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114話 勇気の試練(笑)

ピラミッドはコミカルなノリで行くつもりです

 謎めいた……いや、変人の骸骨に案内されピラミッドを進む私達。


『カッカッカ! 貴様等! 我の財宝が欲しいかー!?』

「「おー!」」

『いい返事だ! 欲しけりゃくれてやる! 探せ! ピラミッドの試練を突破してな!』

「やってやるわ!」

「頑張るよー!」

「はぁ……」


 ……いつの間にか財宝の欲を骸骨に利用されてやる気を出しまくっているアルテナとミラ。

 もう完全にバラエティ番組のノリだ。


「私だけでもしっかりしないと……!」


 そう心に誓い通路を進むと、何やら開けた場所に出る。

 

『カッカッカ! さあここが第一の試練、勇気の試練だ!」


 骸骨が空を舞いながら高らかに宣言する。


「ちょっと!? 何この熱気は!?」

「あ、熱いね……」


 アルテナとミラが戸惑う。

 勇気の試練と呼ばれるこの広い空間はグツグツと音を出す熱湯で満たされていた。

 霧の向こう、約五十メートルほど先の向かい側に出口があるみたいだが、そこまでの道は熱湯の中から突き上がっている幾つもの丸い岩のみだ。

 岩は片足くらいの大きさしかなく、おまけに熱気のせいで湿っている。


「……なるほど、つまりここの試練は熱湯の池を、岩を伝って跳んでいくってわけね」


 一歩でも間違ったり滑ったりすれば、熱湯に落ち焼け死んでしまう。

 だけど何だろう。


「結構まともなもの用意してたのね。意外だわ」

『どういう意味だ!? まあいい。 さあ、最初の挑戦者は誰だ!?』

「クックック、ここはあたしが先陣を切ってやるわ!」 


 そう言ってアルテナがやる気満々で前に立つ。


『カッカッカ! 威勢がいいな! だがそれがいつまで持つかな!?』


 骸骨は高らかに余裕のこもった笑みをして叫ぶ。

 だけど……。


「あなたこそ、その余裕がいつまで持つかしらね?」

『なに? 一体どういう……』

「よーし行くわよー!」


 いつの間にか部屋の入り口まで後ろに下がっていたアルテナが、目で追えないほど凄まじいスピードで走り出す。

 そうして助走をつけたアルテナは池の前で走り幅跳びでジャンプ。

 突き出た岩も熱湯の池も飛び越え、一気に向こう側に着地した。


『な、なにーーー!?』


 骸骨がその結果に驚いてあんぐりしてしまう。

 まあアルテナの身体能力ならこれくらいは当然だ。

 最悪やらかして落ちたとしてもアルテナなら熱湯ぐらい耐えられる。

 どっちに転んでも問題は無かったのである

 

「ほら、あんたたちも早く来なさい!」


 アルテナが向こう側から手を振りながらこっちを呼ぶ。


「じゃあ次はミラが行くねー」


 そう言いて次はミラが池の前に来る。

 

『ぐ……あの女があんな身体能力を持っているとは……だがあの幼女に同じマネは出来まい! カッカッカ!」

「いや、それ以前の問題でしょう」

『は? 一体何を言ってあーーーーーー!!!!』


 ミラがふわふわと飛んで向こう側へ行く姿を見て再びガビーン! となる骸骨。


『宙に浮くなんて反則だぞーー!!」 

「あなたが言う? そもそも最初に気づきなさいよ」

「うぐぐ……。だ、だが貴様はどうだ!? 強靭な身体能力もふわふわと浮く能力もあるまい!? と言うかあったら困る!」


 あっさり余裕がなくなったようだ。

 て言うか何でこんな必死なんだろう?


