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117話 ピラミッドの真実(笑)

「全く、あのエロ骸骨何処行ったのよ?」

「さあ? 進んでいけばそのうち見つかるでしょう」


 力(笑)の試練をアルテナのチートで突破した私たち。

 バカドクロの『三日待て!』を無視して先の通路を進んでいた。

 その時。


「あれ、エレン様、アルテナ様、奥から何か音が聞こえるよ」


 ミラに言われて耳を澄ませてみる。

 確かにカンカンっと作業音みたいな音が聞こえてくる。


「この先で何かしているのかしら?」

「エロ骸骨もそこにいるんじゃない? 早く行ってみましょうよ」


 アルテナが小走りで先に進み始めたので後を追うと、通路を抜けまた大きな部屋にたどり着く。

 だがそこは、今までと全然雰囲気が違う所だった。


「ここは……なに?」

「なんか騒がしいわね」

「見てエレン様、アルテナ様! ミラの仲間がいっぱいいるよ!」


 その部屋ではピッケルやツルハシを持った大量のミミックが何かをしていた。

 宝箱だけじゃなく壺や壁、扉、棺など色んなバリエーションのミミックだ。

 皆器用に舌でツルハシを持ち壁を掘ったり、レンガを持ち運んで壁を組み立てたり、土砂を運んだりしている。


「こいつら一体何をしているの?」

「うーん……大体想像はつくけど……」

『おーいお前らもっと早く作業しろーー!!』


 聞き覚えのある声が部屋の一角から聞こえてくる。

 そっちを見ると、複数のミミックがピッケルを手(舌)放し、転がっている所でバカドクロがなんか騒いでいる。


『後三日しか無いんだぞ! お前ら! やる気あるのか!?』

『……!!』

『なに、もう働き詰めで動けないだと!? それでもお前らこのピラミッドの住人か!? 体から釘が抜けようが穴が開こうか最後までピラミッドのために働け!』


 なんだろう? ブラック企業? それとも軍隊?

 とにかくバカドクロがとんでもない無茶をミミックに押し付けている。


「ひ、酷い……」


 ミラが悲しそうな顔をしている。

 同族が奴隷のような扱いを受けているのを見て傷ついているのだろう。


「とにかく声をかけてみましょう。何をしてるのか確認しないと」


 この状況を知るため、私達はバカドクロの背後まで近づき声をかける。


「ねぇ、今何をしている所なの?」

『ん? 今は幻惑の試練の部屋を作っている最中だ! 奴らを再び迷路に迷い込ませ、さらにミミック達を壁に擬態させて正解の道を塞いでやるのだ! そしておまけに幻を見せる幻惑のミストをこの部屋に噴射する! そうすれば奴らは幻に惑わされながら正解の道を見つけられず一生彷徨う事に事になるのだカッカッカ……って何故お前らここにーー!?!?」

「もっと早く気づきなさいよ」


 というかやっぱり試練を作っている最中だったのか……

 そんな予感はしてたけど……。


「ちょっとエロ骸骨! 何で試練が出来てないのよ!?」

『だから三日待てと言っただろう! 試練の用意は結構手間がかかるんだぞ! しょうがないだろうが!」

「じゃあさっきそう言いなさいよ!」

『まだ出来てないとか言いにくいだろう!! そもそも我の計算ではお前達が試練をクリアするまで十日以上かかる筈だったのだ! それを卑怯な方法であっさり突破しおってからに!』

「あんたの計算がおかしいだけでしょうが! ていうか三日で出来るならもっと事前に作っておきなさいよ!」

「事前の時間なぞあるか! このピラミッドが出来てまだ二週間なんだぞ!」

「そんなに時間があるなら……え、二週間?」

「え……」


 なんかとんでもない事実が投下された。

 呆然としながら話を聞くと、どうやらピラミッドはダンジョンが二週間前に出現させた物らしく、それからピラミッドの魔物として多数のミミックとバカドクロが生まれ、今に至るまで内装や対冒険者用の試練を作っていたらしい。

 ピラミッドといえば遥か古代に作られた印象だが、実際は新築だったようだ。

 

「マルタのマニュアルにピラミッドの記載がなかった謎が解けたわね……」


 この砂漠エリアは環境が厳しいことからあまり冒険者が来ないようだし、発見自体私達が最初だったのかもしれない。


「で、出来たのが二週間前って何よ……。古代のロマンが……財宝が……」


 残酷な真実を聞き、アルテナが四つん這いになって呆然としている。

 かなりショックだったらしい。

 うん、ここは仲間としてフォローしてあげよう。


「アルテナ……元気出しなさい」

「え、エレン……」

「……ていうかね、そもそもこのダンジョンが出来たの七年前でしょう? 最初から古代のロマンなんて存在しないのよこのバカ」

「グハァ!?」


 アルテナが真っ白になって地面に倒れる。

 よし、フォロー完了。

 

