23 エレンとアルテナ、疑いが晴れる
南の森の調査、もといゴブリン討伐が終わった翌朝、私は宿のベットから起きれずにいた。
「ちょっとエレン、そろそろ起きなさいよ」
「昨日の疲れが取れてないのよ……もうちょっと寝かせて」
「ダメよ、今日こそは冒険者登録するんだから早く起きなさい」
「はぁ……分かったから少し待って」
アルテナが布団を取ろうとするので私は仕方なく起きた。
「あなたは元気ね……昨日の今日だっていうのに」
「これくらいでバテるほど柔じゃないわ、デスサイズの効果で回復してたし」
そういえばアルテナの武器は体力と魔力を吸収するんだった。
昨日ゴブリンを斬りながら回復してたってわけだ。
アルテナを褒めるべきかスキルを褒めるべきか分からないけど。
「あなたみたいに回復できるわけじゃないのよ私は」
「はぁ……相変わらず体は貧弱ね。こうなったら……!」
アルテナは何を思ったのかいきなりベットの上にいた私の体を引っ張り上げ背負い始めた。
「何をするの!?」
「これで問題ないわね! さあ、冒険者ギルドへ直行よ!」
「問題大ありよ! 行くから下ろしなさい!」
その後、アルテナに引っ張られる形で私は宿屋を出た。
そして、冒険者ギルドに着いた私達は、ギルド職員に応接室へと案内される。
「こちらで少々お待ちいただけますか?」
「分かりました」
「出来るだけ早くしなさいよ」
ギルド職員が礼をし、応接室を出る。
私達はそこにあったソファーに座った。
「アルテナ、態度が大きいんじゃないの?」
「これくらい当然よ、あたし達はギルドの英雄なんだから」
「英雄ってどういうこと?」
「ゴブリンの件だけど、昨日の調査で相当な被害があったことが判明したらしいわ」
「それを私達が解決したからってこと?」
「いや、それだけじゃなくてあのライラってやつ、ギルド内の権力を傘に相当やりたい放題やってたみたいよ。そいつを糾弾するキッカケを作った事に皆感謝してるってわけね」
「昨日ガルシアさんから少し聞いてたけど……本当に色々やってたのね」
「クックック、今からあいつの泣き顔が見られると思うと楽しみだわ」
「まあ自業自得だし、同情はしないけどね」
コン、コン、コン
応接室のドアがノックされる。
ドアが開くとギルドマスターのガルシアさん、受付嬢ライラ、そして文官の格好をした男性が入ってくる。
三人は向かいのソファーに座ると、まずガルシアさんが口を開く
「エレン、アルテナ、改めて謝罪と礼をさせてくれ。今回はギルドの不手際で危険な目に合わせてすまない。そしてゴブリン達を倒した事に礼を言う」
ガルシアさんと文官の人が頭を下げる。
しかし、ライラはそっぽを向きながら何もしようとしない。
そんな様子を見て、アルテナが口を開く。
「ちょっとあんた、頭の一つも下げられないわけ? 土下座して『大変申し訳ありませんでした』くらい言ってみなさいよ」
「ライラ、一体お前どういうつもり……」
「調子に乗らないことね! あんた達のスキル詐称の疑いは晴れてないのよ!」
「はぁ? あんたまだ信じてないわけ!?」
「はぁ……こいつらの無事が確認できた途端元気になりやがって。その件についてはこれからはっきりさせる」
口論になりそうだった二人をガルシアさんが仲裁する。
そして文官の男性が次に口を開く。
「私は『鑑定』のスキルを持ってるギルド専属の鑑定士です。これを使えばあなた達のスキルを見ることが出来ます。もしスキルの詐称が本当であればその件に関しては罪に問われます。同時にライラさんがあなた達にした事はほとんど罪に問われなくなるでしょう」
「ふ、そういう事よ。生きて帰ってくれて本当に良かったわ。おかげであなた達の罪が明らかになるんですもの」
嫌らしい笑みを浮かべるライラ。
どうやら私とアルテナのスキルは完全に嘘だと思っているらしい。
まあでも問題はない。
私達は嘘なんてついてないのだから。
「大丈夫です。鑑定をお願いします」
「さっさとやりなさい」
「分かりました。では『鑑定』」
鑑定士の男性が私とアルテナを見つめる。
数秒後、彼は口を開いた。
「お二人のスキルは記載された書類と一致しています。故にあなた達の疑いは晴れました」
「ふ、当然ね」
「嘘よ!!」
鑑定の結果を聞き、叫ぶライラ。
その顔にはさっきまでの余裕が消え去っていた。
「あんた! ちゃんと見たんでしょうね!?」
「間違いありません。アルテナさんは『獄炎』、『死神』、『邪眼』。エレンさんは『器用貧乏・改』。鑑定士として一切の間違いがないことを断言致します」
「そ、そんな……」
ライラはその場で崩れ落ちる。
その顔はまるで死刑宣告を受けたかのように絶望に満ちていた。




