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165話 悪徳領主を捕まえろ!

「ふ……やはり万が一のために抜け道を作っておいて正解だったな」


 ここはヴェインから南に位置する街道。

 緊急の抜け道を通った俺は、ワインを片手に馬車で町から離れていた。


「さすがはエミール様です」


 そう言って俺を称賛するのは、御者台に乗り、馬を操る執事のブレット。

 魔物の暴走(スタンピード)に乗じて俺を脱獄させた優秀な部下だ。


「お前こそ見直したぞ。ひそかに俺を脱獄させる算段を整えていたとはな」


 俺を警護する兵士と冒険者たちも、俺が乗る馬車も事前に用意していたらしい。


「いいえ、むしろ最低限のご用意しかできませんでした。ご気分を悪くされてはいませんか?」

「いや……気分はすこぶるいい」


 今頃、ヴェインの住人たちはみな死んでいるだろう。

 俺を陥れたドン・ガイ、アーシャ。

 裸土下座をさせた、にっくきカタストロフの女ども。

 そして、俺を裏切ったダヴィドもだ。

 どれだけ強かろうが、魔物の暴走からは逃れられまい。

 ダヴィドの姿を隠せるスキルなら、魔物に気づかれずダンジョンコアを手に入れ、魔物の暴走を止められると思っていたが……。

 どうやら無理だったようだな。


「しかし、エミール様の財産は……」


 確かに、魔物の暴走の中財産を運ぶ暇はなかった。

 だが。

 

「問題ない。こんなこともあろうかと、財産の一部をヴェインから運び出しておいたからな」


 所謂、隠し財産というわけだ。

 もうこの国にいることはできない。

 町の安全性を考慮せず、国の投資金も着服し、私腹をこやしたのだ。

 もし捕まれば、処刑は免れないだろう。

 だが隠し財産を回収し、魔物の暴走の混乱に乗じれば外国へ逃亡することも可能だ。


「最悪の事態を想定し、備えておくとは、さすがエミール様です」

「ふ、このくらいは当然だ」

「では、これから隠し財産を回収に向かうのですね。どこへ向かえばよろしいのですか?」

「ひとまず南西へ向かえ。詳しい場所は後に教える」

「は、かしこまりました」


 財産の場所を詳細に言う訳にはいかない。

 ブレットはともかく、俺を警護するやつらに裏切られても困るからな。

 そのまま、順調に町を離れていたその時だった。


「おい、後ろから何か音がしないか?」

「音……? ってなんだあれは!?」


 警護の奴らが急に騒ぎ出す。

 一体どうしたというのだ?

 馬車の窓から顔を出し、後ろを見ると……。


「な、なんだあれは!?」


 竜……?

 いや、竜の頭のようなものをつけた、奇妙な物体が凄まじい音を立てて近づいていた。



 

 エレンside

 

 「エレン様! 前に綺麗な馬車がいるよ!」


 ミラが席から身を乗り出し、前を指す。

 エミールかどうかはまだわからないが、明らかに金持ちが乗るような豪華な馬車だ。

 明らかに怪しい。

 

「よし、魔法でぶっ飛ばしてやるわ!」

「まだエミールと決まったわけじゃないんですから、そのポンコツ思考止めてください!」

「とりあえず、馬車を止めて確認してみましょう」


 前方の馬車はこっちを見て驚いたのか、馬の速度を上げる。

 しかし馬車の速度など、ドラゴンスケーターに比べればたかが知れている。

 背後に付けたプロペラの回転を上げ、さらにスピードを上げる。

 そして馬車をあっけなく追い抜き、馬車の道を塞ぐようにスケーターを停める。


「そこの馬車! 止まんなさい!」


 スケーターから降りたアルテナがデスサイズを構えながらそう言うと、馬が嘶いて馬車が止まった。

 同時に、警護の男達が前に出て武器を構える。

 

「おや、あなた方は……」

「……ブレットさん?」


 御者台にブレットさんが座っている。

 ということは……、どうやら間違いなさそうだ。


「おいブレット! 何故馬車を止め……き、貴様らは……カタストロフ!?」


 そう言いながらエミールが馬車から降りて、私たちに気づく。


「昨日ぶりね、エミール様。いや、様をつける必要なんてなかったわね」

「な、なぜ貴様たちがここに……!? 魔物の暴走で死んだはずだ!」

「ふん、勝手に殺すんじゃないわよ。 言っておくけど、魔物の暴走はあたし達が止めたから。町も、住民たちもみんな無事よ」

「な、なんだと……!?」

 