『とにかく、今ミミック達を死ぬ気で働かせているから出来るまで待て! お前ら! いつまでも転がってないで早く作業しろ!』

「だ、だめ!!」


 突如ミラが怒った顔で転がったミミック達とバカドクロの間に入る。

 

『貴様! ダメとはどういう事だ!?』

「だって……ミミックのみんな、もうみんな疲れたって! 働きたくないって言ってるよ! だからもうやめて!」

『ふ、幼女が何をいうかと思えば! 我はここのボスだ! こいつらをどうしようと俺の勝手だ!』

「でも……このままだとみんな壊れちゃうよ!」


 確かに、ここで働いてるミミック達は体が欠けたり、倒れて動かないものもいる。

 明らかにヤバそうだ。


『カッカッカ! 大丈夫だ! 壊れてもダンジョンだからそのうち再出現リポップする! 何も問題は無い!』

「あなたの倫理観が問題大有りよ」


 つまり、ミミック達はダンジョンの性質を利用され、「お前の代わりなど幾らでもいる」的な扱いを受けてるという事だ。

 こんな現実的な光景をダンジョンの中で見るハメになるとは……。


「うう……ガイコツさん酷いよ……!」

『カッカッカ! なんとでも言うがいい! 我がルールだ!』

「ふーん……じゃああなたを倒せば解決なんじゃないの?」

『……え?』

 何故かバカドクロがポカーンとし始めた。

 今更驚かれても困る。


「そっか! ドクロさんを倒せばいいんだね!」

「……そうね、何だか馬鹿馬鹿しくなって来たわ。この怒り全部エロ骸骨にぶつけてろうじゃないの!」


 アルテナとミラに再びやる気の炎が灯る。

 

「じゃあ決まりね。さっさとバカドクロの本体がいる所まで行きましょう」

『いやいやちょっと待て!」


 進もうとする私達の前にバカドクロが立ちはだかる。


『試練を全部クリアしてから我の元へ来るのが礼儀だろう! 勝手に順番をスキップするな!」

「はぁ? なに言ってんのよ? その試練が出来てないんでしょうが」

「これ以上みんなを働かせるのは嫌だよ!」

「もう三つもクリアしたんだからいいじゃないの」

『グ……いや、ダメだダメだ!! まだ十個くらい試練を考えたのに無駄になるではないか!」

「じゃあ百歩譲って試練を全部クリアするとしましょう。出来るのはいつ?」

『そうだな……このペースなら後一ヶ月でグワァ!?』

「そんなに待ってられるか」


 魔導銃でバカドクロを撃ち抜く。

 まあすぐ再生するんだけど。


『はぁ、はぁ、だが貴様らは大事なことを忘れているようだな? 我はピラミッドの仕掛けを操れることを! カァッ!」


 バカドクロの目が燃え上がると、先へ進む通路が壁で塞がれてしまう。

 

「道が塞がれちゃったよ!?」

「ちょっとエロ骸骨! 何すんのよ!」

『うるさい! ここは我の居城! 我に逆らうことなど出来ぬのだカッカッカ!」


 勝ち誇った顔で私達を嘲笑うバカドクロ。

 ふーんなるほど、そういう手を使うならこっちにも考えがある。


「ミラ、黄金のツルハシを出してくれない?」

「え? うん、分かったエレン様」

 

 鉱山エリアで手に入れた、どんな硬い物でもサクサク掘れる魔法のツルハシ。

 それを持ち、探知魔法でバカドクロの魔力の繋がりを辿る。


「なるほど、この壁の向こうね」


 繋がりを辿ると、何もない壁に辿り着いた。

 バカドクロを動かしている魔力はこの壁の向こうだ。


「じゃあせーのっ」 

『おいちょっと待て! 貴様一体何を……!?』


 ガンッと黄金のツルハシを壁に向かって突き刺す。

 すると、壁がガラガラと崩れその先に道が続いているのを見つける。

 どうやら隠し通路のようだ。


『あー!! 折角隠しておいた我の部屋への直通通路がー!』

「へぇ、直通なのね」

『ぎゃーしまったー!?』


 あっさり口を滑らせ転がり落ちるバカドクロ。

 とりあえずこれで道は開けた。


「よし、進みましょう二人とも」

「よーし! ギッタギタにしてやるわよ!」

「みんな!倒してくるから待っててね!」

『『『『!!!!!!』』』』


 ミラが呼びかけると、ミミック達はガチャガチャと体を動かし、大きな舌を振って応援(たぶん」してくれる。


『貴様らー敵を応援するなー!』


 カリスマも人望もないバカドクロの叫びが虚しく響く中、決着をつけるために通路を進むのだった。

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