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100話 上級変態女神、休日の回顧録

100話達成!!

記念に今までを簡単に振り返る話を入れましたー。

読んでくださっている方々これからもよろしくお願いします

見渡す限り何もない真っ白な空間。

 そこには一人の女性がいた。

 美しい装飾をあしらいった白いヴェールを身に纏う絶世の美女。

 ロングウェーブのサラサラした金髪が更に美しさを強調する。

 彼女が空中で指をちょんと動かすと、目の前に大きな白いテーブルと椅子が光と共に出現する。


「さて……と」


彼女はテーブルに座り、指をなぞるように動かすと、テーブルの上に緑茶が入った白いカップ、美しい西洋の皿に盛られた饅頭、肉を喉に詰まらせ白目をむいているデフォルメアルテナ人形(自作)、鼻血用ティッシュ、雑巾、ブルーレイディスクとデジタルテレビが出現する。


「準備完了♪ では再生〜♪」


 リモコンを操作しテレビに映し出されるのは、彼女の妹であるアルテナと、その従者? のエレンがヴェインへ向かっている最中、平原で野営をしているところであった。


『骨ごと美味しく頂きなさい!!』

『ふがァァァァァァ!?』

「ブフォッ! な、何回見ても良いわこのシーン……!」

 

 エレンがアルテナの喉奥まで肉を押し込み、そのまま放置して寝る映像。

 その映像を見て鼻血を噴き出しているのは、アルテナの姉であるアステナ。

 アルテナの姿を日々の日常や冒険、風呂からトイレまでを趣味で観察している上級変態女神である。

 彼女は日々アルテナの観察の片手間に世界を管理する仕事をしているのだが、今日は休暇の為過去の映像を見返している最中であった。

 ……因みに、彼女の好みはアルテナが酷い目に遭うシーンである。


「確か次のシーンは……ああここねーモグモグ……」


 饅頭をパクつきながらリモコンを操作して、次に映し出されるのは山賊との戦い。

 ここでアステナが注目したのは、妹の戦いっぷりではなく、エレンが山賊に油断して蹴られたシーンであった。


『きゃああ!?』

『『『『『ぎゃははははは!!!』』』』

『……蹴ってくれてありがとう』


 無様な姿で地面に転がるエレンと、それを見て高笑いを始める山賊。

 そして起き上がったエレンが何かの決意が宿った目で山賊達にお礼を言う。

 その映像を見たアステナは両手を組みながらうんうんと言った感じで頷く。



「これをきっかけにエレンちゃん、アルテナちゃん以外にも容赦しなくなったのよね。異世界の危険をその身で体感したお陰で。そう考えるとこの山賊たちは良いファインプレーだったわ〜♪ ズズズ〜」 


 緑茶をカップで啜りながらその後の映像を楽しむ。

 その後、山賊達が強制全力マラソンをさせたり、ダンジョンで冒険者狩りをオークに捧げたりとエレンの容赦の無さや、アルテナが罠で吹っ飛ぶシーンにニコニコしながらも、次に注目したシーンはトラップ部屋での出来事だった。


