために作りだした、水魔法である。

 タオルで顔を拭いた後水を消すと、エレンは同居人に会うため、庭へ向かう。

 庭には一つの”墓石“が存在した。

 


「……おはようアルテナ」


 エレンは庭にある墓石に話しかける。

 墓に刻まれた名前はアルテナ。

 エレンを地球から召喚し、この世界に呼んだ女神の名前だった。


「あなたが死んで数日経つけど……変なものね。嫌いだった筈なのに……少し寂しさを感じるわ……」


 朝、死んだ相棒へ話しかける事。

 それが彼女の日課であった。


「私はあなたの分まで生きてみせるから……草葉の陰から見守って……」

「ちょっとエレン?顔洗うから水欲しいんだけど?ってあんた!またあたしの墓作って何やってんのよ!?」

「はぁ……」


 うん、どうやら現実を見なきゃならない時が来たようである。


「アルテナ、少しくらい現実逃避する時間を頂戴よ。こんなクソ女神と一緒にいなきゃならない現実からね」

「クソ女神って言うんじゃないわよ! あんたあたしの扱いどんどん酷くなってない!?」

「それはあなたの日頃の行いよ。この前家を壊した事、忘れたとは言わせないわよ」

「ま、まあちょっとドジっちゃった事は認めるけど……」

「ちょっと……?」


 私は両手でアルテナのこめかみをぐりぐりする。


「ギャァァ!! 痛いからやめて!!」

「家がちょっとで壊れるなら、欠陥住宅なんてものは存在しないのよ!」

「建て直したからいいじゃないの! しかもあんたの魔法で簡単に!」

「それとこれとは話が別!」

「ギャァァァ!? やめて!?」


 そう、説明するまでもないかもしれないが、今建ってる家は私が土魔法で一から作ったものである。

 流石にこれだけの質量を作るのに苦労はしたが、何とか立て直す事ができた。


「もし次壊したら、あなたは犬小屋に住んでもらうから覚悟しなさいよ。安心しなさい、餌くらいは持って行ってあげるわ」

「わかった! もう絶対壊さないからぐりぐりやめて!」


 十分憂さ晴らしが出来たので私はアルテナを解放する。


「後良い加減墓を作るのはやめなさい! あんた私がいなくなったら帰れない事忘れてない!?」

「勝手にこの世界に連れて来たのは誰?」

「それはあたしね。待って、また銃を突きつけるのはやめて!?」

「わかったわ、もう墓を作るのは止めてあげる。でも次帰ることを材料に言い訳したら本当に墓送りにするからね?」

「は、はい……」


 とは言っても本当に墓送りにできるかはわからない。この前宣言通り眉間に撃ちまくったけど何故か死ななかったし……丈夫にも程がある。とりあえず今度は生き埋めに挑戦しよう。


「じゃあ私は朝食の用意をするから、顔洗って来なさいよ」

「あの……水は?」

「井戸から汲んできなさい」


 そうアルテナに言い放ち家の中へ戻り、台所で朝食の準備をする。

 献立はパン、目玉焼きにベーコン、そして紅茶だ。

 リビングへ持って行くと、いつの間にか帰って来ていたアルテナと一緒に朝食を摂り始める。


 「この目玉焼きとベーコンいい焼き具合ね、紅茶もすごく美味しいわ」

 「そう、ありがとう」


 料理はともかく私は紅茶なんて入れた事が無かったのに、アルテナには絶賛だった。

 これは別にアルテナが味音痴な訳ではない。

 私のスキル『器用貧乏・改』はあらゆる技術を極める事が出来る。それがしっかり反映されてしまっていて、私の料理はプロ級になっていたのだ。


「正直食べて行けるわよね、冒険者なんかしなくても」

「ちょっと、まさか辞めるなんて言うんじゃないでしょうね?」

「そこまで言うつもりはないわ。今の所、お金のために冒険者を頑張る必要は無いって思っただけよ。貯金もあるし。」

「そういえば貯金っていくらあるの?」

「しばらく遊んで暮らせるくらいあるわね」

 

 ゴブリンキング討伐の賞金はかなりの大金だった。

 ラノベの主人公が、冒険者稼業で大金を稼ぐのは良くある話だが、実際体験するとなんともいえない気持ちになる。

 

 「ふ、さすがあたし達ね。この調子で今日も冒険者稼業頑張るわよ!」

 「いや、今日は止めましょう」

 「何でよ? 行きたく無いとか言うつもり?」

 「違うわ、用があるのよ。アルテナも来なさい。」


 朝食を食べ終わった後、私はアルテナを連れある場所へ向かった。

 その場所は……。


「何よここ? 図書館?」

「ええ、そうよ」

「こんな所に何の用があるの?」

「図書館でやることなんて決まってるでしょう」


 私は分かりきった答えをアルテナに言う。

「アルテナ、勉強の時間よ」

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