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12 魔道具職人マテツ

 マテツという人を探し始めてから数時間後、私たちはその人が構える店を見つけた。

 街の人に聞いたところ割と有名であるらしく、大体の場所はすぐ分かったのだが、場所が街の外れで目立たない場所にあったので、見つけるまで時間がかかってしまった。


「ここね、やっと見つけたわ。流石に疲れたわね」

「ふ、これぐらいで疲れるなんて情けないわ」

「普通はこんなものよ。それにしても……」


 街の外れ、人通りも少ない寂れた場所に店を構えてる時点でとても不安を感じる。

 


「入って大丈夫かしらここ?」

「なに?もしかして怖いの? しょうがないわね、ここは臆病な従者の代わりにあたしが先に行って……」


ドォォォォン!!!


「ギャァァァ!!」

「「え?」」


 店の隣にある倉庫から爆発音がしたと思うと、ドアが勢いよく開き男が吹き飛んだ。

 その後男の仲間らしき人が倉庫から出てきて駆け寄る。


「おい!? 大丈夫か!?」


 仲間が声をかけるが男は完全に気絶している。


「け、だから止めとけと言ったんだ」


 再び倉庫から人が出てくる。

 私より身長が低く、筋骨隆々で髭を生やした姿、一目で私はその人物がドワーフだと分かった。


「畜生! 二度と来るかこの野郎!」


 よくある捨て台詞を吐き男たちは去って行く。

 ドワーフの男、おそらくマテツも倉庫を閉め店に戻って行った。

 一連の出来事を見ていた私たちは呆然とする。


「……じゃあアルテナ行くわよ?」

「……そ、そうね。あたしはあんたの後ろから付いてくわ」

「先に行くんじゃなかったの?そもそもあなたならドワーフを見て興奮してると思ったけど」

「そういう時もあるのよ。とにかくここはあんたに譲ってあげる」


 うん、完全に日和ったわね。おそらくドワーフに興味津々だけど、さっきの出来事によるショックが勝ったみたい。

 虎穴には入らずんば虎子を得ずと言う。

 私は勇気を出して店の扉を開けた。

 

 ガチャッ


 店の中に入ると中は思ったより綺麗で、アニメやゲームなどでよく見る、剣などの武器や鎧が置かれていた。

 ただ私たち以外に客は誰もおらず閑散としていた。


「中は思ったよりまともね」

「見なさいエレン! この剣とかカッコよくない!? あんたこれ使って戦いなさいよ!」


 ……なんか興奮したアルテナが飾ってあった剣を私に差し出してくる。

 試しに私はその剣を持ってみた。


「……! 無理ね、重くて扱えそうにないわ」

「あんた、箱入り娘じゃ無いんだしこれくらい持てないわけ?」

「普通の女子高生が剣を扱えるわけないでしょう。この剣戻して来なさい」

「はいはい」


 アルテナは剣を軽々持ち元の場所に戻す。

 よくあんな簡単に持てるものだと思いながらも、私はあることに気づく。


「ねぇアルテナ? ここに魔法が掛かった武器とかそういうのある?」

「え? よくわかんないけど多分ないと思うわよ」

「確かマテツという人は魔道具職人だった筈……じゃあなんで無いのかしら?」

「さあ? 魔道具ってやっぱ高価だと思うし表には置いてないんじゃないの?」

「まあそう言われればそうなんだけど……」

「何だ客か?」


 私達が話していると奥からさっきのドワーフが出てくる。


「あなたがマテツさんですか?」

「ああそうだが?というかさっき外にいたガキどもじゃねぇか。何しに来やがった?」


 どうやら私達に向こうも気付いていた様だ。私はここに来た理由を説明する事にした。


「実はあなたに用がありまして……」

「敬語はいらん、堅苦しい。で、何の用だ?」

「実は……あ」

 不味い事に気がつく。アステナからこの人を尋ねろと言われたが具体的に何をすれば良いのか分からなかっのだ。

 とりあえず先程感じた疑問について聞く事にした。


「あなたは魔道具職人と聞いたのだけれど、どうしてここには魔道具がないの?」

「帰れ」

「え?」

「魔道具が欲しけりゃ別を当たれ。俺のはオメェみてぇなガキが扱えるシロモンじゃねぇんだ。分かったらとっとと帰れ」

「でも……分かったわ」


 おそらくこの人は典型的な頑固職人なのだろう。今は何を言っても無駄だと思い私は一旦出直す事に決めた。


「帰るわよアルテナ……アルテナ?」


 そういえばさっきから姿が見えない。私はとても嫌な予感がした。


「何よこれ!? カッコいい!! ほらエレン見なさいよこれ!!」


 いつの間にか店の奥に行っていたアルテナが見せびらかす様に何かを持って来る。

 何故かまたすごくテンションが上がっていた。


「テメェいつの間に!? それは売りもんじゃねぇ!! 返せ!」

 

 マテツさんが手を伸ばすがアルテナは器用に避ける。


「何よ? 売り物じゃないの? 勿体無いわね、だったらあたしが使ってやろうじゃないの」

「バカヤロウ! そいつは扱いが難しいんだ! さっきの爆発はそれが原因だ! とっとと返しやがれ!」

 マテツさんはアルテナを追いかけるが、スピードの速いアルテナに追いつけるはずもなくついに息が上がる。


「はぁ、はぁ、ちくしょうこのイタズラ小娘め……」

「扱いが難しい? クックック、我はアルテナ、いずれこの世界の覇者になる者。あたしが使いこなせないなんてあり得ないわ」

「あなた覇者になりたくてここ(異世界)に来たわけじゃないでしょう」

「そこはどうでもいいのよ!」

「貴様らぁ!!」


 うん、不味いわね。マテツさんの怒りが頂点に達しようとしている。

 しかも呼び方が複数形になっている。


 「ああわかった! 倉庫に来い! そこで使ってみせろ! もし使いこなせたらそいつをくれてやらぁ!!」

「ふ、望むところよ!!」


 私を置いてけぼりにして勝手に話が進んでいく。

 本当なら頭の痛くなるところだが、今回に限り二つの理由からそうはならなかった。

 一つはアルテナの気持ちが少しわかってしまったのである。

 アルテナが持ってきた物、それは厨二男子(アルテナは女だが)が憧れそうな武器、“銃”だった事。

 そしてもう一つは……というかこっちの理由が大部分だったのだが、この先の展開が何となくわかってしまった事にあった。

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