『……アルテナ、行ける?』

『ふ、安心しなさい、あたしが負けるわけないんだから』


 出入り口は塞がれ、無限に魔物が出て来るトラップ部屋に閉じ込められたこの時、エレンは部屋を抜け出す方法を、アルテナはその時間稼ぎのために魔物との戦いに臨んだ。

 相方を信じ、それぞれの役割を果たすことによってトラップ部屋を攻略したこのシーンに、アステナは口を押さえながら微笑む。


「フフ、何だかんだ良いコンビよね〜。エレンちゃんは認めないだろうけど♪ でも、これがきっかけになってこのあと残念なことになっちゃったのよね〜モグモグ」


 次に映し出されたのは、ダンジョンでパーティを組んだアルフとケイトにパーティ解散を持ちかけられた所であった。


『……すまない。パーティ結成の件、無かったことにしてもらえないか』


 とても気が合った仲間からの解散宣言。

 ショックを受けたが、失う事で仲間の大切さを再認識した出来事。

 そして……。


『……あたしもあんたがいない冒険なんて……想像出来ないから』

「キャーーー!!! アルテナちゃんがデレたーーーー!! これは永久保存版ね!」


 アルテナがボソッと呟いた言葉でアステナが大感激するシーンに繋がる出来事でもあった。


「アルフとケイト、二人は今頃何してるのかしらね? まあそれよりも続き続き♪」


 そして次に映し出されるのは魔石争奪戦のシーン。

 手に入れた貴重な魔石を巡り、アルテナが魔石を狙う冒険者達を魔法で吹っ飛ばし、更にエレンが魔導銃を狙う魔戦士なんとかを徹底的に痛ぶる映像が流れる。

 その途中……。


『そうだ、私からのキッスもプレゼントしよう!』

『は……? ちょっまちなさ…………』


 ブチュッッ! っとドン・ガイにファーストキスを奪われるアルテナのシーン。

 それを見たアステナは体がプルプル震えながら憎悪のオーラが背中から湧き出る。


「こいつ天罰が必要ね。出なさい」


 アステナがそう言うと、羽ペンと「KILL NOTE」と書かれた黒いノートがテーブルの上に現れる。

 これに名前を書かれると、天罰? が降りかかるノートである。

 アステナはノートを開き名前を容赦なく書いていく。


「えっと、ドン・ガ……」


 あと0,1秒程で名前が書き終わってしまうその時、映像が次のシーンに変わる。


『……ねぇエレン、お願いがあるんだけど』

『……な、なに?』

『……あたしの初めて、上書きしてくんない?』

「ブフォ!?!?!?」


 ショックで狂ったアルテナがエレンにキスを求めるシーン。

 別の事に気を取られていたアステナは、顎にアッパーをきめられたかのように頭が後ろに飛ぶ。

 そして。


『気色悪い事言うなーーーー!!!!!!』

『ギャァァァ!?』

「グハァァ!?」


 エレンが気色の悪さから目潰しをお見舞いするシーンで、更にアステナはボディーブローを食らったかのような衝撃で、椅子ごと後ろに倒れのたうち回る。

 ……そして数十秒後、白い地面を赤く染めながらもアステナはテーブルを支えになんとか立つ。


「わ、私とした事が百合&お仕置きのWパンチをモロに受けてしまうなんて……。この素晴らしいシーンを作ったと言う事で、変態の天罰はやっぱ無しにしましょ」


 そう言いながら体勢を整えたアステナは、ノートに書いた名前を指でなぞりさっと消していく。

 こうしてドン・ガイの命は勝手に危機に陥り、勝手に救われたのであった。


「さて、確か次は大事なシーンよね」


 次の映像はダンジョンで虐められていた動けるだけの木の宝箱を模した魔物、レッサーミミックをエレンとアルテナが助ける所だった。

 そして、恩を感じたレッサーミミックが二人について来てしまい、貴重な魔石を預けたところそれを吸収し、クリスウィスという伝説に希少種に進化してしまう。

 可愛い少女の分身と、優れた収納魔法を扱えるようになったレッサーミミックはエレンによりミラと名付けられ、大切な仲間となる。


『じゃあミラ、これからよろしくね。 あと、ご主人様なんて呼ばなくていいわ。名前で呼んで頂戴、敬語も無しで』

『は、はい……じゃなくて……うん! エレン様!』

「うーんこのシーン何回見てもホッコリしちゃうわねー♪ ズズズ〜」


 頭にハートを浮かばせニコニコしながら、アステナは何故か赤くなった緑茶を啜る。

 次に映し出されるのは平原エリアでの冒険。

 ミラの見た目からは信じられない頑丈さとパワーが明らかになり、最後はブルーオーガとの死闘が繰り広げられる。

 まさかのアルテナがやられてしまうという危機に陥ってしまうが……。


『死んでたまるもんですか……!! 『閃光弾フラッシュ』!!』

『ご主人様を傷つける人は……ミラ……絶対に……許さないんだからーーーー!!!』


 エレンは最後まで諦めず抵抗し、ミラは恐怖で怯えながらも、二人を助けるため勇気を出してブルーオーガの棍棒を受け止め、更に棍棒を収納魔法で奪い腕を破壊。

 そして。


『よくもやったわねあんた……!『死の衝撃(デス・クライシス)!!』』


 根性で起き上がったアルテナの一撃によりブルーオーガは屠られる。


「この時は私も少しヒヤッとしたのよねー。みんなががんばったからこその勝利だったわね……モグモグ」

 

