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26 閑話 暇を持て余した女神

「はぁ〜つまんないわ。何か面白いこと無いかしらね」


 ここは神が住まう天界。

 その一室では、地球を管理するため、一人の女神が派遣されていた。

 

「管理って言っても地球の様子を見て上司に報告するだけの仕事だし……暇でしょうがないわ〜」


 そんな愚痴を溢しているのは、地球の管理を任された女神、アルテナである。

 彼女は地球を観察し、それをレポートにまとめ上司に提出するという毎日を送っていた。

 

「やることが無さすぎて困るわ……ていうかあたし要らなくない?」


 そもそも神は基本何もしない。

 中には神の介入が必要な事態もあるが、地球はある意味平和である。

 環境問題や、戦争などの問題はあるものの、それは人類がどうにかする事。

 神には何の関係もなかった。


「今日も適当に『何も起きませんでした』って書くしかないわね〜。ってそろそろ見たいアニメの時間ね」


 そんなアルテナの楽しみは、地球を観察するという名目でアニメやマンガを楽しむ事。

 最近のお気に入りは異世界系ジャンルである。

 

「こういう冒険物って憧れるわね〜。こんな事言っても笑われるだけだけどさ」


 天界は常に平和である。

 その為穏やかな者が大多数であり、アルテナはそういう意味で変わり者だった。

 今日も何事も無く一日が終わる。

 そう思っていた矢先、アルテナを訪ねる者が現れる。


「やっほ〜、アルテナちゃん♪ お姉ちゃんが来てあげたわよ〜♪」

「げ! お姉ちゃん!」

「げ! とは何よげ! とは?」


 彼女は上級女神のアステナ、アルテナの姉である。

 優しいのだが、何故かアルテナは姉が苦手だった。


「どうかしたの? いつもより元気がないけど?」

「どうもこうもないわよ……」


 アルテナは自分の悩みを姉に愚痴った。

 話が終わった後、アステナはある提案をする。

「だったら冒険してみたら?」

「してみたらって……そんな簡単に……え、出来るの?」

「休暇中に下界へ遊びに行く神だっているわよ。確かアルテナちゃん、今度十年くらいお休みだったわよね? その間に行ってきたら?」


 十年と聞くと長いように思えるが、人間と神の感覚はだいぶ違う。

 アルテナは姉の言葉を聞き、一気にやる気が燃え出した。


「そうよ! 行けばいいんだわ! 何であたしこんな簡単なこと気づかなかったのかしら!?そうと決まれば早速準備よ!」


 こうなったアルテナの行動は早い。その場に姉を残し、彼女はすぐさま飛び出して行った。


「あらあら♪ これはアルテナちゃんの色んな姿を見れるいいチャンスだわ♪」


 その後、アルテナは準備を進めた。

 冒険する世界を決め、姉のツテから強力なスキルを手に入れ、戦いの練習をした。

 ついでにカッコいい口上や技名も考えた。

 順調に準備を進めていくアルテナだが、一つだけ欲しいものが手に入らなかった。


「一緒に行く仲間が欲しいわね……」


 初めての冒険、流石に一人では心細かったのである。

 だが、天界には冒険に行きたい者など存在しない。

 どうしようかと悩むアルテナに、一つの考えが浮かぶ。


「あ、そうだわ! 天界にいないなら下界から連れて来ればいいんじゃない!」


 おあつらえ向きに、アルテナが管理している地球には異世界冒険を夢見る者が多くいる。

 その中から優秀なスキル持ちを選んで連れてこうと思ったのだ。


「あたしは女神だし、従者って事にして連れて行けばいいわね。地球じゃ眠ったままのスキルも発現するし、選ばれたやつも喜ぶはずだわ。まあ勝手に人間を連れてったら不味いけど、バレなきゃいいのよ!」


 そして、アルテナは一人の人間を選び、冒険に連れていく事に決めた。

 その結果、誤って真逆の人間を召喚してしまい、おまけに殴られる事態になる事を、本人はまだ知らない。


 ……その頃のアステナ


「アルテナちゃんが行く世界の管理権限も手に入れたし、アルテナちゃんの冒険譚を特等席で見られる、この絶好の機会を逃さないようにしなくちゃ♪ カメラカメラ♪」

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