「まあ、確かにその二つはないわね」

『そ、そうか! じゃあお前は普通に岩を跳んで……』

「でも空を飛ぶ方法だったらあるわ。『火迅ブーストフレア』」

『え?』


 履いてる靴からから炎が吹き出し、宙に浮き始めた私を見て今度はポカーンとする骸骨。


「じゃあそういう事だから。後からついて来なさいよ」


 そのまま出力を上げ、向こう側に移動しようとしたその時。


『ま、待てー!!』

「痛!?」

 

 骸骨が私の足に噛み付いて、必死に引っ張って来る。


「何してるのよあなた!?」

『折角作ったのにそれはないだろう!? ちゃんと正攻法で突破しろ! 苦労が水の泡じゃないか!?』

「そんなの知らないわよ! だったら抜け穴が無いよう作ればよかったじゃない!」


 骸骨を振り切る為さらに火迅の出力を上げる。

 だがその直後。


『うおおおおおお!!!』

「いい加減にしな……あ!」


 骸骨が靴に引っかかり、そこで必死に踏ん張った結果、靴がすぽっと抜けてしまう。

 火迅が片足になってしまった結果、空中でバランスを崩し熱湯の池に墜落していく。


「エレン!」

「エレン様!?」

「く……!?」


 何とかバランスを取ろうとするも、片足ではどうしようもない。

 私はそのまま勢いよくザバン! と熱湯の池に突っ込んだ。

 

「キャァァァァァァァァァァァ!!」


 あついあついあついあついあついあついあついあついあつい!!


 水面に出た私は自分でも信じられない悲鳴を上げながら激しくもがく。

 微かにアルテナとミラの声が聞こえる気もするが考える余裕もない。

 このまま焼け死ぬ……そう思った時だった。


「……ん?」


 確かに熱いが、焼けるような痛みが襲ってこない。

 いや、襲ってこないどころか最初からそんなものはない。

 冷静になりもがくのを止め、池の中に立つ。


「エレン!? あんた大丈夫なの!?」

「エレン様?」

「……アルテナ、ミラ。この池……熱湯じゃなくてただのお湯だわ」

「「え?」」


 温度的には四十度くらいあるだろうが、本当にただそれだけだ。

 立ち尽くす私の近くに骸骨がやって来る。


『カカカカカ! 引っかかったなこのアホが! ここは熱湯だなんて一言も言ってないぞ! 無様な姿を晒して一体どんな気持ちブハァ!?』

 

 ブチ切れた私は無言で骸骨を捕まえ池の中にぐりぐりと押し込む。

 その後持ち上げ思いっきり睨みつける。


「何が勇気の試練よ!! ただのお風呂じゃないの!!」

『おい、勘違いするな!? 勇気を試されるのはここからだ! 周りを見ろ!』

「周り? これって……」


 よく見ると、池の側面や底面から泡が吹き出している。

 それが全身の体に心地よく当たり、体がマッサージされるように気持ちいい。

 もしかして煮え立ってるように見えたのはこれのせい?

 というかこれってジェットバス?


『どうだ、骨身に染みるだろう! この気持ちよさを捨てて池から上がるのはかなりの勇気がブフォアァ!?』

「どうでもいいわ!」


 再び骸骨を池に沈める。

 その後靴を回収し、池を渡って二人と合流した。


「エレン様、大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ」


 心配してくれるミラにそう返す。

 服がびしょびしょになったが、魔導銃のドライヤーで乾かせば問題ない。

 それよりも……。


「アルテナ? 何でちょっと笑ってるのよ」

「だって……あんたのあんな悲鳴と慌てようなんて初めて見たから面白くて……プッ」

「忘れなさい!!」


 恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら叫ぶ。

 今回はアルテナが悪いわけじゃないから何も出来ない。

 こんな黒歴史を作ることになってしまうなんて……。


「最悪だわ……」


 床に崩れ落ちていると、元凶の骸骨がやってきて……。


『カッカッカ! まあ元気出せ! それよりも貴様、早く服を乾かしたらどうだ? 我が脱がせてや……』

「永遠に黙ってなさい!!」

「ウギャァァァァ!?」


 その後、骸骨を土魔法で作ったカゴに閉じ込めたまま池に放り込み、先に進むのだった。

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