 日の丸がついた饅頭を食べながらアステナは語る。

 その後、ミラを狙ってモブが襲って来たり、貴族を裸土下座させたるするシーンをゆったりとした感じで楽しむアステナ。

 そして次に映し出されたのは、ラディアドレイクが襲いかかって来たシーンだった。

 通路を埋め尽くすほど巨大な魔物に追われるエレン達。

 もう少しで逃げ切ると言うところで、エレンの体力が尽き倒れてしまう。

 魔物に踏み潰されそうになるその瞬間。


『邪眼!『麻痺の邪眼(パラライズ・ゲイザー)』!』

『アルテナ!? 何で……!?』

『ふん、従者を助けるのは主人として当たり前でしょうが!』


 アルテナが咄嗟の判断でラディアドレイクの動きを止め、エレンを担ぎ助け出す。


「キャーーーアルテナちゃんかっこいいい! にしても、流石にここはスキルのデメリットが大きすぎたわね〜」


 アステナが授けたスキル『器用貧乏・改』はあらゆる技術を極められる代わりに自力が上がらない。

 どんなに鍛えようが、魔道具を使おうがそれは変わらない。

 その後、紅蓮の鉄槌によってラディアドレイクは討伐されるものの、エレンは弱点をカーシャに指摘され、足手纏い扱いされてしまう。

 だが、それに対するアルテナの言葉は。


 『こいつ程頼りになる存在はいないんだから! もしエレンとあんたらの誰かから仲間を選ぶとしたら、あたしは迷わずエレンを選ぶわ! そして三人でダンジョンを攻略してやるんだから!』

「キャーーーまたアルテナちゃんかっこいい!!」


 推しを見るオタクのように、ペンライトを出し腕を振りまくるアステナ。


「でも、アルテナちゃんはこう言う行動が、エレンちゃんの心を変えていってるとは全く思ってないでしょうね〜」


 アステナはそう言いながら、エレン達がギルドから出た時のシーンを映し出す。

 

『死ぬ目に遭ったんだし、あんたならもうダンジョン攻略を止めたいとか言いそうなのに、寧ろ攻略に前向きになるなんておかしいじゃない』


 エレンが休止に一生を得る体験をしながらも、ダンジョン攻略を前向きに考える姿を見たアルテナが不思議に思うシーンだ。


「フフ、こんな事言ってるくらいだしね〜。フフ。全く鈍いんだから♪」


 その後、エレンの体力不足改善案を考え、アルテナがロケットで星になるところを興奮しながら見終わると、アステナはうーん……! と言いながら体を伸ばしブルーレイの再生を完了した。


「あー楽しかったわ♪ でもなんかクラクラするわね〜……。興奮しすぎたのかしら? さ〜てそろそろ寝ないとね〜」


 アステナはまた指を振ると、テーブルなどが回収され、天蓋付きのベットが出現する。

 フラフラしながらそこに置いてある等身大アルテナ人形(自作)を抱きベットに入ると、幸せそうに眠りに落ちていく。


「……アルテナちゃんたちは無事ダンジョン攻略を完了できるかしらね〜? ダンジョンだけならまだしも、このヴェインていう町は、ちょっと裏がありそうだしね……」


 アステナの脳裏に浮かぶのは、紅蓮の鉄槌の三人、貴族エミールと密会している謎の暗殺者。

 そして……。


「……アルテナちゃん達の障害にならないといいんだけど……。それに、彼女も心に闇を抱えてそうだし、暴走しないといいんだけどね〜……スヤスヤ」


 最後にとある受付嬢の姿を思い出しながら、アステナは眠りに落ちていくのであった。

 ……因みに、その翌日出血多量で動けなくなることを本人はまだ知らない。

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