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102話 ダークエルフヴェルミナ

 強敵と渡り合う為、シャルルの案内で動きを封じる魔法の専門家のところへ向かう私達。

 途中シャルルが泊まっている宿屋に立ち寄り、元のゴスロリツインテールの姿に着替えてから、人通りの少ない旧居住区に案内される。


「こんな場所で着飾っても意味ないしね〜」

「確かにそうね」


 しかし……これから会う動きを封じる魔法の専門家ってどんな人なんだろう?

 動きを封じる……動きを縛る……緊縛……ん?

 

「ねぇシャルル? 一応確認なんだけど……。その人って、ドM酒場の従業員とかで、客を魔法で緊縛するドS魔術師っていうオチじゃ無いわよね?」


 イサークさんがドS魔術師に、宙吊りで緊縛プレイをしてもらってる光景を想像をしてしまい、不安になってシャルルに確認を取る。

 すると、シャルルが冷たい目線と怒りを込めた顔ででこちらを振り返り。


「はぁ〜? おねぇさん、もしかしてシャルルをバカにしてない!? そんなキモいやついたとしても紹介なんてするわけないんですけど〜!?」

「ご、ごめんなさい」


 メチャクチャ怒られてしまった。

 でもしょうがない。

 万が一があったらミラを連れては行けないし……。

 そんなやりとりをしていると、シャルルがふと足を止め、前方にある家を指差した。

 

「ほら、ここだよ〜」


 そこには、『黒草屋こくそうや』と書かれている看板がかけられた店があった。

 ……少し怪しい感じのする店名だ。

 古ぼけた木造の店構えは、どこか不気味な雰囲気を漂わせている。

 ミラもそのせいか少し怖がっており、私の服の裾をぎゅっと握りながら、シャルルに質問する。


「シャルルちゃん、ここは怖いお店なの?」

「大丈夫だってミラ。見た目は確かに怖いけど、ただの薬屋だからさ〜。五十年前からこのヴェインで店をやってるんだって〜。シャルルもリーダーに教えてもらったんだけど、格安で回復ポーションとか売ってくれるから結構な穴場って感じかな〜」

「そ、そうなんだ……」

 

 シャルルの言葉を聞いて胸を撫で下ろしホッとした姿を見せるミラ。

 確かに、町を大事に思っているカーシャさんが紹介する店なら危険はなさそうだ。


「じゃあ入るよ〜。あ、店主はパンチ強い見た目してるから気をつけてね〜」

「え?」


 パンチが強い見た目って一体……。

 そんな私の疑問はお構いなしにシャルルは両開きのドアを開いて中に入り、私とミラもその後に続く。

 店の中は少々古びた見た目だが、ポーションや薬草などがきれいに陳列棚に収められており、ホコリも少なくしっかり掃除も行き届いている。

 どうやらしっかり管理されているようだ。

 けれど……。


「シャルル? ただの薬屋みたいだけど……。魔法を教えてくれる人が本当にここにいるの?」

「安心しなって、ちゃんといるからさ〜。ちょっと〜? ヴェルミナおばさ〜ん? シャルルちゃんが来てやったわよ〜!」


 シャルルが店の奥に向かって呼びかけると、そこから野太い声が聞こえ始める。


「シャルルか? 一体何の用だ? 薬でも不足したのか?」


 そう言いながら奥から出てきたのは……。


「「え?」」


 その姿を見た私とミラは思わず顔を見合わせ、口をぽかんと開けた。

 現れたのは、圧倒的な巨躯きょくを誇る女性だった。

 歩くたびに床板が軋む音がし、床が抜けないか心配になる。

 

「紹介するね〜。この店の店主で、ダークエルフのヴェルミナおばさんだよ〜」


 ダークエルフ。

 銀髪の美しい髪、滑らかな褐色の肌、そして何より長い耳。

 なるほど、ファンタジー作品にあるような典型的な特徴をしている。

 だが、そんなのどうでも良くなるくらい体型のインパクトが強い。

 

「なるほど、確かにパンチが強い見た目だわ」


 アルテナがいたらまた夢を砕かれたショックで失神してたに違いない。

 いなくて残念……いや、良かった。

 しかしなんだろう……?