 エミールが驚愕して後ずさる。


「そうだよ! エレン様とアルテナ様が、ダンジョンを制覇したんだもん!」

「まあ大方、魔物の暴走の混乱に乗じて外国へ逃げようとでも思ってたんでしょうけど、あてが外れましたね。プップップ」

「お、おのれ……! お前たち! 奴らを殺せ!」

 

 エミールが警護の男達に命令する。

 しかし、そうはさせない。


「速攻で制圧するわよ。みんな、目を瞑って。『閃光弾(フラッシュ)』!」


 まずは光を弾けさせる魔法の弾丸で、敵の目をつぶす。

 

「うわ!?」

「め、目が!?」

 

 突然の閃光に、警護の男たちが目を押さえてよろめく。


「行くわよマルタ!」

「分かってますアルテナさん!」


 そしてすかさず、アルテナとマルタが敵に突撃。

 デスサイズを大きく薙ぎ払い、警護の男達をまとめて吹き飛ばす。

 そしてマルタが残った敵へ素早く斬り込み、瞬く間に斬り伏せる。


「く、くそ……!!」

「逃さないよ!」


 警護の男達があっさりやられ、逃げようとするエミールをミラが捕獲。

 腕を掴み、軽々とエミールを持ち上げると、自分の本体(箱)に向かって投げ込む。

 

「や、止めろー!!」


 ミラの箱の中に閉じ込められたエミールが悲鳴を上げるも虚しく、ロープで腕を縛られた上、パンツ一丁で吐き出される。


「エレン様! 悪い人捕まえたよ!」

「よくやったわミラ」


 捕まえ方を教えておいて良かった。

 前回は素っ裸で放り出したし、もうあんなのは見たくない。


「お、おのれ貴様ら……! また私にこんな辱めを……!」

「クックック。さーて……どうしてやろうかしら?」


 アルテナが腕をポキポキ鳴らしながらエミールに迫る。


「ぶ、ブレット! どうにかしろ!」

「……申し訳ありませんエミール様。私では彼女たちをどうにかすることはできません。ここは諦めるべきでしょう」


 そういってブレットさんは御者台から降りると、地面に座り、手を上げ降参のポーズをとる。

 魔力は敵意のない青色。

 本当に降参したとみていいだろう。

 

「ミラ、ブレットさんを縛っておいて」

「わかった!」

「く……! この役立たずが……! ぐあ!?」


 マルタがエミールを見下ろしながら、腹を蹴りつける。


「一つ聞かせてください。ダヴィドに命令して、ダンジョンの最下層にたどり着いた冒険者を殺させていたのは、あなたですか?」


 そうだ、マルタにとってエミールは、仲間を殺したもう一人の仇。

 

「ふん、それがどうしたというのだ? ダンジョンという金のなる木を俺から奪おうとしたのだ。消されて当然だ……ぐあ!?」


 マルタが歯をかみしめながら、再び蹴りを入れる。


「もういいです……! あなたは今ここで……!」

「マルタ、止めなさいよ」


 刀を抜こうとしていたマルタを、アルテナが肩を掴んで止める。


「……アルテナさん、どうして止めるんですか?」

「こんなゲス相手にあんたの手を汚す必要なんてないわ。それにエレン。どうせこいつは終わりでしょう?」


 アルテナの問いに、静かにうなずく。

 暗殺者とつながっていた罪、町の安全を怠った罪。

 それ以外にも、まだまだエミールには余罪がある。

 いくら貴族とはいえ、それからは逃れられない。

 もうこいつは人生終了だ。


「……わかりました。やれやれ……どうしてまさかアルテナさんに諭されるとは思いませんでした」


 そう言ってマルタは刀から手を放す。


「どういう意味よ? ま、とっととこいつを町に連れていきましょう」


 アルテナがエミールの腕を掴み、無理やり立たせる。


「くそ、離せ! 俺は貴族様だぞ! こんなことをしていいと思っているのか!?」

「はぁ? あんた、今更貴族風吹かしてどうにかなるとでも思ってんの?」

「許さんぞ貴様ら! どんな手を使ってでも、貴様らに復讐してやるからな!」

「へぇ……?」


 どうやら、エミールはまだ立場をわかっていないようだ。

 うんうん、ならしょうがない。


「アルテナ、エミールを離してやりなさい」

「え? ってちょっと待って!? なにその不気味な笑顔は!?」


 アルテナが驚いてエミールを離す。

 そんな顔してるだろうか?

 まあそれはともかく。


「き、貴様……!? 一体何をするつもりだ!?」

「あなたに立場をわからせるため。そして個人的な恨みを少し晴らすだけよ」


 さて……。

 お仕置きタイムの……始まりだ

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