 不自然なほどに体が膨らんでいる。

 まるで、何かの力が働いているかのように。


「おばさんっていうのは止めなと言ってるだろうシャルル! 私はまだピチピチの五百歳だよ!」

「そんなこと言われてもさ〜? ダークエルフの基準なんて分かんないし〜? そもそもそんな見た目で若い宣言してもしょうがないでしょう〜?」

「ぐぅ……! カーシャも生意気な子を連れてきたもんだよったく……!」


 そう言いながらドォォン! とカウンターに台パンするヴェルミナさん。

 どうやら体型に関しては本人もメチャクチャ気にしているようだ。

 

「で、その二人は誰だい? 一人は魔物っぽいけど、あんたの知り合いかい?」


 ヴェルミナさんが鋭い目でこちらを見ながらのっそのっそと近づいて来る。

 その体格もあってかなりの威圧感だ。


「うう……」


 ミラが怖がって私の後ろに隠れてしまう。

 きっとシャルルの知り合いということで、私達も生意気なやつと見られているのだろう。

 なら、ここは礼儀正しく振る舞うべきだ。

 ミラの手を繋ぎ、安心させながら姿勢を正す。


「初めまして。私はエレンと言います。よろしくヴェルミナさん」

「は、初めまして。え、エレン様の従者のミラです。よ、よろしくお願いします」


 二人でお辞儀をしながらヴェルミナさんに挨拶をした。

 それを見たヴェルミナさんは感心したような顔になり……。


「ほう、シャルルが連れて来るからどんなやつかと思ってたけど、なんだい、礼儀正しい良い子じゃないか。悪かったね、怯えさせちゃって」


 優しい声でそう言ってくれる。

 良かった、根は良い人のようだ。


「で、今日は何の用で来たんだい? 買い物かい?」

「実は……」


 ここに来た経緯をヴェルミナさんに説明する。

 すると、話していくうちにどんどん険しい顔になっていき……。


「……なるほどね、大体の事情はわかった。だがハッキリ言うよ。止めときな」

「え? それはどういう事?」

「危険だからさ。何故なら……私の得意とする魔法は……“呪い”だからね」

「呪い……」


 そのワードは私に緊張感を走らせたものの、驚きはしなかった。

 ダークエルフは闇魔法を得意とする印象がある。

 当然呪いが使えても、何もおかしくはない。

 

「ヴェルミナさん、その危険性も含めて、呪いについて教えてくれない?」

「ほう、肝は座っているようだね。いいさ、教えてあげるよ」


 呪いと聞いて決意が揺らがなかった事を気に入られたのか、ヴェルミナさんは口元に笑みを浮かべながら、カウンターにある大きな椅子にドシンッ! と座ると、呪いについて説明してくれる。


「呪いは闇魔法の一種だ。相手に様々な体の異常を起こす事が出来る。あんたの欲しがっている動きを制限するものや、苦しめるもの、死に至らしめるものまで様々だ。そして、呪いの強い所は、発動すれば決して防がれないという点だ」

「防がれない?」

「そう、相手の防御がどれだけ高くても、どんなに魔力が高くても関係ない。発動すれば確実に相手を蝕む。しかも呪いは目に見えないからね。自覚するのも困難だ。おまけに呪いを解くには解呪の魔法もしくは専用の高価なポーションを飲むしかない。つまり、ほぼ自力での解除は不可能って事だ。まあ、呪いの強い点はこんな所だね」


 なるほど……まとめると、呪いは体に異常をおこす防御不能かつ不可視の魔法で、おまけに自力解除は不可能。

 これだけ聞けば強すぎると言っても過言じゃない。

 問題は……。


「ヴェルミナさん、呪いが強いって事はわかったわ。でも、相応の……いえ、それ以上のデメリットがあるんでしょう?」


 私の言葉を聞いたヴェルミナさんは再び口に笑みを浮かべる。

 

「ふ、よく分かってるじゃないか。じゃあ逆に聞こう。呪いのデメリット、それはなんだと思うんだい?」


 私を試しているのか、逆にデメリットに関して聞かれてしまった。

 だが、問題はない。

 呪いというワードから大体想像はつくし、そもそも、答えは“目の前”に存在している。


「そうね……呪いは自分にも牙を剥くっていうところかしら」

「ほう、どうしてそう思うんだい?」


 その問いに、ヴェルミナさんを指差しながら答える。


「だってヴェルミナさん……あなたのその体型、呪いのせいよね?」

「っ!!」


 その言葉を聞き、ヴェルミナさんはバンッ!! とカウンターに手をつきながら立ち上がる。


「何故分かったんだい……!?」


 驚愕の顔に包まれながらこちらを見るヴェルミナさん。

 さて、話の本番はここからだ。

このシーン1話で終わらせるつもりが無理だったw

もう1話次回お付き合いください

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